Report by "la lumiere des yeux"


エクサンプロヴァンス音楽祭


2000年7月21日 モンテヴェルディ:ポッペアの戴冠

Theatre de l'Archeveche
Marc Minkowski - Direction musicale
Klaus Michael Gruber - Mise en scene

Collaboration a la mise en scene - Ellen Hammer
Decors - Gilles Aillaud
Collaboration aux decors - Bernard Michel
Costumes - Rudy Sabounghi
Lumiere - Dominique Borrini

Poppea - Mireille Delunsch
Nerone - Anne Sofie von Otter
Ottavia - Sylvie Brunet
Ottone - Charlotte Hellekant
Arnalta - Jean-Paul Fouchecourt
Seneca - Denis Sedov
Drusilla, Virt - Nicole Heaston
Damigella, Amore - Cassandre Berthon
Fortuna, Valleto - Allison Cook
Lucano, Soldiere II - Francois Piolino
Famigliere I - Thierry Gregoire
Famigliere II, Mercurio, Soldiere I - Michael Bennett
Famigliere III - Ulas Inan Ina
Littore, Liberto - Luc Coadou

Les Musiciens du LouvreoGrenoble

Production Festival international d'art lyrique
d'Aix-en-Provence 1999
Coproduction Wiener Festwochen juin 2000





初めてのエクスもとうとう最終日。本日のポッペア、私の関心はまず、演出のクラウス・ミヒャエル・グリューバー、最初にそれと知らず彼を観たのはレオス・カラックスの映画「ポンヌフの恋人」での主人公を支える老ホームレス役。のちにその演出家としての経歴、評判を聞くにつけ、一度彼の舞台に接してみたいと思ってました。アムステルダムやシャトレ、フィレンツェでのパルシファルの演出、観ることはかないませんでした。酷評している人もいましたが、何せ、指揮担当はラトル、メータ等そうそうたるプロダクション、興味を持たないではいられません。(秋の東京でのアバド指揮トリスタンのチケットも確保できました。こちらも御存じの通りグリューバー演出。)
マルク・ミンコウスキ指揮手兵のレ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル・グルノーブル管弦楽団(とでも呼びましょうか)、リュリやシャルパンティエの躍動的な演奏が印象的な彼等がモンテヴェルディをどう聞かせてくれるか。ミレイユ・デルンシュやオッターももちろん楽しみです。

Theatre de l'Archevecheのピットに所狭しとならんだ楽器達、バロック期に果たしてこれだけの大きな編成があったのかとも思いますが、いわゆるオーセンティクなというのは今や無意味かもしれません、流れてくる音楽の何と雄弁で豊かなこと!ミンコウスキの大きな身ぶり、曲の性格にもよるのでしょうが、きびきびというより、緩やかな歌、弱音の美しさの方が印象的でした。
主役の二人、デルンシュとオッターも決して声量のある方ではない様に見受けましたが、オーケストラとのバランスは絶妙で美しい歌が堪能できました。
主役を喰いかねなかったのはフシュクール!乳母役で、その達者な唄い回しといい、容姿(小柄なんです)といい、登場する度に会場の笑いを誘っておりました。



さてグリューバーの演出、全体に落ち着いた、しみじみしたトーンがとても心地よかった。絵画的な装置(後に観たトリスタン第二幕のそれを思い出します)の前、緩やかな、やや様式的といっていいような身ぶりも決して不自然に感じられませんでした。ポッペアとネローネの愛の二重唱等、演出によっては随分と露骨にエロティックな動作にしたりもしましょうが、むしろ離れていることの方が多く、そこからゆっくりと近付いていく、いやこの方が私にはより心に沁みました。聞こえてくる音楽との一体感も素晴らしかったと思います。
秋、アバドの繊細な指揮とともに観たトリスタンの演出も全く同じ、しみじみとした素晴らしい舞台でした。その時以来、やや突飛かも知れませんがポッペアの戴冠とトリスタンとの相似性を感じています。両者ほどの陶酔的な二重唱は類を見ないのではと。

このプロダクション、来る9月15日土曜日20時をプレミアに1999年の舞台の収録がクラシカジャパンにて放送されます。