2001/3/14 静かな午後

1ヶ月間アメリカのLA(ロサンゼルス)に行ってきた。合間にはナッシュビルにも足を伸ばして来た。


「ゆず」のツアーが終盤の頃から体調も悪くボロボロの感じで渡米した。準備も慣れているものの前日に簡単な荷造りだけでまとめた。それでも国際免許とか新規パスポートを申請しに行ったりとかはしてたが、、。LAには何年ぶりだろうか?十数年前に始めて訪れて以来、過去何度となく行ってる場所であり僕の大好きな場所でもある。今では有名になってしまって地元民はあまり行かなくなったベニスビーチの砂浜は、僕にとっては聖地なのだ。ひとりここの砂浜で座って太平洋を眺めながら、自分の人生を振り返えり、そして頑張って仕事をしてまたここに戻ってこようと心に誓う場所なのである。今回のLAは本当に天気が悪くて全然「カリフォルニアの青い空」では無くて雨ばかりだった。ビーチには2回しか行けなかったけど、帰国前日に快晴の中ベニスビーチでひとり物思いに浸れたのは良かった。

1ヶ月間のレコーディングをしてたわけで、それはそれなりに大変だったけどとても充実した日々を過ごしていた。あえてアーチスト名は伏せるが8年ぶりのロスレコーディングは本当に素晴らしい内容で充実したレコーディングだった。8年ぶりに揃ったレコーディングメンバーはみんなレベルを上げて上手くなっていた。譜面も強くなっていたし、、。人間的にもみんな素晴らしい人間に成長していたと思う。エンジニアも懐かしいブライアンだったし、、。日々充実して集中してレコーディングが出来た。楽しかった。後はこの熱き思いが何処までこの日本に伝わるかだ!!

渡米中に三泊四日でナッシュビルに行くことを決めた。時間的に余裕が出来たのとひとりで何処かに行きたくなったので、、。94年にアメリカを一周りしたことがあったが、それでもまだまだ行ってない場所が多く、どうしても行きたかったナッシュビルに行けるのなら頑張って行こうと決めた。コーディネイターのKOちゃんに相談して安い航空チケットを手配した。そして、ナッシュビルと言えばギターのDr.kこと徳武弘文さんにさっそくメールを書いた。すると何と同じ時期にベースの六川正彦さん共々ナッシュビルに来てると。それならなおさらと拍車がかかりほぼ1週間前に決定した。航空チケットの関係で1週間前に申し込まないとチケット代が$1000も変わってしまうからだ。

アメリカに行くと必ず楽器屋巡りをする。最近はインターネットの普及で世界の楽器(僕の場合はアコーステッィクギター)の値段の相場が決まってしまう。おまけに日本のバイヤーが世界に足を広げて買いあさってる関係で値段が高くなってる。最近の日本の楽器屋の品数、品揃えは凄い。それでも僕はアメリカに来たら自分の足で動いて良いギターに出会う為にいろいろのショップを巡るのが好きだ。そこで店員との交わす言葉こそが生きた英語だと思うから。もちろん気に入ったギターに出会えば値段の交渉をする。ケースは付いてくるかとか税金は含まれるか?とかね。

ナッシュビルには古いギターを期待して行った。60年代前後のギターそれも出来るだけボロボロのを。結果は残念ながら思い描いた楽器屋もギターにも出会えなかった。きっと何処かにあるのだろうけど今回の旅では出会うことは出来なかった。それでもナッシュビルには相当なショックを受けた。アメリカの田舎を感じさせる土地の雄大さとか時間を感じさせないゆとりみたいのを感じた。街と呼ばれるダウンタウンは一角だけで、それはテキサスのダラスとかを連想させた。こんな街に何故こんなにもでかいビルとかホールがあるのか不思議に思える物が点在した。郊外の「オープリーホテル」とかそこのモールとかは半端じゃない大きさだった。

楽器屋には裏切られたが夜な夜な行われているライブギグには驚かされた。入場料などは要らなくライブハウスに入って空いてる席に座ってドリンクだけをオーダーする。時間を決められてバンドが演奏をする。持ち時間の最後に店員が箱を持って回る。そこにチップを好きなだけ入れる。こんな店がメインストリート(何故かブロードウェイという通り)に何軒も並んでる。観客は通りを散歩しながら演奏を聴きながら店に入るのだ。だから人気のあるバンド、注目されるバンドが始まると人間が動くのだ。僕が着いた日に観たバンドは凄かった。4人組だけどみんながボーカルを取りあい演奏は完璧。特にギターは超上手かった!!デブ(アメリカ的肥ってる人)でなければ世界に名が轟くであろう。早速僕はCDを購入した。
その後、何本かライブを観たのだがソウルのグラディナイトのライブは特に良かった。チケットが$49と高かったので考えたのだが、ちゃんとし会館でのライブを観たかったので決めた。このライブは古い市民会館で行われた。(二日後にはジェフベックがライブをやった)。そのライブ内容が素晴らしく感動した。歌はもちろんなのだが構成がしっかり出来ていて、バンドのサポートも完璧。《M C》からのバンドの入り方はまるで映画を観てるようだった。そして、もっとも感動したのが観客の「質」の良さ。

