●APSって?
APS(アドバンスド・フォト・システム)はコンピュータ時代の新フィルムとして1996年に登場した。コダックが提唱し、イーストマンコダック、富士写真フイルム、キヤノン、ミノルタ、ニコン各社が共同開発。一般的に使われているフィルムが35mmフィルムであるのに対し、約60%の大きさの24mmフィルムを使う。
●画面の大きさ
APSはCタイプ、Hタイプ、Pタイプの3つの画面の大きさで撮影することができる。今のコンパクトカメラに付いているいわゆるパノラマ写真は、35mmフィルムの上下をカット(トリミング)し、横長に引き伸ばしてプリントするシステムになっている。APSの3つのタイプも考え方はいっしょ。
Hタイプはフィルムのフルサイズ、Cタイプは左右を落として四角っぽくトリミングし、Pタイプは上下を落としてパノラマ風にトリミングする。従って、フイルム全部を使いたい場合にはHタイプということになる。
タイプによるフィルムサイズの比較
赤い枠がHタイプ、青がCタイプ、緑がPタイプのトリミング枠を示す。Hタイプの撮影画面サイズは16.7×30.2mm。ちなみに35mmフィルムの場合、サイズは24×36mm(縦横比/2:3)。
プリントサイズの比較
Cタイプ:89×127mm (縦横比/2:3) 従来35mmと縦横比が同じ
Hタイプ:89×158mm (縦横比/9:16) ハイグレード
Pタイプ:89×254mm (縦横比/1:3) パノラマ
画質を考えるとHタイプ、見なれたというか撮りやすさからするとCタイプといったところ。
Hタイプは、その縦横比からして風景や集合写真なんかを撮りやすくするためのものではないかと思う。
●カートリッジフィルム
APSのウリの一つがカートリッジフィルムであるということである。「簡単ポン」というわけ。馴れた人にはなんでもないことなんだけど、「フィルムをうまく入れられない〜」という人はちゃんといる。レンズ付きフィルムは何も女子高生だけが買っているわけではない。「フィルムをうまく入れられないからレンズ付きフィルムを買う」という人もいるのだ。今のコンパクトカメラはイージーローディングになっているけど、それでもうまく入れられない人がいるのである。
で、カートリッジをぽんと入れるだけ、ということがウリになってくる。
その代わり、現像後であっても基本的にカートリッジからフィルムを出してはいけない。フィルムを直接見るのは御法度で、フィルムを見たい場合はビューアが必要になる。
●データの記録(IX情報)
APSはアドバンスドというだけあって、今までのフィルムと決定的に違う点がある。フィルムには透明な磁気層があって、ここに撮影データやコメントを記録しておける(IX情報という)。後からコンピュータで追加情報を打ち込んだり、書き換えたりすることも可能になっている。これによって写真データベースの構築は非常に容易になるだろう。つまり、コンピュータと連動させた時に最も威力を発揮できるフィルムなのである。
写した時に書き込まれるデータはカメラによって異なる。日付、時刻、C/H/Pのタイプ別といった基本情報、シャッタースピード、絞り、露出補正値などの撮影情報の他、あらかじめ用意されたコメントを入れることのできるカメラもある。
●ポジフィルム
フジフイルムからポジフィルムも売り出されたが、こちらも基本的にはカートリッジの中に入れたまま使うようになっている。スリーブ仕上げも頼むことができるが、その場合はデータの変更等ができなくなる。というのは、カートリッジから取り出したり、一個所でもフィルムをカットしたりすると、IX情報が取り出せなくなるからだ。
ポジはしかし、マウントかスリーブで(つまりカットして)使うことが圧倒的に多いだろう。これらも一応カバーはされている。
スリーブ仕上げを頼むと、インデックスプリントと撮影情報を印刷したデータシートが付いてくる(現像料850円、インデックスプリント代300円、データシート代100円)。
マウント仕上げを頼むとインデックスプリントとマウントにデータが印刷されてくる(現像・マウント代1020円、データ印字代180円)。
カートリッジ仕上げの場合はインデックスプリントかデータシート、または両方を頼むことができる(現像料850円、インデックスプリント300円、データシート代180円)。
●インデックスプリント
インデックスプリントもウリの一つ。ひと目でどんな写真の入ったカートリッジか分かる。焼き増し注文がしやすいというのだけど、やったことがないからどのくらいやりやすいのか分からない。
