ヤン艦隊の幕僚たち  



フレデリカ・グリーンヒル 副官。第13艦隊の設立当初からヤンの副官としての
任に就き、以来、第13艦隊が解体され、独立艦隊と
しての行動をとるようになった後もなお、ヤンのもと
にあって戦術・戦略両面において補佐し続けた。
副官の任に就く以前より、父であるグリーンヒル大将
のはからいで互いに知己はあったが、さすがのヤンも
着任した彼女の姿を見たときには驚きを隠せなかった
ようだ。しかしその事務処理能力は卓越しており、艦隊
の統制諸務を円滑に進めるには、彼女の手腕は不可欠
なものであった。実際彼女が風邪で数日間療養した際
相当数の処理が滞ってしまったくらいである。
バーミリオン会戦に先立って、ヤンから受けたプロ
ポーズに対して示した、戸惑いながらも毅然とヤンの
気持ちを受け入れる姿は可愛かったっす(^^)。
あえて彼女の難点を挙げるなら、料理の腕前くらいと
言えようか(笑)。
バーラトの和約後、同盟軍の解体が進められる中での
二人の新婚生活は、束の間の期間ではあったものの、
決して幸薄いものではなかったと信じたい。
ムライ 参謀長。第13艦隊の設立当初からヤン艦隊の参謀長
として、司令部の幕僚達を統括してきた。
当人の人となりはいたって尋常であり、むしろ一部の
領袖からは「歩く小言」などと、発言者当人たちの
脱線ぶりは全く無視された形の評価を受けていたほど
である。こと首脳部に近づくにつれ、加速度的に素行
不良者が増大していくヤン艦隊の中にあっては、さぞ
気苦労の絶えなかったことだろう。
とは言うものの、そういった多数派連中の暴走を適度
に抑えるのが自身の役目であると考え、それを実行
すべく態度に表していた部分もあったようである。
ユリアンに対し、その心情を吐露した場面ではムライ
の内面が垣間見えた、珍しい瞬間であった。
ヤンの死後はイゼルローン内に燻る不平分子を、自ら
の名誉と立場を引き換えにして纏めてあぶりだし、
内部崩壊を防ぐ。アッテンボローなどは「損な役回り
をなさるものだ」と、要塞退去後のムライへの世評を
案じたが、自身は敢えてその道を選ぶのである。
最後まで、自分に課した信義を通した人物であった。
フョードル・パトリチェフ 副参謀長。堂々たる体躯の持ち主であり、むしろ前線
の指揮官という態が相応しい人物である。が、副参謀
としての軍務を滞らせたことは一度もなく、その剛勇
な風体と言動は、士気高揚を図るに際して十全に効果
を発揮した。司令官の戦略・戦術構想に対して、彼が
「なるほど」と一言頷きさえすれば、とりあえず場は
まとまるのである(笑)。
ヤンと最初の面識を得たのは案外古い。ヤンが少佐に
なって間もなく、惑星エコニア捕虜収容所に任官した
際に、参事官たるヤンのもとで参事官補としての任に
就いてよりの縁であった。
地球教徒によるヤンの暗殺事件の際、文字通り自らの
体を楯にして、ヤンの逃走を促した。
アレックス・キャゼルヌ イゼルローン要塞事務総監。卓越したデスクワーク
処理の手腕を持ち、同盟末期には後方勤務本部長代理
の任を務めた。時を経ず、ヤン一行がハイネセンを
脱出するにあたっては、後方勤務本部長職をもって
残留を求めるロックウェルに対し、「ふん!」という
一言を残してこれを一蹴した。少なくとも、軍内に
おいては極めて常識人である彼も、このときばかりは
損得やら立場やらを度外視して行動を起こしたわけで
ある。公よりも私としての選択をとったあたりにキャ
ゼルヌの人となりが表れていたといえる。めずらしく
オルタンス夫人に誉められていた(笑)。
ヤンとの親交は古く、士官学校の事務局次長時代に
出会って以来の交友である。互いに毒舌を交わし合い
ながらも両者の信頼の情は厚く、あえてヤン艦隊内の
次席を挙げるならば、疑いなく彼となるであろう。
また、ヤンに対しユリアンを引き合わせたのも彼で
あり、ヤン自身もこう述懐している。
「キャゼルヌ先輩は、一つだけ良い事をしてくれたよ
 それはユリアン、お前を私のところに連れて来て
 くれた事さ」と。
ワルター・フォン・
     シェーンコップ
イゼルローン要塞防御指揮官。第13艦隊設立当時、
「薔薇の騎士」連隊隊長として幕僚に加わった。
