Detroit Blues Disc Guide Vol. 1



Detroit Blues Rarities 1 / Blues Guitar Killers! Detroit 1950's
(P-Vine PCD-5416)


  1. L.C. Green & Sam Kelly : 38 Pistol Blues
  2. L.C. Green & Sam Kelly : Mary Ann Blues
  3. L.C. Green & Sam Kelly : Going To The River
  4. L.C. Green & Sam Kelly : Hastings Street Boogie
  5. L.C. Green & Sam Kelly : Things Is Goin' So Tough Today
  6. L.C. Green & Sam Kelly : Shine My Light
  7. Johnny Howard : Natural Man Blues
  8. Johnny Howard : Dark Night Blues
  9. Rocky Fuller : Early Evening Blues
  10. Henry Smith : Kansas City Blues
  11. Eddie Burns : I Ain't Cheatin'
  12. Eddie Burns : Sunnyland Blues
  13. Eddie Burns : I Am Leaving
  14. Eddie Burns : Wig Wearing Woman
  15. Eddie Burns : You Better Cut That Out
  16. Eddie Burns : You Say That You're Leaving
  17. Calvin Frazier : Rock House
  18. Calvin Frazier : We'll Meet Again
  19. Bobo Jenkins : Decoration Day Blues (take 1)
  20. Bobo Jenkins : Decoration Day Blues (take 2)


バレルハウス/セント・ジョージ原盤のLPにボーナス・トラックを追加した、P-Vineによる「Detroit Blues Rarities」シリーズの第一集。1950年代中頃から1960年代に掛けてジョー・ヴォン・バトルによって録音されたヴィンテージ・デトロイト・ブルース集だ。
この第一集は、ギターリストに焦点を当てたものだが、基本的には戦前ブルースをそのままエレクトリック化したもの。L.C. グリーン & サム・ケリー、ジョニー・ハワード、ヘンリー・スミスとミシシッピーやテキサスの香りを強く残したブルースマンが続く。ジョン・リー・フッカーやビッグ・メイシオといったご当地のスター達からの影響も感じられるが、同時期のシカゴ勢の「洗練」さに比べ、あまりにも古くさい。しかし、その内容が劣っているわけではないので念のため。
マディそっくりのスライドを聴かせるロッキー・フラーは、若干17歳のルイジアナ・レッドのこと。器用貧乏が祟って注目されることは少ないが、ここでのギターと歌は年齢を感じさせない深さだ。

ジョン・リー・フッカーとも一緒に活動し、先頃来日も果たしたエディ・バーンズや、自己レーベルのBig Starを興して重要作を発表し続けていたボボ・ジェンキンスは比較的有名なブルースマン。
ロバート・ジョンソンと行動を共にし、戦前にはその影響を受けた作品を録音しているカルヴィン・フレイザーも「知る人ぞ知る」という存在であろう。
エディは安心して聴くことが出来るし、ジョン・リー・フッカーの録音で有名な(19)(20)をボボが録音していたことにもビックリしたが、ウォッシュボードが楽しい(17)やバラードの(18)で意外な一面を見せてくれるカルヴィンの作品にも驚かされた。



Detroit Blues Rarities 2 / Harp-Suckers !
(P-Vine PCD-5417)

  1. Walter Mitchell : Stop Messin' Around
  2. Walter Mitchell : Stop Messin' Around
  3. Walter Mitchell : Broke And Hungry
  4. Robert Richard : Baby Please Don't Go
  5. Robert Richard : Cadillac Woman
  6. Robert Richard : Wig Wearin Woman
  7. Robert Richard : Root Hog
  8. Elder R. Wilson : Gonna Wait Till A Change Come
  9. Elder R. Wilson : This Train
  10. Elder R. Wilson : Got Just What I Wanted
  11. Elder R. Wilson : Trouble Everywhere
  12. Elder R. Wilson : Lily Of The Valley
  13. Elder R. Wilson : Better Get Ready
  14. Joe Von Battle : Lookin' For My Woman
  15. Little Sonny : I Hear My Woman Callin


