Blues for Little Mack Benefit

2000年11月20日記)


Little Mack Simmons


11月10日にRosa's Loungeで"Blues for Little Mack Benefit"が行われました。
「自分の年齢」と「愛」についてステージの上から語りかける、やさしいハモニカのオジサンであり、その昔ドラッグ・ディーラーのやり手だったらしい(注)ブルースマンのリトル・マック・シモンに最後のお別れと、残された家族に対する援助金を集めるためのコンサートです。
出演者の顔ぶれが凄く、よくスケジュールの都合が付いたものだと感心しました。それも金曜日だと言うのに....。

ビリー・ボーイ・アーノルド、マッドドッグ・レスター・ダベンポート、ビリー・ブランチ、シュガー・ブルー、チコ・バンクス、アーティー・ブルーボーイ・ホワイト、ルリー・ベル、ロレンゾ・トンプソン、イオモット・ラサン等々です。
客も大入り満杯で、壁際にズラーっと上のメンバーが並んで座っているのですから、遅れて入った僕は、出演依頼を受けたとは言え簡単にその横に座る訳にもいきません。


Billy Branch & Billy Boy Arnold

ステージはリトル・マック・バンドの演奏で始まりました。ギターは、長年相方を務めてきた小西ヒロさんです。彼は、もう何年もリトル・マック・バンドを支え、バンドのウォームアップも彼の大事な仕事でした。それからもう一人のギターが、クレッグ・デイビスです。多分、僕の知っている限り、彼は(バンドの)最初からのメンバーではなかったでしょうか?
今夜は、ベースにRosaでハウスベースプレイヤーを張る、江口ヒロシさんが参加していました。ハウスベースプレイヤーというのは、Rosaに出演するバンドにベースプレイヤーが必要な時、Rosaのトニーから電話を貰ってトニー個人がペイするシステムです。
ドラムは、アシユワード・ゲイツ。最近のアメリカ黒人は、アフリカ黒人に比べて肌の色が滑らかなコーヒー・ブラウン色の人が多いのですが、彼は本当に黒い!

余談ですが、確か22%以上黒人の血が入ると「黒人」となるそうです。現在のアメリカ黒人は、それでいくと殆どが、混血となるそうです。
人種、肌の色云々をどうこう言うと反感を感じられる方も居られるかと思いますが、別に他意はありません。ぼくがこちらで日本人と呼ばれる事は差別でも何でもないって事と同じ様に。

マック・バンドによるウォームアップが終わり、彼らをバックにこの日の出演者が代わる代わるステージに立ちました。最初にロレンゾ、そしてイオモットに続きマッドドッグの登場。彼は、いつもきちんとスーツ姿です。ハモニカは、どこかビッグ・ウォルターを思い出させます。


Lester "Mad Dog" Davenport

ビリーさんは、キー・トゥ・ザ・ハイウェイでいつもの客席練り歩き!
これは大受けでした。しかし、彼は何でこんなに見た目がいいのでしょうか?
女性問題で悩む事が多かった(らしい)ビリーさん。最近では「女性をどういう風に操縦するか?」又は「したか?」という話をし、二人で盛り上がっています。(笑)


Billy Branch

ビリー・ボーイ・アーノルドの演奏を聴くのはこれで3回目ですが、彼はもう殆どクラブで観るのは難しいでしょう。彼は、ストレート・ブルースはやらず彼のヒット曲の連発でした。あのワンコードで押し捲るヤツです。それにしてもビリー・ボーイは大きい!

そのうちに、いつの間にかルリーちゃんが登場。
「酒が、薬が」と言われ続けて、もう10年以上になりますね。勿論ぼくもその話は知っています。いろいろな憶測もあるでしょうが、こんな話もあります。むかし演奏中に、後ろから何者かにステージに置いていたマイクスタンドの重りで頭をガツンとやられて意識不明となり、何日間も昏睡状態で生死をさ迷った事があったそうです。それ以来ちょっと変わった事を言うようになったとか...。私個人はこれが有力な説ではないかと思っています。
確かに「変わり者」ではありますが、プレーは世界中で評価されています。今夜は、なぜだかスライド用のチューブを小指に嵌めていました。どこで見つけたのでしょうか?


Lurrie Bell & Billy Boy Arnold

50年代から60年代にかけて活躍したハモニカ・プレイヤーは、コットンもJr.ウェルズもマッドドッグもビリーボーイも、みんなPAのボーカル・マイクでハモニカを演奏します。ハモニカ用にアンプとマイクがセットしてあってもです。
今夜のハモニカ用のアンプとマイクは、イオモット・ラサンというハモニカ吹きのものでした。彼以外のプレイヤーは一度は手にするのですが、みんなすぐPAマイクに持ちかえるので、どうも面白く無さそうな顔をしていました。(笑)

イオモットは黒人でリトル・マックからハモニカを習ったそうですが、リトル・マックも私の知る限りではアンプは使いませんでした。
なのに、この頃ロッド・ピアッツアでも聴いているのか、ロッドと同じ4×12インチスピーカーのでかいアンプに興味が有る様です。(笑)

因みにぼくの出番はありませんでした。あまりにゲストが多いので、ぼくの時間まで食われてしまったのです。それにしても、こんなに沢山の友人に追悼されてマックさんも天国でニヤニヤしている事でしょう。

ご冥福をお祈りいたします。


江戸川スリムのお節介注釈

(注)リトル・マックはドラッグ・ディーラー?
リトル・マックが1970年代を通して、大物ドラッグ・ディーラーであったことはシカゴでは有名な話です。
彼のアパートがシカゴ市警に踏み込まれたのは、1982年8月12日の事でした。その結果13オンスのヘロインが押収され、それは闇値で47000ドルにものぼる量だったそうです。
 裁判の結果、いったんは有罪判決を言い渡たされましたが、本人が全ての罪を認めたことと、数年に渡ってドラッグで儲けた金の一部をバプテスト教会の修理のために寄付(18000ドルもの金額だったそうです)するなどの社会的奉仕活動を行っていたために判決は保留になり釈放されました。なんと3日後にはインターナショナル・ブルース・フェスティヴァルのステージに立っていたそうです。
私たち日本人にはよく分からないですね(^ ^;
("Blues & Rhythm The Gospel Truth誌No.143参照)

なお、彼のプロフィール等は「さようなら、リトル・マック!」のページを参照下さい。


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