フィルハーモニーの周辺では予想どおり"suche karte"(チケット求む)の紙片
を持った人が多くいました。おそらく地元の定期会員であろう人がビュッフェの
店員に「休憩はないの?」と聞いている(おそらくプログラムを知らないのだろ
う)のと対照的に日本を始め遠方からの熱心な客が多かったように思います。
席はGブロックでバックステージ側でかなり遠いのですが、、ヴァントの姿が左
側から見え(ちょうどCDの写真のように)指揮している様子がよく見えました。
たまたま今日ウィーンからのフライトで隣の席だった日本の方がコンサートでも
となりの席で「偶然ですね」と言いながら興奮して待っていると、ヴァントはか
なり元気な様子でさっそうとして現れました。指揮をする姿をナマで前方から見
るのは始めてだったのですが、非常に精悍な顔つきでオケをグイグイひっぱてい
きます(いかにも俺の指示どおりに弾けと言っているような職人的な顔つきです)。
とにかく音量のすごさ、テンポのよさ。そして、1楽章が終わると休みをおかず
に(客席からは咳の音で相当うるさかったのですが)、とりつかれたように指揮
棒を振り2楽章へ進みました。2楽章が終わった後でコンサートマスターに導か
れていったん退場したのですが、どうも服の乱れを直したかったようです。そし
て3楽章、もう満足です。9番のようにここで演奏が終わってもよいというくら
い心地よく、やさしく美しい音色。
そして演奏が終わり、余韻を味わう間もなくわりと早く拍手する集団がいたのは
残念ですが、当然すごい拍手とブラボーの嵐、それに総立ちの状態。すごい興奮
状態でした。比較的クールに早く解散してしまうベルリンフィルのメンバーも満
足感からか長く残り、ヴァントは5回くらいステージに出てきたでしょうか。
2日目、3日目とますます完成度が高い演奏になりそうな予感がします(残念な
ことに私は行けないのですが)。また昨年5月にハンブルクで聞いたNDRとの
8番よりも数段上回る演奏であったように思います(やはりオケの実力の差でし
ょうか)。
(後日談)
「音楽の友」(3月号)の記事によるとヴァントは初日の出来を「ダメだった」
と語っているようだが、あれでダメなんてとても思えない。相当な完璧主義者だ。 |