Report by "la lumiere des yeux"

エクサンプロヴァンス音楽祭


2000年7月17日 モーツァルト:コシ・ファン・トゥッテ

Rene Jacobs - Direction musicale
Chen Shi-Zheng - Mise en scene
Decors, costumes - Peter Pabst
Lumiere - Andre Diot

Fiordiligi - Alexandra Deshorties
Dorabella - Liliana Nikiteanu
Guglielmo - Stephan Genz
Ferrando - Jeremy Ovenden
Despina - Graciela Oddone
Don Alfonso - Pietro Spagnoli

Choeur - Academie europeenne de musique d'Aix-en-Provence
Jerome Avenas, Irena Bespalovaite, Moises Chavez, Gillian Crichton, Cyrille Gautreau, Andreas Heichlinger, Tomoko Koike, Tadeusz Milewski, Patricia Roach, Makoto Sakurada, Francka Senk, Aleksandra Zamojska, Giedre Zeicaite

Concerto Koln - Orchestre




エクスでモーツァルトのオペラを観る、これには特別の意味があるように思います。ロスバウトとパリ音楽院Oとのダ・ポンテ三部作、なかでもINAのコシ・ファン・トゥッテは格別でした。風の音まで収録されているあのCDにはエクスの夕暮れから夜にかけての空気すら感じさせるところがあります。時代かわって本日のコシは話題のディスクをリリースしたばかりのルネ・ヤーコブス指揮コンチェルト・ケルンのコンビ、楽しみです。

序曲からディスク同様に快調な運びで自然に笑みがこぼれます。ヤーコブスの指揮姿はスポーティといいますか、器械体操の選手といった風情でしょうか、音楽も筋肉質に感じられ、意外にロスバウトと共通点もあるような印象を受けました。第一幕に入ると期待通りピアノフォルテのコンティヌオが大活躍、即興的装飾を駆使して、レシタチーヴォの間はほとんど主役といっても良いかも知れません。奏者の名は失念しましたがディスクと同一だったと思います。
歌手は皆さんとも私にはあまり馴染みのない方ではありましたが、みな素直な美しい声で若々しく大変魅力的でした。

さて演出ですが・・・あまり多くを語りたくありません、積極的に悪口を言う気もありませんが。ル・モンドのインタビューで、Chen Shi-Zhengが、何の主義主張も押し付けるつもりはない、純粋なエンタテイメントを作る、といった主旨のことを述べていた様ですが、エンタテイメントとしても成立しているとは思えなかったですね。ポップな東洋趣味?いわゆるジャポニズムの開き直ったパロディ?カンフーを意識したような振り付け、しかし、音楽へのシンクロの仕方は、「ちんちろりんの?カックン」的(古い!)だったと思いますが・・・おっと、しっかりけなしてますね。お隣の老婦人とお話をして、この妙な東洋趣味の演出はちょっと・・・と言ったら、新しいものは受け入れにくいこともあるが古いものに固執しすぎるのはいけませんよ、と逆にたしなめられました(笑)。でも、繰り返し観るには堪えませんね。

ともかく、エクスの夜に大好きなコシを堪能したわけです。悪いはずはありません。ソロ、二重唱、三重唱、四重唱、五重唱、コーラス・・・やはりコシ・ファン・トゥッテが一番好きですね。カーテンコール、ヤーコブスにだけ一部よりブーの声が挙がりました。この時何か心に引っ掛かるものがあったんですね。それが何か、次のコンサートの時にはっきり意識することとなります。