同盟軍内において、その白兵戦能力に並ぶものなき
「薔薇の騎士」にあってなお、他の追随を許さぬ技量
を誇る練達の勇者である。
もっとも、彼の技量と才覚は戦闘のみに向けられて
いるわけではなく、数多のご婦人方の、その堅牢なる
防壁を篭絡至らしめる事に、至高の価値を見出して
いる不良中年
平時いかに漁色家ぶりを発揮し続けていようと、こと
戦闘となれば、卓越した才腕をもって一軍の指揮を
とるその姿に表れる落差の顕著さが、良くも悪くも彼
らしいと言えば彼らしいと言えよう。
自らの過去を語るような事は滅多になかったが、亡命
者であるがゆえに、二度の祖国喪失に際しては微妙に
錯綜した心境にあっただろう。そういった心象の裏返
しか、ヤンに対し、腐敗しきった現状国家を転覆させ、
独裁への道を使嗾する場面が幾度か見られた。
バーラトの和約後は退役し下野していたが、混乱した
政府によって拘禁されたヤンの身柄を救出するため、
首都守備軍と交戦し、ヤンを伴ってハイネセンを脱出
した。その後はイゼルローン奪還、カイザーの旗艦へ
の強行突入など、戦いの帰趨を決する局面において
最前線に立ち続けるのである。
その最期の時に至るまで、男の美学を体現して見せた
伊達男であった。
カスパー・リンツ 「薔薇の騎士」連隊隊員。前隊長のシェーンコップが
イゼルローン要塞の防御指揮官となってからは、その
後を継いで14代目の連隊長となる。
「シェーンコップの右腕」として、信頼を置かれつつ
芸術や音楽にも造詣が深い、多彩な人物。
バーミリオン会戦後は、メルカッツらとともに逃亡し
帝国軍の目を盗んで潜伏していた。
シヴァ星域会戦においては、シェーンコップの指揮の
もと、帝国軍総旗艦・ブリュンヒルトに突入を図り、
カイザーの首級をあげるための強行作戦を敢行した。
結果、彼は薔薇の騎士連隊の中における数少ない生き
残りの一人として、終戦を迎える事になる。
ライナー・ブルームハルト 「薔薇の騎士」連隊隊員。リンツの「右腕」に対し、
こちらは「シェーンコップの左腕」と称される。
バーミリオン会戦後、潜伏を謀ったリンツに代わり、
連隊隊長代理を務める。
余談ではあるが、飄々とした見た目や態度に反して、
シェーンコップの薫陶これには届かず、女性に関して
は存外に初心であったらしい。
地球教徒によるヤンの暗殺事件の際、ヤンの逃走を
助成すべく勇戦し続けたが、多勢の地球教徒に対し
不利は免れず、ついには敵弾に倒れるのである。
カール・フォン・
     デア・デッケン
「薔薇の騎士」連隊隊員。正確に言うと彼はヤン艦隊
に所属する以前、ヴァンフリート攻防戦において戦死
している。が、「薔薇の騎士」連隊にあってリンツや
ブルームハルトと並び、信頼の厚い部下であった。
大柄で果敢な戦闘要員だったが、普段は温和な若者で
ある。帝国に寝返った「薔薇の騎士」連隊第11代
隊長リューネブルクと相対し、戦技及ばず敗死した。
ルイ・マシュンゴ 准尉。ユリアンの護衛役を務める、褐色の肌の巨人。
いかつい容姿ながら、落ち着きのある好青年であり、
周囲からの信頼も厚い。ヤンが査問会に招聘された際
護衛としてフレデリカと同行、襲撃してきた多勢の
憂国騎士団を相手に奮闘するなど、その挌闘戦能力は
シェーンコップからも一目置かれている。
フェザーンや地球に赴く時も、常にユリアンの傍らに
あり、護衛の任を果たした。そしてシヴァ会戦終局、
講和を結ぶため、カイザーの旗艦に強行突入を図る
ユリアンを守り、彼は自らに課した盟約を終えるので
ある。「人は運命には逆らえませんから」。
オリビエ・ポプラン 中佐。第1空戦隊長を務める。数多くの戦闘を経、
そのつど多大な戦果をもって帰還し、撃墜王として
全軍に名を馳せてきた「ハートのエース」。
いまさら説明するまでもないが、女性遍歴の多彩さは
シェーンコップと並んで銀河に屹立するものであり、
本人の弁を借りれば、世の女性方に博愛主義の何たる
かを説いてまわるのが彼の役目だそうである。
また、自らヤン艦隊の「伊達と酔狂」の具現者たる
ことをもって任ずる彼であるが、少なくともヤン・
ウェンリー個人と、そのヤンが奉じた民主共和制に
対する思いは、時折垣間見せた言動から見て取れる