ハーピストに焦点を当てた第二集。唯一有名人はリトル・サニーのみで、残りは全く無名と言っていいだろう。
ウォルター・ミッチェルは、第一集でサム・ケリーの名前で登場したが、リトル・ウォルター・ジュニアの名前でも活動をしていた。しかしそのスタイルはサニーボーイ一世からの影響を強く受けている。
ロバート・リチャードは、1970年代に入ってバレルハウスにリーダー作を録音し、P-VineからもCD化されているのでご存知の方もいらっしゃるはず。その二人のハーピストが入り乱れるのが(1)-(7), (14)である。入り乱れるというか各々が好き勝手にハモニカを吹きまくるという感じで、これは他に類を見ない「ゲテモノ」であろう。シカゴのハーピストのような洗練さを望むべくもなく、あえて言えば「素朴」とでも言おうか。
エルダー・ローマ・ウィルソンはさらに変わり種だ。彼と彼の二人の息子がゴスペルにハープを付けたもの。つまりトリプル・ハープである。ただしこちらは親子と言うこともあり、それなりに息のあったところを見せている。ツイン・ハープやトリプル・ハープの必然性は感じられないが、そこがデトロイト・ブルースの面白いところである。
最後のリトル・サニーは最初期の録音。さすがに安心して聴くことが出来る。



Detroit Blues Rarities 3 / Blues Screamers & Gospel Moaners !
(P-Vine PCD-5418)

  1. Washbord Willie : Washboard Blues-Part 1
  2. Washbord Willie : Washboard Blues-Part 2
  3. Lena Hall : Five Long Years
  4. Lena Hall : What You Gonna Do
  5. Tye Tongue Hanley : You Got My Nose Wide Open
  6. Tye Tongue Hanley : I'll Try To Understand
  7. Danny Kirkland : They Were Rockin'
  8. Danny Kirkland : Stop Mambo
  9. Bob Smith : I'm A Lookin'
  10. Bob Smith : I Love You Baby
  11. Brother Will Hairston : Alabama Bus Part 1 & 2
  12. Brother Will Hairston : Seem Like A Dream
  13. Brother Will Hairston : Ighty Wind
  14. Brother Will Hairston : Bible Is Right
  15. Spiritual Wonders : You Got To Move
  16. Spiritual Wonders : None But The Righteous
  17. The Flying Clouds : I Know It Was The Blood
  18. The Flying Clouds : Ain't Got Long To Stay Here
  19. The Flying Clouds : My Mother
  20. The Flying Clouds : When They Ring The Golden Bells
  21. Goldentone Singers : Come Let Us Go Back To God
  22. Goldentone Singers : Pilate Washed His Hands


1960年代に入ってモータウンという一大勢力を生み出したデトロイトという街だから、当然R&Bやジャンプ・ブルースの伝統はそれ以前から根強くあった。さらにアレサ・フランクリンの父親であるC.L. フランクリン師が自身の教会で凄まじい迫力で説教し歌っていた。シカゴと並び、戦後に多くの黒人を吸収していたこの街には、多くのゴスペル・シンガー/グループが存在していたのである。ちなみに、C.L. フランクリン師は一回の説教で4000ドルもの金を集めることが出来たという。

そんなデトロイトのR&B/ジャンプ・サイドとゴスペルに焦点を当てたのがこの第三集である。とは言え、ダウンホーム志向の強いジョ−・ヴォン・バトルが録音したものであるだけに他の同様のコンピレーションとは一味も二味も違ったものとなっている。

カルヴィン・フレイザーの鋭角的なギターが印象的なウォッシュボード・ウイリー。典型的な1950年代のバンド・サウンドにも聞こえるが、その印象を大きく変えさせているのがウイリーのウォッシュボードである。どこかノベルティーな感じが、一筋縄ではいかないデトロイトの特異性を物語っている。
タイ・ハング・ハンリー、ダニー・カークランドとジャンプ・ブルースが続いた後は、これまた不思議な雰囲気を持ったボブ・スミス。ソング・スター的というかプリ・ブルース的というか.....。

