内閣総理大臣、農林水産大臣、通産大臣、外務大臣、環境庁長官 様
私たち署名を行った団体は、米国の進める林産物貿易自由化協定および世界貿易機関(WTO)での林産物関税引き下げ交渉に対して大変憂慮しています。
バシェフスキー米通商代表部(USTR)代表は4月14日の講演で、アジア・太平洋経済協力(APEC)会議で議論してきた林産物や水産物など優先9分野の関税引き下げ・撤廃について、世界貿易機関の次期交渉とは切り離し、交渉を前倒しで進める方針を改めて表明しています。
日本政府は、APECでの林産物と水産物の関税引き下げに関しては反対を表明し、WTOの一般理事会特別会合においても林産物貿易に関して「地球的規模での環境問題等の視点から検討を行う」という発言もしています。また、大国の経済力による一方的制裁措置は、交渉力の公平性の観点からも問題であり、環境問題を解決する手段として適切ではありません。こうした自国の基準・判断のみに基づいた一方的制裁措置に対する日本政府の明確な反対の立場は評価できるものです。しかし日本政府は、一方で林産物輸出国側の規制緩和および輸出関税の引き下げを求め、またWTO次期交渉においても包括交渉の一部として林産物の輸入関税引き下げ交渉を含めることを表明しています。
私たちは、これらの林産物貿易自由化によって国内外において様々な影響が引き起こされるのではないかと考えています。しかし、林産物貿易自由化に向けての動きやその影響に関する情報提供や議論は、ほとんど行われていません。外務省によるWTO次期交渉に関する意見交換の場も設定されましたが、情報提供においても議論においても限られたものでした。
熱帯林の持続可能な管理を目指した、FAO/WRIによる熱帯林行動計画(TFAP)や国際熱帯木材機関(ITTO)による2000年目標が実効力を持たなかったことからも、また、戦後日本の木材輸入の歴史から見ても、貿易制限の撤廃は更なる森林破壊を招くものと考えられます。
従って、生物多様性を保全し、地域社会環境に配慮した持続可能な森林管理によるものに林産物貿易を制限するなど、環境保護面からの国際的貿易制限のあり方を検討することは不可欠です。もちろん、こうした取り組みは一方的制裁措置としてでなく、多国間環境条約や国際協力の枠組みの中で行われるべきですが、貿易制限が討議の対象とならない取組みは環境保全上実効性を失うと考えます。同時に、アジア地域などで起こった森林破壊のスピードを減速させるには、森林管理手法の改善だけでなく、日本や他の「先進国」による大量生産、大量消費、大量廃棄に基づく産業発展、消費生活のあり方を見直し、改善する措置を行う必要があると考えます。
GATTのウルグアイラウンドに際しても、農業のもつ環境保全の機能を維持するために貿易に対する制限を行うべきことを、EUおよび日本政府は主張しましたが、より直接的に環境問題に係わる項目である森林と木材貿易に関しては同様の主張がされず、環境保護のための農産物の輸入制限という日本の主張が名目上のものであると見なされる一因となっていました。私たちは、農地とともに森林が持つ「多面的機能」に配慮し、「地球的規模での環境問題等の視点」を重視し、輸入国と輸出国の権利義務のバランスをとった形で、輸出国とともに輸入国による関税措置、数量規制や規制措置、国内政策を可能にするよう、WTO協定改革のための日本政府のイニシアティブを求めます。
国際市民社会のメンバーである私たちは、米国の進める林産物貿易自由化協定およびWTOでの林産物関税引き下げ交渉が、国内外の環境や社会に、どのような影響を与えるのかについて非常に憂慮しており、以下の点について要請します。
1.林産物貿易自由化(輸出国側、輸入国側の関税の引き下げや非関税措置撤廃)が及ぼす環境や社会への影響についてアセスメントを行うと同時に、同様のアセスメント実施の必要性を国際的に広く主張すること。
林産物貿易自由化が及ぼす影響には少なくとも以下の項目が考えられます。
・国内の森林(森林面積、森林蓄積、生物多様性など)、森林管理への影響
・海外の森林、森林管理への影響
・国内の地域社会(含む治山、治水、農林水産業)および生活環境への影響
・海外の地域社会および生活環境への影響
・国内の古紙や廃木材のリサイクルへの影響
・地球規模の気候変動現象への影響
2.林産物の貿易自由化に対して十分な検討期間と広報および情報提供のもとにNGOを含めた市民社会の参加による議論を行うこと。
3.上記の1.アセスメント及び2.議論が終了するまでは、林産物貿易自由化への交渉を行わないこと。
署名団体:
ウータン・森と生活を考える会
APECモニターNGOネットワーク
サラワク・キャンペーン委員会(SCC)
熱帯林きょうと
熱帯林行動ネットワーク(JATAN)
アジアボランティアセンター(AVC)
遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン
グリーンピース・ジャパン
市民フォーラム2001
「ストップ・ザ・温暖化」静岡県民ネットワーク
森林NGO緑友会
地球環境と大気汚染を考える全国市民会議(CASA)
地球の友・金沢
奈良熱帯林保護ネットワーク
日本消費者連盟
熱帯林行動ネットワーク・名古屋
ルーラル・プアーズ