フジのインデックスプリントは、写真に仕上がった部分(プリント部分)だけが印刷されてくるのに対し、コダックのインデックスプリントはフィルム全面が印刷され、そこにトリミング枠が記入されているという違いがある。
カメラ側でC/H/Pの切り替えを行っても、撮影されるのはすべてHタイプのため、ポジだと全部Hタイプのフルフレームのインデックスプリントになる。
余談ですけど、先日ひさびさにネガで撮り、コンタクト(ベタ焼き)を頼んだら「インデックスの方が速いですよ」といわれてがく然とした。APSではなく、35mmのネガである。それでも今はインデックスプリントができるんですね。たぶん同時プリントのデータをサムネール(ミニ画像)として溜めておき、デジタルでプリントするんだと思う。つーわけで、インデックスプリントはAPSのウリではなくなったらしい。
●PQI情報
IX情報は先述の通りフィルムに書き込まれる情報のこと。この情報のうち、プリントの際に役に立つ情報をPQI情報という(らしい)。撮影距離やフラッシュの有無、F値、シャッタースピードなどが記録され、例えばフラッシュの白飛びなどをプリントの際におさえることができたりするというふれこみである。
この情報の導入は、現在の35mmフィルムの自動プリント(ご存じのように自動プリントでは白けた画像になる)のプリント画質を、画期的に向上させるはずであった。しかし、実際にはPQI情報を基に補正をかけると実用レベルを下回ったプリントになるという話を聞いた。結局、PQI情報は参考に留めて、オペレーターが自分の目と経験を基に補正をかけているのが現状のようだ。この辺の原因については僕にはよく分からない。想像するに、撮影データといっても絞りやシャッタースピードなどが分かるだけのハズで(現像に使う撮影データの内容について、僕は知らないことをお断りしておきます)、キレイなプリントというのはそんなことよりどの色を優先させるのかといった問題の方が大きいからだと思っている。肌の色をきれいに出すのか、左下に写っている赤いキレイな旗を鮮やかに引き立てるのか、そういった判断は撮影データには入っていないはず。
APSだろうが従来のネガだろうが、全体の色味が均等になるような自動補正でプリントされれば、どうしてもメリハリのない白っぽい画面になっちゃうわけで、やはり同時プリントはテストプリントだと解釈した方が現実味があると思う。
本来、ラボにとっては福音となるはずのシステムだったが、その性能は発揮できているとは言えない。それどころか、35mmフィルムであれば時間2万枚のプリントが可能なシステムがあるのに、APSの場合はせいぜい時間800枚と、1/20の処理能力しか持たないという。現状ではやっと全国にAPSの処理が可能なラボが行き渡ったという時点である。処理能力の向上は時間と共に解消されるだろう。
ギョーカイのヒトビトがAPS冷たい最大の原因は「自動プリントがもっとキレーになるし、オペレーターも楽できるぜイエー」といった夢物語があえなく潰えたことにあるようだ。
●途中フィルム交換
目立たないようで、35mm派がうらやましくなるのが途中フィルム交換機能。カメラが対応さえしていれば、という条件は付くものの、ISO100のフィルムで撮っていて、暗くなったからISO400に交換して、後でまたISO100フィルムの途中から撮影するなどという芸当が可能なのである。
35mm一眼レフで同じことをするためには、次のような手順を踏むことになる。
1. 途中まで撮影したフィルムを巻き戻して取り出す(この時、「ベロ出し」を使ってパトローネからフィルムの端を引き出し、ここに撮影済コマ数を書いておく)。
2. 別のフィルムを入れて撮影する。
3. もとのフィルムを装填し、撮影したコマ数分だけレンズキャップをしたまま空撮りする。レンズキャップの遮光が完全とは限らないので、暗いところに向けて空撮りする。
えらく手間がかかる。コンパクトカメラでもできるはずだが、僕は恐くてやったことはない。
コンパクトカメラはレンズ交換ができない。しかし、APSのこの機能を使えば、例えば28mmのコンパクトカメラで途中まで撮り、望遠がほしくなったらズームつきのカメラにカートリッジを入れ直して撮影を続行する、なんてことが可能になる。レンズ交換ができない代わりにカメラ交換しちゃうんである。こ、これはちょっと魅力的だ。