05/04 オペラ・ガルニエのラモー歌劇『プラテー』
●OPERA NATIONAL DE PARIS / GARNIER
maridi 4 mai 1999 a' 19h 30
JEAN-PHILIPPE RAMEAU " Platee "
Comedie lyrique (ballet bouffon)
en un prologue et trois actes (1745)

direction musicale : Marc Minkowski
mise en scene : Laurent Pelly
decors : Chantal Thomas
costumes : Laurent Pelly
choregraphie : Laura Scozzi
lumieres : Joel Adam
dramaturgie : Agathe Melinand
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Orchestre et Choeurs des Musiciens du Louvre-Grenoble
chefs de chant et clavecinistes : Mirella Giardelli/ Yvon Reperant

Platee : Tracey Welborn
La Folie, Thalie : Mireille Delunsch
Mercure : Yann Beuron
Thespis : Paul Agnew
Jupiter : Vincent Le Texier
Junon : Nora Gubisch
Un satyre, Citheron : Laurent Naouri
L'Amour, Clarine : Cassandre Berthon
Momus : Franck Legue'rinel
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●プラテーについて

バロックの大家ラモーはオペラ・バレというジャンルで沢山の作品を残しているが、ライブ上演は多いとは言えない。日本の最近では北とぴあの「アナクレオン」、カザルスホールでの「優雅なインドの国々」が演出付き演奏会形式で上演されているのは記憶に新しいところ。そのような作品に比べて、プラテーはとてもマイナーな存在だ。

そもそもこの作品はフランス王子とスペイン王女の結婚を祝して作曲された。初演は1745年3月にヴェルサイユ宮殿とのこと。台本はオトローの原作に基づき、内容は全くの喜劇で、特に登場するニンフは男性が演じる点が話をパロディ仕立てにしている。物語はギリシャ神話で、コメディの元祖テスピスがワインに酔っ払って眠っている場面から始まる。人々がテスピスを起こして、彼に物語らせたのがプラテーのお話だ。

ジュピターの妻ジュノンは、ジュピターが浮気していないか何時も心配で嫉妬に狂っている状態。彼女の嫉妬を何とかごまかそうとジュピターが敷くんだ一芝居は、彼が醜いカエルの女性、プラテーへの求婚。これを本当の愛と勘違いしたプラテーは最高にハッピーになる。途中、天からマーキュリーが降りてきて、いろいろ忠告するが、ジュノンは結婚式まで挙げるありさま。激怒したジュノンが登場し、殺気すら感じられる勢いで、プラテーのウェディングガウンを剥がす。結局それがカエルの怪物だったことから、冗談すなわちコメディであったと気づき、夫の浮気を忘れてしまい、ジュピターの作戦が成功するという物語。

●今回のプロダクションについて

指揮者ミンコフスキーは「プラテー」などのマイナーな作品を積極的に取上げているようで、ちょうどエラートに今回の演奏と同じキャスト、オーケストラでCD録音している。ちなみに今回のプロダクションは5月のザルツブルク・バロック音楽祭との共同制作となっている。http://www.salzburgfestival.at/pfingsten/

●上演内容

プロローグでは古楽器の響きが以外と薄くてすっきりとしている。透明感があり、とても清潔なサウンドだ。要するに軽快であり、オーケストラが自在に動きまわれることのできる機敏さを感じた。幕が開いてびっくりしましたたが、ステージ全面が劇場の客席が階段状に上下左右に広がっていた。一面にベージュ色のシートが敷き詰められ、左右に上下に伸びる通路がある。時代設定は現代で、人々が左右上下の通路を縦横無人に走り回っている。よく見ると客席掛かりの女性が懐中電灯を持ちながら、客人を思われる人々を案内している、というよりも客人たちを追いたてているようにも見うけられた。この舞台セットはムスバッハ演出のルーチョ・シッラでの大階段もしくはヴェルニケの大階段とアイデアは同じようだが、人物の動きをラモーの音楽に合わせたところがポイントになっている。なぜかラモーの音楽がモダンに聞えてきた。

舞台セットに関しては、プロローグの大客席を基本に、第1幕では縦に裂け目が生じて、左右に開いた状態になる。客席下部は緑色の岩石のような状態で、ここに客席に隠れていたカエルが飛び出してきて、「クヮ、クヮ、クヮ」と合唱する場面。要するにこのオペラではカエルが沢山登場し、その一人がプラテー嬢というわけだ。他にもジュピターが天から降りてくる場面とか、嵐の場面でのウィンドマシンの効果、さらには舞台全体が本物の花火で覆われるという場面など、かなり大規模な装置と舞台効果が満載されていた。

衣装に関してもかなり派手なもので、言ってみればこのオペラは100%ミュージカル仕立てのバロック・オペラ。バレエも満載なショーでもある。それにとてもバロック音楽には聞えないところがまた不思議だ。しかも芝居が大変面白い。かなり刺激的で見ていて時間のたつのを忘れるほど。それに歌手、合唱がとても上手い。もちろんミンコフスキ&ルーブル宮音楽隊の溌剌としたアンサンブルが最高だ。演出家ペリーとミンコフスキーによってバロックが蘇り超モダンなエキサイティングさはもう一度見てみたい。