●2000年4月29日(土)モーツァルト歌劇『魔笛』/ドイツ・オペラ・ベルリン

DEUTSCHE OPER BERLIN
Sonnabend, 29. April 2000
Die Zauberfloete
Eine deutsche Oper in zwei Aufzuegen

Musikalische Leitung :Sebastian Lang-Lessing
Inszenierung :Guenter Kraemer
Buehne und Kostueme :Andreas Reinhardt
Chore :Helmut Sonne
Sarastro :Friedemann Kunder
Tamino :Gregory Turay
Sprecher :Friedrich Molsberger
Erster Priester :Jeffrey Ray
Zweiter Priester :David Knutson
Koenigin der Nacht :Diana Damrau
Pamina, ihre Tochter :Abbie Furmansky
Erste Dame :Amanda Halgrimson
Zweite Dame :Ute Walther
Dritte Dame :Elena Zhidkova
Knaben :Toelzer Knabenchor
Ein altes Weib(Papagena):Catherine Cangiano
Papageno :Ralf Lukas
Monostatos,ein Mohr :Peter Maus
Erster geharnischeter Mann :Ralf Willershaeuser
Zweiter geharnischter Mann :Josef Becker
Der Chor der Deutschen Oper Berlin
Das Orchester der Deutschen Oper Berlin
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ケルンの「死の都」などの演出で知られるギュンター・クレマーによる「魔笛」。ベルリンには日本にも紹介されたリンデン・オーパーの魔笛があり、これと対抗するDOBの魔笛とは如何なるものか興味があったが、実際に見たところ肩透かしにあった感じ。いわゆるメルヘン一杯の子供でも楽しめる魔笛であった。

舞台には既に幕が開いており、大きなピラミッドがステージに。その上空にクレータの穴ぼこが開いた月が浮ぶ。さらに左右二手に分かれ群集がうずくまった舞台で始る。序曲の開始と同時に、ステージがライトアップされ、二つのグループの群集が動き出すといった演出。二つの群集は明かに「夜の女王」と「ザラストロ」の世界を象徴していると察する。が、いずれも老若男女で構成されていて、善悪の対比には見えない。今までの定説とは少し異なる設定か。それはともかく序曲の途中で一度幕が降り、序曲の終了とともに第1幕が始るといった演出である。

舞台の左には日本の松のような大木が立っていて、タミーノは柔道着のようなものを着ていた。怪獣はとても大きくてリアル。客席からも歓声が上がる。3人の待女はライフルを構えた女猟師という出で立ち。とまぁこんな風にとても面白い舞台と演出で楽しませてくれた。興味深いのはタミーノがザラストロの三つの扉を叩く場面で、扉は日本風の掛け軸のような大きな3枚の垂れ幕になっていた。1枚目にはVERNUNFT(理性)、2枚目にはWEISHEIT(分別)、3枚目は何と書いてあったのか忘れたが、多少説明的な演出になっている。ちょっとひどい演出と感じたのは動物たちが登場する場面。見た目にはメルヘンで美しいが、チンパンジーがターザンのようにツタにぶら下がって舞台を行ったり来りするのは音楽の邪魔。しかし観客には大いに受けて、大人達からも歓声が上がる・・・

音楽と歌手たちも概ね平凡な演奏だが、ずば抜けて、というよりも今まで聴いた最高の「夜の女王」をダイアナ・ダムラウが歌った。若くて美貌の彼女は、大歌手顔負けに、最高音でもエネルギーが衰えない歯切れの良さ。絶妙なコロラトゥーラには唖然とさせられた。勿論、会場は騒然とした大喝采となる。彼女の2回目のアリアはさらに凄い。今日は彼女の夜の女王のみが収穫であった。