宝塚雪組
ミュージカル
「オネーギン」
Evgeny Onegin -あるダンディの肖像-





STORY




19世紀初頭のロシア。
ペテルブルク社交界一の伊達男エフゲーニィ・オネーギンは、
貴族社会の欺瞞的な華やかさの中で、
戯れの恋を楽しみ、
賭け事を繰り返すなど享楽的な日々を送っていた。




ある日彼は、
母マリーヤから田舎に住む叔父ワシーリィーの
容態が悪いという知らせを聞く。

無為な社交界の暮らしに嫌気がさし、
生きることにさえ、
意味を見出せないオネーギンは、
都会での自堕落な生活を離れ、
叔父の見舞いを兼ねて田舎の領地に滞在することにする。




幼い頃、毎夏訪れていた叔父の屋敷。

当時と何ひとつ変わらない部屋の中へ
足を踏み入れたオネーギンは、
10年前の自分が書いた手紙を見つける。

頭脳明晰で学業優秀。

自信に満ち溢れ、
この手でロシアの未来を築くのだと自由な思想を持つ一方、
人生において本当の生きる意味を見つけられるのだろうかと、
不安を抱えていたあの頃・・・。

手紙を手に、オネーギンは今もその不安や恐れが
心の奥底に根ざして離れないことに、
言い知れぬ虚しさを感じる。




物思いに耽る彼のもとに、
隣家の青年で幼友達のウラジミール・レンスキーが訪ねて来る。

オネーギンとは違い、
田舎暮らしを好むロマンティストな詩人レンスキーは、
地主の娘オリガ・ラーリナと婚約し幸せそのものに見えた。

やがて、レンスキーに誘われラリーナ家を訪れたオネーギンは、
オリガの姉タチヤーナと出会う。

タチヤーナは、
文学を愛する聡明で夢見がちな娘だった。

心のままに、
自分だけの本当の人生を見つけたいと語るタチヤーナ。

オネーギンはこれまで出会った女性とはタイプの異なる彼女の言葉に、
探し続けていたもの、
自分の中に欠けていたものを感じ取る。

一方タチヤーナは、
どこか憂いを秘めたオネーギンに強く心惹かれていくのだった。




熱い想いを募らせたタチヤーナは、
その想いを抑えることが出来ず、
彼に一通の恋文をしたためる。

溢れ出る恋心が連綿と綴られた手紙に衝撃を受けるオネーギン。
しかし彼は、タチヤーナのまっすぐな想いに心揺さぶられながらも、
清らかで純粋な彼女の愛は自分にふさわしくないとその愛を拒む。

さらにタチヤーナに想いを断ち切らせようとするオネーギンは、
彼女の目の前でレンスキーの婚約者であるオリガを誘惑するのだった。

オネーギンのこの行動はレンスキーの嫉妬心に火を付け、
彼はオネーギンに決闘を申し込む。




勝負は、レンスキーの死という悲劇の結果に終わる・・・。

友の命を奪った自らの罪の意識と、
混乱と絶望の中、
オネーギンはロシアを離れ放浪の旅に出るのだった。




そして5年の歳月が流れる。

黒海沿岸の町オデッサを訪れたオネーギンは、
リツェイの貴族学校時代からの親友と再会する。

彼は、自由主義の若者たちを扇動してロシア政府の反感を買い、
ペテルブルクから追放の身となっていた。

ある日、オネーギンは、
オデッサ社交界の華といわれるカテリーナ・ブノワ侯爵夫人のサロンで、
革命派の将校達を紹介される。

彼らはナポレオン戦争以降、
ロシアの後進性に疑問を持ち、
皇帝による専制政治打倒を唱える急進派のグループだった。

ロシアの未来を憂い、
為すべきことを模索し続ける友の姿と、
未だ何も見出すことが出来ずにいる自身を比べ、
葛藤するオネーギン。

そんな中、彼は叔父ワシーリィーの死をきっかけに、
ペテルブルクへ戻る決心をする。
数年ぶりのロシアの都、ペテルブルク・・・。

そこで、オネーギンを待っていたのは、
思いも寄らぬ人との再会だった・・・。