6月28日(日) 昼

 記憶喪失


今、起きた。全く昨夜の記憶が無い。

「夢のサンドニ」競技場で凄い戦いがあった。

一昨日僕らの街のモンペリエからTGVで4時間かけ「花のパリ」へやって来た。凱旋門に階段で登り(日本語で「エレベーター故障」って書いてあった)、パリを一望した後、すっかり観光客をしてからパリ郊外のサンドニに向かった。夢のサンドニ競技場は、まるで巨大UFOが降り立った様なでかい円盤型の綺麗な競技場だった。中は横浜の国際競技場に似ていて、そのスケールは今まで観てきたフランスの各競技場が2つ入ってしまうくらい大きかった。これくらいの会場で試合が行なわれてれば、我々のツアーももう少しは楽だったはず。

試合は決勝トーナメントに進む事が決まってるルーマニアと敗退が決まってるチェニジアだった。それが面白くチェニジアが開始早々にPKでリードしてしまったから。チェニジアはこの試合を棄てずにファイトしてた。中盤を厳しくチェックしてルーマニアの攻めの形を作らせず良い試合になった。こういう試合は誰も見向きもしないだろうが、面白い展開の試合になり嬉しくなる。大国の戦いばかりに注目せずに、裏の良い試合をいかに観るのかも大事な要素なのだ。この日もイングランド対コロンビア、アルゼンチン対ユーゴスラビア、それに我が日本がジャマイカと戦うので、どの試合を観に行くかを考えた。そして「夢のサンドニ」が楽にサッカーを観れる環境なので、これを選んだのだ。パリは以前アルゼンチン対ジャマイカを観に来て、その人の多さで逃げ出した過去があるので、どうしてもこのサンドニだけは観たかったのだ。それにコロンビアは2試合観てチームになってないのが解ってたし、ユーゴは観たいがボルドーは遠すぎる。日本戦はドル箱の試合でチケットは山の様に余ってたが、その金額に驚いてしまった。本当は、クロアチア戦に勝ちか引き分けて、次に進む可能性があれば日本戦を選択したかもしれないが、あの試合内容で負けて失望したのでサンドニを選んだのだ。

試合は結局ルーマニアがしっかり反撃をして追い付き1対1で終了。そのチェニジアのファイトは見事だった。拍手喝采。

試合が終り寝床(この日は宿無し)を探そうとしてたら、昼間観光してたとき知りあったオランダから来てる若い二人組の日本人がいて「明日ここでチケットを売るみたいですよ」と。この二人組は、オランダで農業研修をしていて休みを利用してこのパリに来たらしい。買い物をしてたとき「今はレートはいくらですか?」って聞いてきたのが始まりで、やがてサンドニでサッカーを観れると教えるとのこのこ来てしまったのだ。彼らの所持金のなさに驚いたが、明日売るチケットを買ってそれを売って儲けると言うのだ。立派だな〜。

やがてこの二人組と我々の3人とでサンドニ競技場のチケットインフォメーションの前で寝る準備をした。そのまま無事朝を迎えれれば良かったのだが、、。デジカメで撮った写真をMACに落としてた時、さっそく赤いオフィシャルのシャツを着た人がやってきた。「ここは危険だ。余りにも危険すぎる場所でここにはポリスが来ないし、悪い奴らが30から40人の人間がやって来て、そのコンピューターや食べ物(夜食用に買ってあった)を、それらをすべて持っていってしまう。それにチケットなんてここでは売らない。ほろそこに書いてあるだろう」と指を差した先には「Not sell」の文字。あーあ、必ず付いてくるいつもの出来事だ。

一目散で撤収をして、オランダ組と別れてパリを目指したが、もうメトロは無くなってた。タクシーで「北駅」に向かうか迷ってメトロの駅でウロウロしてる時、また違うオフィシャルの人がやって来た。「ここは全然安全だよ。僕はここから1キロの所に住んでるが、そんな危ない話など聞いたことがない」と。どうなってるの〜???

また、別の若いオフィシャルの人をつかまえて訊く。「チケットは本当に売るのか?」とすると「売るよ。明日の8時30分に。ホテルはあっちの方にあるよ。安全だけどホテルに行ったほうが良いと思う」と優しいお言葉。売ることが分かれば、あとは時間が過ぎるのを待とうとまたサンドニ競技場へ。寝床を探すが風が強く寒い。本当に寒い。92年に広島のアジカアップの「びんご競技場」を思い出す。あー寒い。おまけに僕はパリをなめて半ズボンだ。バカ。昼間買ったオールドのユニホームに足を通す。いくらかましに。でも寒い。パリに持ってきた全ての着るものを着るがそれでも寒い。あーサンドニ寒い。



三度寝床を変え朝を迎える。7時半になりチケットは何処で売るのだろう?誰もいないのだ。昨夜売ると言ってたが場所は確認しなかった。8時になりタクシーがやって来た。発売されるチケットは「ナイジェリア対デンマーク」なのだが、タクシーから降りてきたのはナイジェリア人のあばさん。やっぱりチケットを買いに来たのだった。チケット売るのだ、やったー。だが、人がそれだけとは、、、。やがて、幸田光生と小池光洋の二人が別の場所との情報を持ってきた。急げ〜、でも場所分からない。さっきのおばさんに場所の書いた紙を見せるとタクシーで一緒に行こうと。だがタクシーが来ない。調べてみたらメトロでひと駅。おばさんには悪いが我々はメトロで向かうことにした。駅に着いて探す。大聖堂?何処?

サンドニ競技場にいた親子が先を急いでる。あれだ、後を追う。大聖堂の前に人が並んでいた。あそこだ。やっぱりこうでなきゃおかしいと思った。チケットを何と銀行で売ってるのだ。500、300、250、200のそれぞれのカテゴリーがあり、デンマーク人は500が買えないらしい。1人4枚までで6000枚を売るらしい。我々が着いた時にはおよそ500人位いた。その中に何とさっきのナイジェリアのおばさんがもういたのだ。再会。負けた。

順番が来て買えた。やったー!!自分の手でつかんだ決勝トーナメントのチケット。名前は残念ながら入らなかったが、一生の記念チケットだ。




今、パリのほぼ中央に位置する「Bonne Nouvelle」駅そばの「Sudotel Promotour」というホテルにいる。どうやら僕は風邪をひいたらしい。昨夜は三人で近くのチャイニーズレストランで買ってきた惣菜とやたらブラジル嫌いのファイトしてた国籍不明のおやじの店で買ってきたワインで部屋で盛り上がったのだ。テレビでブラジル対チリを観たはずだが、全く記憶がない。今、テレビで得点シーンが出てたが、観たような観てなかったような、、。どうやら酒盛りの途中で記憶が無くなってるようだ、、。

サンドニで向かえた強烈な寒さでの朝、パリでの最初の夜は気絶。サンドニは凄い思い出の地になった。パリはどうなら風邪との戦いのようだ。さぁ、これから自分で買ったチケットをもってサンドニに向かうの。