歌を聴き、共に唄い、笑い、踊る。彼女が喋り始めると聴いていて良いタイミングで言葉をかける。バラードになれば目を閉じ聴き入り、盛り上がれば立ち上がり踊り狂う。そして良い演奏、感動したときには会場一丸となってスタンディングオベーションをする。それも何分間も。その場に僕自身がいて立ち上がってる自分もそのショウに感動してるし参加してる事に気づいたのだ。それは90年にイタリアに行って初めて観たワールドカップを思い出した。観客がそのショウを盛り上げえてるのだ!!素晴らしかった。言葉が理解できればもっともっと感動するんだろうと思うのが残念だけど、、。意味が殆ど解らなくてもそれでも良いものは感動するのだ。それは音楽でもサッカーでも自分自身で感じるものだと思う。感動の1時間30分だった。本当に感動した。

ナッシュビルに来る前日にLAでロベンフォードのライブを観た。前から大好きなギター弾きなのだがナッシュビルに行って感じたのはアメリカは広く凄い国だと思ったこと。LA で感動してたつもりが1日でナッシュビルの凄さに驚いたし、ギター弾きも本当にゴロゴロ上手いのがいるのだ。こんな土壌から世に名が出てくるのだから凄い国だ。でも、こんなこともあった。

今回のナッシュビルでいち押しのアーチスト、ジェーミーオニールのライブを観に行ったとき。3つのバンドのショウだったのだが、ジェーミーオニールのライブが終わって次のバンドが紹介されて演奏が始まったとき、メインのボーカリストのマイクが音が急に出なくなったのだ。1曲目の途中で、、。予備のマイクも用意されてなくて、ベースのマイクで歌おうとしたらそれもトラブル、、、。結局、演奏が中断されてメンバーが引っ込みスタッフが出てきてチェック。会場は観客は2000人くらいいて満員。そんな状況でのトラブル。結局15分くらいの中断。この辺は日本の方がレベルは上かなと感じたりもした。でも観客が全然余裕で待ち受けてて、司会(舞台監督?)が出てきて「さぁ始めるぞ〜!!」って叫んだら盛り上がっちゃうんだよね。全然余裕って感じで。音楽を楽しんでるってのが解った瞬間。


LAに戻ってレコーディングの残りをしてから帰国した。ギターは結局ロスの郊外のノーマンズギターという店でエピフォンの「TEXAN」というチェリーサンバーストのギターを買ってきた。過去ギターを買ったときのジンクスがある。それはまずいろんな店に行って目ぼしいギターを弾きまくる。印象が残ったギターについて質問をする。値段(税金込みか?)、年代、ケースが付いてるか(結構ケースなしもある)などを訊いて、ある程度の目星をつける。決して即買いはしない。それで後日印象に残ったギターを整理してると何故か夢に出てくるのだ。今回、下見がてら行ったときに一緒にレコーディングエンジニアも行ったので、生音を聞きながら意見交換も出来たので余計にこの「TEXAN」が印象に残っていた。それでも途中でナッシュビルという新たな目的が出てきたので、かなりの部分でナッシュビルに期待をしていたのだが、、。ナッシュビルで全然良いギターに出会わなかったのでLA に帰ってきて、この「TEXAN」をどうしてももう1度弾きたくなっていた。そんな中で帰国日は決まった日に夢に出てきたのだ。それでも場所的にかなり遠いので時間的にも無理があったが、無理してでも行くことにした。以前、別の店でJ-50を買ったときも時間的にかなり無理してでも買ったのを思い出した。みんなその時のその時の想い出でギターが増えていってる。これで何本目なのだろうか?でも良いギターに出会えて嬉しい。


日本に帰ってきた明くる日、朝9時に調布のグランドでサッカーを久々にした。快晴の日のサッカーは気持ちが良いものだ。何故か疲れを感じず気持ち良く出来た。そしてその後新しく出来たスタジアムの柿落しの試合を観た。素晴らしいスタジアムが東京に出来たものだ。交通の便もバスの発着をグランドに隣接の形で行き先別でどんどん出発させるので思っていた以上に良い。横浜の国際競技場みたいに延々歩くことにならないのが良い。大事な試合は期待のヴェルディが先制するものの逆転負け。小倉、永井、三浦は機能せず。もっとパスとドリブルを使ったチームに変身して欲しいけど、、、。これはまた時間があるときに書きます。頑張れヴェルディオールスターズ!!


そんなこんなで昨年の10月から続いていた大きな仕事の山を越えました。少しだけ休めます。LAに行って体調が戻ったのでこのままの良い状態で当分過ごしたいです。でも、日本に帰ってきたら凄く静かに感じてます。きっと凄く良い感じなのでしょう。そうそう今日ワールドカップの郵送分の締め切り日で朝から書き込んで郵便局へ直に持っていきました。いよいよ来年なんですね。本当に時の流れは早いものです。さぁ〜てと今年も頑張るベ〜!!。


                                 2001年3月14日午後5時 事務所にて