検証!プランテーションとは何か 〜私たちの生活とパーム油〜
森田 守
 
 
 これまで数回にわたり、パーム油を取り巻く生産現地での現状を説明してきた。今回は、そのパーム油が私たちの生活の中でどう使われているかを示したい。
 現在、世界で生産される油脂は約8000〜9000万トン。そのトップは大豆油で約2000万トン(うち、アメリカが約60%を生産)。そして、第二位のパーム油は1800万トンと僅差に迫り、21世紀初頭にはトップの座を占めることが予想されている。このうちの半分をマレーシア、1/4がインドネシアで生産されている。
 さて、話をマレーシアだけに絞ってみよう。マレーシアは熱帯林伐採から相当の外貨を稼ぎ出しているが、実は80年代にすでにパーム油は丸太を抜き、輸出額第3位を記録していたことがある。また同時に、熱帯の丸太と日本人の生活はそれこそ直結しているのは周知の事実だが、実はパーム油は丸太以上に日本人の生活に入りこんでいることは殆ど知られていない。
 マレーシアで生産されるパーム油約800万トンのうち40万トンが日本に輸出されている。それらは一体何に利用されているのだろう。これほど需要が増しているパーム油を、日常生活の中で私たちはまず見ることがない。コーンサラダ油とかベニバナ油とかゴマ油のように、一升瓶や缶で売られているのも見たことがないし、せいぜい、テレビや新聞の洗剤や石鹸の宣伝でお目にかかれる程度である。
 パーム油の洗剤や石鹸への利用。それは正しい。だが、実はそれは全体のほんの一部に過ぎず、7割以上は食品関係に利用されているのが現状だ。パーム油が何にどれだけ利用されているかという具体的なデータはほとんどないに等しい。だが、大雑把な公式データや、油の専門誌などから私なりに調べた数字は(92年度なので古くて申し訳ないが)以下の通りである。

・ マーガリン類や粉末調味料60,000トン
・ ショートニング55,000トン
・ 精製ラード10,000トン
・ 即席麺、菓子の揚げ油、外食店での揚げ油43,000トン
・ 冷凍・レトルト食品、菓子用油脂100,000トン
・ 石鹸や洗剤類15,000トン
・ 工業用潤滑油、樹脂、塗料、化粧品や医薬品46,000トン
・ その他10,000トン
・ 92年度需要合計344,000トン


 パーム油はあらゆる油脂の中でダントツに生産増加が進んでいる。マレーシアでは、1960年には7万2000トンに過ぎなかったパーム油生産が、96年にはその100倍以上の840万トンにまで伸びている。その理由は、

・ あらゆる油脂の中で一番安い。
・ あらゆる油脂の中で一番の反收がある。1ha当たりの収穫量が3,475キロ。これは大豆の10倍以上、ナタネの8倍以上に相当する。
・ 年間を通じての収穫が可能。
・ 精製後は酸化しにくい。米ヌカ油の倍は日持ちする。
・ 食品の風味を変えない。

 などがあげられる。
 また、パーム油は単に油としてだけで輸入されるのでなく、いろいろな製品に姿を変えてもマレーシアから輸入されている。例えば、石鹸や洗剤は96年には約6トン輸入されている。マーガリンやショートニングも91年には2万5000トンだったのが95年には10万トンへと激増した。また、パーム油から製造される化学物質は、洗剤に使われる高級アルコールなどがその代表だが、「オレオケミカル」と呼ばれ92年には4万6000トンが輸入されている(オレオケミカルに関しては、日本が世界で一番の輸入国だ)。
 サラワクといえば、熱帯林伐採ばかりが報道されている。実は現地においても、確かに伐採は未だに大問題であるが、それ以上に森の全てを切り尽くすプランテーション開発は今多くの先住民を怖れさせている。伐採が終わった後の「用済み」の森の再利用としての油ヤシプランテーション。サラワクから丸太を買い尽くした私たちは、今度はパーム油を購入していくのだ。
 日本のパーム油輸入量は増加の一途を辿り、85年には16万トンだったのが、92年にはその倍へと増加。現在は約40万トンを輸入している。
 もし、みなさんが今日買いものに行かれたら、どんな食品でも結構ですから、その原料を確かめてほしい。多くの食品に、「パーム油」とか「植物性油脂」と書かれてあるはず。私自身は、ご飯にかけるふりかけの原料名の中に「パーム油」を見つけた時は、こんなものにまでと意外に思ったものだった。同じアジアから輸入するものでも、エビやバナナや丸太と違って、パーム油はその姿を見せることなく私たちの生活に深く多岐にわたり浸透している。今これを書いている私ですら、パーム油とは無関係には生きれない。
 そして、私がパーム油と密着した生活から逃れられないのは、一つには、良心的な組織や店舗ですら、パーム油製品を「地球に優しい」「健康的」とのふれこみで売っているからだ。つまり買物の選択肢が極めて限られているのである。ご存知生協の製品にも例外なくパーム油は使われている。
 だが、ここで私は生協や自然食品店を非難する気は毛頭ない。なぜなら、それら組織の人々は、パーム油がどうやって作られ、どういう問題を引き起こしているかを知らないからだ。まずは知ってもらいたい。それがこの連載を続けている理由でもあるが、できれば私たちは地球に優しくあるべき組織の人たちと対話をしたいと願っている。逆に教えを請いたい。パーム油が流通の中でどういう位置を占めるのか、どういう理由で多用されるのかを是非教えて欲しい。そして、この連載で伝えた事実を知ってから、何らかの代替策を立てられるのか。それらのことを是非一緒に話し、考えていきたいと希望している。その日が遠くないことを祈りたい。□

●付録 本文を補足する意味で、パーム油の利用項目を大雑把に書き出してみました。

・単体油−−主に揚げ油。インスタントラーメンや揚げ菓子、外食店での揚げ油などに利用。
・粉末状油脂−−ケーキミックス、即席スープ、カレーの素などの調味食品用。粉末調味料など。
・乳化状油脂−−コーヒー用のクリーム、ホイッピングクリーム、デザートホイップなど。
・加糖マーガリン。
・ホイップ型マーガリン。
・低カロリースプレッド。
・ ビスケットの練り込み用油脂、サンドクリーム用油脂、スプレーオイル用油脂、ケーキ用のアイシング、ジャム、ママレード、バタークリーム、カスタードクリーム、チョコレート用油脂、アイスクリーム、惣菜、ドーナッツ、ドレッシングなど。
・ 冷凍食品、レトルト食品、惣菜など。
・ 工業用硬化油−−油脂に水素添加処理をしたもので、石鹸や合成洗剤用の界面活性剤の原料にもなりますが、その80%前後が分解用油脂の原料になる。
・ 分解用油脂−−脂肪酸やグリセリンの原料。その用途は多岐にわたる。例えば、塩ビ安定剤、プラスチック、金属石鹸、繊維、ゴム、燃料、ゴム・タイヤ用加硫促進剤、界面活性剤、研磨剤、樹脂・塗料・インク、医薬品・化粧品、潤滑油、爆薬など
・パーム油の成分は肌への乗りがいいとのことで、口紅などの化粧品にも利用されている。


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