J.F.マリア・イ・セラノ、S.J.
「キリスト教と正義」ブックレット第100号
2001年4月、バルセロナ、スペイン
グローバリゼーションとは、世界経済危機(1973年)や資本主義の勝利(89年)にともなう脱イデオロギー化・経済優先の時代背景のもと、輸送コストの低下や情報コミュニケーション技術(IT)の発達で加速された、金融・経済・社会・政治・文化的な相互結合現象だ。

1.経済的グローバリゼーション
 ITは繁栄をもたらす。だが、ITへのアクセスは不平等で、貧富の格差は増大している。ITによる生産プロセスの統合は、商品と企業の非物質化と国際分業を促進し、ベンチャー・ビジネスの台頭を促した。一方で、労働でも国際分業が進んで、先進国では失業の慢性化や所得格差の増大が生じている。他方、資本の世界ではニュー・リッチが台頭し、金融や資本が現実経済から遊離して暴走している。さらにグローバリゼーションは国家の経済政策を市場に従属させ、発展途上国の貧困と依存を深めている


2.政治的グローバリゼーション
 冷戦の終結により、国際政治の柱は三つの経済センター(米国、EU、日本=東南アジア)に移った。国民国家は複数の国家がケース・バイ・ケースで連合する柔軟なネットワーク国家へと進化する一方、福祉国家モデルが築いてきた福祉制度は危機に瀕している。さらに、グローバリズムによる西洋型民主主義の押しつけは、途上国に反西洋的原理主義を生みだした
 伝統的な政治主体としての労働組合と政党が衰退する一方、市民運動がグローバルな社会問題の主体として台頭している。グローバリゼーションは、先進国と途上国との間でも、先進国内においても、それを享受する側と食い物にされる側とに社会を分断する。後者に属する人々は、悪循環に陥って、貧困から逃れることがますます不可能になっている。
3.文化的グローバリゼーション
 バーチャルな文化情報の洪水は、余暇を豊かにすると同時に、人々の間に「何を信じてよいのか分からない」という相対主義と受動性を強めた。娯楽産業をはじめとする企業が生みだすグローバルな消費主義文化は、人々の価値観を支配し、単純なものへと変え、依存症的な生活習慣を生む。グローバルな消費文化は各国に拡がり、世界中に均質な文化をつくりだす恐れがある一方、正しく適応すればその国の民主化にも貢献しうる。バーチャルな文化情報は、実体験や内省の機会を奪う危険性もあるが、批判的な判断力を持って接すれば、青少年が社会に順応し、人格完成に向かうためにも有益だ

4.グローバル化の統治
 グローバリゼーションは、それ自体善か悪かというよりも、それがある社会でどの程度、どのように進められているかを問わねばならない。グローバリゼーションについてとりうる立場は三つある。拒絶するか、無条件に受け入れるか、それを受け入れた上で制御して、万人の福祉に奉仕させるかである。第三の道を進むために、以下の政策を提案する。
  1. 経済分野/経済システムの民主化、途上国の対外債務の免除、経済倫理の確立、エコロジカルな規制、中小企業や地域経済の活性化
  2. 政治分野/民主的な政治参加の促進、国際的な市民ネットワークの構築、国際人権擁護機関の強化、グローバリゼーションによる社会的分断を埋める対話と協力
  3. 文化分野/人間尊重の価値観の回復、市民運動の促進、青少年の社会化にたずさわる組織の強化、正しいIT教育の推進、人間尊重の価値観に基づいた宗教者のグローバリゼーションへの取り組み