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ビールの友013
トーキョーライフライン
1996.09.26

 災害時のライフラインの確保は非常に重大な問題である。ライフラインとは電気、ガス、水道である。これが長期にわたってなくなると、人は生活ができなくなる。

 真っ先に困るのは水道だろう。3日飲まずにいると人は死ぬそうである。「断食」というのがあるが、あれも水は飲むそうだし、場所によっては3日に1度くらいお粥程度のものを食べるそうである。

 電気とガスは現代社会特有のライフラインだ。どちらも調理や暖房に欠かせない物である。火を燃やすことができればしばらくの間は何とかなりそうだが、木材の入手は難しそうだし、火を使える時間は限られてしまうだろう。長期にわたって大勢の人間が効率よく生活するためには、やはりどちらも必要な物である。冬場であればなおさらだ。北海道沖地震の時や、阪神大震災でこのあたりのことはみなさんもよくご存じだろう。

 しかるに、である、これほど大切なライフラインを、トーキョクは故意に切断したのである。一般市民のライフラインを、である。信じられない出来事だ! どこで起きた事件かというと、僕のうちなんですね、これが。東京ガスは、僕のうちのガスを止めてしまったのであります! これを怒らずに何を怒るというのか。反語強調文です。勉強になるなぁ。
 おかげで現在僕は火を使った料理ができない状態にあります。煮物も野菜炒めも牛スジの煮込みも作れない。インスタントラーメンさえ作れない。これはいう必要もないと思うが、インスタントうどんも作れないことはいうまでもないのであった。お湯も満足に沸かせず、カップ麺一つ食えない。ひどい食生活の状態に追い込まれている。これはもはや人の尊厳の問題である!!

 それでなくても東京ガスには恨みがある。昨年4月には定期点検と称して東京ガスの人間がやってきて、うちのストーブを「危険だから」といって持っていってしまった。そーかー、あのときのことがあるから、今度で二度目なんだな。ひどい目に会わされるのは。

 許すまじ! 東京ガス!

 まぁその、東京ガス側にもいろいろと言い分はあるでしょう。ストーブは不完全燃焼を起こす危険な物で、その前の点検の時にも警告を受けていたとか、ガスを止めたのは4カ月もガス料金を払っていないからだとか……。

 しかし、そんなことは大した問題じゃないんだ! 人の、いや、人間の人生において、そんなことが重要な問題だと、あなたは、ほんとうに、ほんとうにそんなふうに思いますか?


 持って行かれた、あのガスストーブは、僕が学生時代、買った物だったんです。それまで暖房がなかったので、冬になると部屋の中にいながらセーターとコートを重ね着しなくてはならなかったのでした。古道具屋で2000円でした。「解放式」とかいう方式で、火力は上下2列に並んだパネルのようなガス吹き出し口(?)の下を使うか両方を使うかという2段切り替えでした。天井部分も開いていて、ここはぶっとい格子になっていました。その上にやかんを載せてお湯を沸かしたり、煮物が冷めないようにナベを乗せたりしていました。

 「解放式は二酸化炭素が発生しやすく、中毒事故につながるのでお薦めできません。特に、お使いの物は空気との混合比が調節できなくなっているので、二酸化炭素中毒の危険が非常に大きいのです。」

 僕はそんな言葉にだまされません。どんなに悪口を吹き込まれようと、僕がうちに帰れば必ず暖かく迎えてくれた、あの思い出は誰にも汚されることはありません(涙)。

 と、ゆーよーなシダイで、東京で生きるというのは実に厳しいということであります。仕事をしないでいると生活できないし、代金を払わないでいるとガスを止められるのです。ライフラインさえ、お金でやりとりされる、そんな街なんです、東京は。恐いところです。

 毎日帰ってくると、ドア脇のガスメーターにぶら下がった東京ガスの「おことわり」と、その先の針金(ガス栓を封印してある)に迎えられる今日この頃です。

 ちなみに支払いを要求されているガス料金は4カ月合計で3,357円です。

 そうそう、ライフラインを絶たれたのは私だけではありません。先日友人と飲んだときにもっとすごい話を聞きました。この友人、学生時代に水道を止められたことがありました。すぐ近くが公園で、この公園には水道があった。で、水がほしいときには、この公園まで出かけてバケツに水をくんで帰ってくるということをしていたそうです。

 友人宅のトイレは水洗です。ま、今時水洗以外を探す方が大変ですが。彼は、コトが終わると毎回公園まで出かけてはトイレタンクに水を入れ、おもむろに流していたという。よくそんな生活を続けられたもんだなぁ。

 ライフラインの重要度はやはり水の方がガスより上だと思うのでした。


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