●5月5日(金)ベルリンフィル定期演奏会
Berliner Philharmonisches Orchester
Dirigent : Claudio Abbado
Solist : Gil Shaham Violine
Freitag 5.Mai 2000 20 Uhr

Johannes Brahms Konzert fuer Violine und Orchester D-Dur op.77
Allegro non troppo
Adagio
Allegro giocoso, ma non troppo vivace
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Ludwig van Beethoven Symphonie Nr.6 F-Dur op.68
>> Sinfonia Pastorale <<



今日のウィーンはマイヤーが出演する「ローエングリン」があるが、スチューダー、マイヤー、ザイフェルトの同じプロダクションを大分前に見たので、特に面白いものは無い。ちょうど今日のベルリンフィルのチケットをゲットしていたので、ベルリンへの小旅行とする。しかしこのGWはドイツ・オーストリアは28度Cを越える真夏日が続いている。夕刻ベルリン入りして、再びフィルハーモニーへ向う。

今日の座席はAブロック左側の最前列。ここは演奏家たちが登場する姿を目の当りにするポジションで、目の前をシャハム、アバドが順に登場した。至近距離でベルリンフィルを聞くとなれば、何時にも増して気合が入る。マイクも沢山林立していたから、今日のライブはCD録音されるのかも知れない。

最初のブラームス。コンサートマスターのトップは安永、となりがシュタープラヴ。前回のヨーロッパコンサートとちょうど逆になっている。最近BPOも日本人の方が増えたようでフルートは日本人女性。さて冒頭の第1主題では猛然と響くヴァイオリン群は目も覚めるような凄さである。ひとりひとりが弓をフルに使いきるダイナミックな奏法で音がぴったり一つに揃う。アンサンブルの乱れは微塵も無し。この卓越したテクニックは全てのパートに言えることだが、改めて強力なアンサンブルに感嘆する。

ジル・シャハムのソロはコメントするまでも無く素晴らしい。長く持続するヴィブラートにも音楽の呼吸が宿り、これに超ピアニッシモのオーケストラが寄り添う。全体の音色はブラームスらしい渋味も十分。よく言われるようにベルリンフィルの響きから、古き時代のドイツらしさが無くなっているのではと。それは確かとしてもブラームスではやはりドイツの響きを感じました。特に木管群の音色が素晴らしくて、郷愁を感ぜずには居られない。オーケストラの短いパッセージを経て、ソロヴァイオリンが再びあの木管のメロディを思い出す。その時の郷愁は何とも言えない美しさ。コンチェルト全体を通して見事な流れを感じる。とにかくシャハム&アバドが限りなく美しい音楽を聴かせてくれ会場は鳴り止まぬ大喝采へ。

さて休憩は、外の空気を吸うため1階のロビーから中庭に出る。芝生が敷かれた広い庭は清々しく、とても気持が良い。まだ外は明るくライトアップされたフィルハーモニーは何とも麗しい姿だ。

後半の田園はブラームスに比べて、かなりの小編成だ。音の透明感がよりいっそう増し、少数精鋭達によるアンサンブルは実に豊かな響き。それに楽しい田園風景。音の一つ一つが森の雰囲気、小鳥のさえずりを表現し、清しい田園を散歩する雰囲気に包まれている。アンサンブルも一糸乱れず軽快なサウンドがとても印象的。

第2楽章、弦楽器は弱音器を付けて独特の効果を出していた。ピアニッシモの極限状態においても音は痩せることなく、小川の流れ、生命の呼吸、のどかに佇む安らぎなど、とても沢山の情報がが聞える。田園のスコアはとてもシンプルだが、そこから紡ぎ出されるシンフォニーがこれほど豊かな響きに彩られるとは・・・やはり素晴らしい演奏とフィルハーモニーの響きがもたらす森の情景はとても立体的で耳を喜ばしてくれる。3楽章の踊り、4楽章の嵐、そして終楽章の雄大さと至福の40分は実に充実していた。はっきり言って、この田園は必見必聴!秋の日本公演でも是非是非聴きたい。さて明日はまたウィーンに戻り、いよいよ終盤のクライマックスが待っている。