●5月1日(月)ベルリン・フィル『ヨーロッパコンサート』


 10 Jahre Europakonzerte der "Berliner Philharmoniker"
 am 1. Mai 2000, 10.45 Uhr in der Berliner Philharmonie
 Dirigent :Claudio Abbado
 Program:
 Beethoven : Konzert fuer Klavier und Orchester Nr.2, B-Dur, op.19
  Allegro con brio
  Adagio
  Rondo-Allegro molto
 Pianist : Mikhail Pletnev
 Pause
 Beethoven : Symphonie Nr.9, d-Moll, op.125
Allegro ma non troppo e un poco maestoso
Molto vivace
Presto
Adagio molto e cantabile
Allegro ma non troppo
 Chor : Schwedischer Rundfunkchor
 Solisten
  Sopran : Karita Mattila
  Alt : Violeta Urmana
  Tenor : Thomas Moser
  Bass : Eike Wilm Schulte


全EUに同時中継されるためかステージ以外もライトアップされ、かなりのテレビカメラが入っている。今日の座席はDブロック。ここはホールを全貌できフィルハーモニーに居ることを実感できる。コンサートマスターはトップにシュタープラヴァ、となりが安永。フルートには退団が予定されているパユの姿が見られる。なんとチェロの末席には日本人女性が。

最初のセレモニーあとプレトニェフをソロに迎えてのベートーヴェンのコンチェルト2番が始った。実に伸びやかな演奏だ。プレトニェフのピアノにもデリカシーがあって、しなやかなオーケストラと息があっている。まるでモーツァルトのように明るい爽快感が素晴らしい。プレトニェフも名指揮者だから、アバドを信頼しきった安定感に溢れている。第3楽章の躍動と若々しさも耳を捉えて離さない。それに会場は物音ひとつしない緊張に包まれていて、演奏の隅々までが広いフィルハーモニーに広がって行く。

後半は本命のベートーヴェンの第九交響曲。CDになったアバドの第九に関しては好き嫌いが分れるようだが、はっきり言って今日聴いた第九は凄かった。前半のベートーヴェンには比較的冷静なアバドであったが、後半はかなり熱気を帯びたエネルギッシュさに溢れていた。とにかくテンポが速い。CDの演奏よりもずっと。しかもリズムが良くて、ベルリンフィルの凄いテクニックがテンポをさらに加速するようで、実に痛快。ピアニッシモで始まる快速テンポの刻みに徐々にパートが重なり、ついには豪快に驀進する様を目の当たりすれば、誰もが興奮するだろう。それにティンパニとブラスが嵐の如く炸裂し、有無を言わせない圧倒的なアンサンブル。さすがにアバド&ベルリンフィルを実力は凄い。第2楽章も同様に第1楽章の興奮がスケルツォとなり、ただリズムの乱舞に体を委ねることになる。

そして第3楽章。やっと訪れた安堵感。実に伸びやかで、透明なアンサンブルである。アバドらしく、ここはロマンに浸らないところがまた良い。第4楽章「合唱」ではスウェーデン放送合唱が圧倒的に素晴らしく、特に女声陣はカラフルな衣装でステージが華やか。ソリスト陣はマッティラ(フィンランド)、ウルマナ(ドイツ)、モーザー(アメリカ)、シュルテ(オーストリア)と4カ国の歌手を招き、ヨーロッパコンサートが全EUを結ぶものであることを願ったキャスティング。特に北欧はEU化の上で経済面での課題があると聞くが、そういった意味からもスウェーデン合唱が参加したのは意味があるのかも知れない。それはともかく「合唱」では堂々としたテンポで歓喜への吹きあがりが感動的であった。

音楽の響きは重厚というよりは羽のような軽さが層を成し、カラヤン・サーカスの大空間を掛け抜けるといった感じで、とにかくフィルハーモニーの音抜けの良さとベルリンフィルの強力なアンサンブルが上手くマッチングした素晴らしさである。こういった演奏は録音は難しく、やはりライブで聴くのが一番だと思う。それにしても第九はラトル&ウィーンフィルでも聞くのだが、しょっぱなから怒涛の演奏を聞いてしまい嬉しい悲鳴だ。