ように、彼なりに真摯なものであったに違いない。
地球教徒の本拠地に潜入したり、カイザーの旗艦に
突入を図ったりと、散々暴れ回ってきたにも関わらず
最後まで生き延びた強運…というより悪運の人。
イワン・コーネフ 中佐。第2空戦隊長を務める。ポプランと並ぶスパル
タニアン部隊のトップエースであり、両者とも長年に
わたって、悪友としての心温まる交友を深めてきた。
合方のポプランとは正反対の、浮いた話を見せない
堅物であり、何よりもクロスワードパズルをこよなく
愛する「クラブのエース」。
アスターテやアムリッツァといった、数々の激戦を
くぐり抜けてきた彼であるが、バーミリオン会戦に
おいて敵巡航艦よりの砲撃を受け、ついに戦死を遂げ
る事となった。コーネフ戦隊の副長・コールドウェル
大尉より報告を受けたポプランは、やり場なき憤激を
手にしたボトルにぶつけるより他なかった。
ウォーレン・ヒューズ 第13艦隊所属の空戦隊所属。アムリッツァ星域会戦
において、ケンプ艦隊との交戦中に戦死した。
ポプランやコーネフと並ぶ、スパルタニアン部隊の
トップエースであった。「スペードのエース」。
サレ・アジス・シェイクリ 第13艦隊所属の空戦隊所属。アムリッツァ星域会戦
において、ケンプ艦隊との交戦中に戦死した。
ポプランやコーネフと並ぶ、スパルタニアン部隊の
トップエースであった。「ダイヤのエース」。
コールドウェル 大尉。第2空戦隊所属、副隊長を務める。コーネフの
後を引き継ぎ、隊を纏める。空戦隊員としての腕は
確かで、ポプランからの信頼も厚かった。
カーテローゼ・フォン・
      クロイツェル
伍長。シェーンコップの実子であり、本人としても必要
以上にその事を意識せざるを得なかったようである。
不肖の父親に対する微妙な、しかし明確な反発心から
度々食い掛かっていく場面が見られた。
父親たる「不良中年」に限らず、男性全般に対して
強固な不信感を持っていたようで、当初ユリアンに
接するにあたっても、かなり手厳しい態度で臨んで
いた。しかしながら彼女にとって、ユリアンへの感情
は複雑なものであり、その苛立ちが彼女の心情を頑な
なものにしていたのだろう。
二人が分かり合うには、互いのかけがえのない人々を
失い、深い哀しみを知り乗り越えるまでなお、時間を
必要としたのである。
アサドーラ・シャルチアン 旗艦ヒューベリオンの艦長。分艦隊司令官となった
マリノの後任として、二代目の艦長となる。
浅黒い肌に堂々たる体躯、頬から口元にたくわえた
黒髭と、いかつい職業軍人然とした容姿の人物。
見た目に違わず実直剛毅な性格であり、またその艦長
としての技量や統率力に関しても、完璧に近い手腕を
発揮した。

ニルソン
中佐。戦艦ユリシーズの艦長を務める。
こわもての親父然とした人物であるが、部下たちから
冗談の対象とされるくらい、信望と好意を得ている
ようである(笑)。
また彼の艦が哨戒に出ると、ごく高い確率で敵を引き
連れてくる結果となるらしい(^^;)。
バグダッシュ 中佐。救国軍事会議によるクーデター蜂起の際は、
会議側のメンバーとして参加。ヤン暗殺の密命を受け
第13艦隊内に潜入を図った。しかしこれはシェーン
コップによって看破され、計画は未遂に終わる。
その後はクーデター派を見限って転向したものの、
さすがにしばらくの間は白眼視されていた。とくに
ユリアンからの信用度の欠如は尋常ではなく、一度は
この横着な男が、気の毒な事に冷や汗を流す羽目に
陥った程である。してみれば、ユリアンこそ艦隊内に
おける最強の天敵であったと言えよう(笑)。
とは言うものの、転向してより後に翻意を窺わせる
ような言動はなく、ヤンの戦術を情報面から常に支え
続けた。その活躍はむしろ同盟軍の瓦解後において
顕著に表れることとなる。政府によって拘禁された
ヤンの所在を発見するに始まり、続くイゼルローン
要塞再々奪取作戦にあたっては、巧緻を極めた情報
操作によって敵将ルッツを出し抜き、要塞奪還を成功
に導いた。ポプランあたりに「ペテン師の片割れ」
などと評されたりもするが、裏面からヤン艦隊の戦術
的勝利を助勢してきた功労者である。
ユリアン・ミンツ