これ以降は、ゴスペルが続く。マーティン・ルーサー・キング牧師によるバス・ボイコット運動をテーマにした"Alabama Bus"で有名なブラザー・ウィル・ヘアストーンは、ウォッシュボード・ウイリーが加わりブルースに近い感覚。忘れ得ぬシンガーだ。
残る三組はカルテット。なかでもフライング・クラウズが人気実力共に抜きんでている。ここに収録されたものは、ジョ−・ヴォン・バトルが録音しチェッカーにリースされたものだが、それ以前の録音が「ウィングス・オブ・フェイス-ザ・デトロイト・ゴスペル 1946-1950 」(P-Vine PCD-5822)で大量にCD化されているのでぜひ聴いてもらいたい。



Detroit Blues Rarities 4 / Hastings Street Blues Opera
(P-Vine PCD-5639)

  1. Detroit Count : Hastings Street Boogie Man
  2. Detroit Count : Hastings Street Opera part 1
  3. Detroit Count : Hastings Street Opera part 2
  4. Detroit Count : I'm Crazy About You
  5. Detroit Count : Detroit Boogie
  6. Detroit Count : Parrot Lounge Blues
  7. Detroit Count : Little Tillie Willie
  8. Detroit Count : My Last Call
  9. Piano Bill : Milwaukee Blues
  10. Piano Bill : The Only Woman I Love
  11. Piano Bill : Oh Baby Baby
  12. Miss Detroit Slim : Moon Is Rising
  13. One String Sam : Need A $100.00
  14. One String Sam : My Baby OOO
  15. Tommy Burnette : Rockin' With Leroy
  16. Gip Roberts : No one Monkey Don't Stop No Show
  17. Gip Roberts : Sand Man
  18. Janet Oldham : Money Hustling Man
  19. Janet Oldham : Bewildered
  20. Tommy Burnette : Rockin' With Leroy
  21. Fred Woods & The Kool Kats : That's The Best I Can Do
  22. Fred Woods & The Kool Kats : Can't Eat, Can't Sleep Blues
  23. Joe & His Kool Kats : Hastings Street Blues
  24. Joe & His Kool Kats : What's Shakin'
  25. Joe & His Kool Kats : The Blues Creeps


P-Vineが世界に誇る「Detroit Blues Rarities」シリーズの第四集。これは濃いぞ!
まずは、ピアニストのデトロイト・カウントが8曲も収録されているのが嬉しい。代表曲の"Hastings Street Opera"はもちろん、ブギありバラードありで楽しませてくれる。ピアノ・ビルは全く無名のピアニスト。経歴などは全く判らないが、デトロイト・カウントとは対照的なオールド・タイマーなピアニストだ。

ピアニストの後は、ワン・ストリング・サムの一弦ギターによるブルースを2曲。素朴の中に見せる彼の強烈なブルース衝動。この録音の後、しばし行方不明になっていたらしいが、1973年のアン・アーバー・ブルース・アンド・ジャズ・フェスティヴァルに登場し変わらぬスタイルで聴衆の大喝采を得たという。そんな逸話を納得させる深いブルースだ。

以下は、ジャンプ系のバンドが続く。しかしどれもが無名人。ヘイスティングス・ストリートのクラブで演奏していたバンドをスカウトしたのだろうが、この様なバンドが僅か200ヤードの短い通りにひしめいていたのであろう。

路上では、ワン・ストリング・サムが「100ドルが欲しい」と歌い、クラブではドンチャン騒ぎの酔っぱらい相手にジャンプ・バンドが連日演奏を繰り広げていた。
そんな想像を掻き立てる素晴らしいコンピレーションだ。貴重な録音を残したジョー・ヴォン・バトルと、それをディスク化したジョージ・ポーラス、P-Vineに感謝!


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