宝塚星組
ミュージカル
「ハプスブルクの宝剣-魂に宿る光-」
〜藤本ひとみ作「ハプスブルクの宝剣」より〜





STORY




18世紀前半のヨーロッパ。

フランククフルトのユダヤ人居住区で生まれ育った
エリヤーフー・ロートシルトは、
自分の未来、そして、迫害と差別の歴史を持つユダヤの
未来を切り拓こうと、
大きな理想を胸に抱いていた。

パドヴァの大学を卒業したエリヤーフーは、
ユダヤ人の社会的向上の為、
ユダヤ教の律法のドイツ語訳という革新的な作業を成し遂げ、
故郷の同胞達が集まるシナゴーグへ戻ってくる。

しかし彼を待ち受けていたのは、
閉鎖的な因習に固執するユダヤの人々からの激しい拒絶だった・・・。

誰からも理解されず、
打ちひしがれてアルテ橋へと向かったエリヤーフーは、
パドヴァで想いを寄せ合っていたアーデルハイトと再会する。

変わらぬ愛を確かめ合う二人だったが、
有産階級の娘であるアーデルハイトには、
両親によって決められたモーリッツという許嫁がいた。

二人の仲を知ったモーリッツから血統を挑まれた結果、
エリヤーフーは心ならずも彼を殺めてしまう・・・。




時は巡り・・・オーストリアの都、ウィーン。

ヨーロッパで名立たる権勢を誇るハプスブルク帝国の君主カール6世は、
長女マリア・テレジア(テレーゼ)の娘婿にロートリンゲン公国から
フランツ・シュテファンを迎えていた。

ある宴の席で、カール6世は名将オイゲン公から
ハプスブルクの護り刀となり得る、
武勇知略に優れた若者を紹介される。

エドゥアルト・フォン・オーソヴィル・・・・
過去の全てを捨て、ユダヤと訣別したエリヤーフーであった・・・。

決闘の時に傷を負い瀕死の状態だったエリヤーフーは、
フランツの側近であるジャカンに見つけられ、
奇跡的に一命を取り留めたのだ。

フランツはエリヤーフーの出生を知った上で臣下として召し抱え、
エドゥアルトとしての新しい人生を与えた。

フランツはテレーゼとの結婚の際、
フランスからの圧力で領地ロートリンゲンを手放すことを
余儀なくされた。

苦渋の末、祖国を捨て、
愛するテレーゼとの結婚を選んだフランツは
同じく帰るべき場所を失ったエヂゥアルトの孤独に共感を覚える。

そしてエドゥアルトもまた、
恩人であるフランツと共にこのウィーンで
真のオーストリア人となる決心をしたのだった。




フランツからテレーゼを紹介されたエドゥアルトは
彼女の面差しに衝撃を受ける。

彼女は、アルテ橋で無惨に引き裂かれた、
あのアーデルハイトに瓜二つだった。

捨てたはずの過去の記憶に激しく心を揺さぶられるエドゥアルト。

一方テレーゼはエドゥアルトの瞳に宿る鋭く激しい炎に、
不吉な予感と、強い興味を掻き立てられる。




やがてカール6世が崩御し、広大なハプスブルク領がテレーゼに継承される。

若き女性君主の誕生はヨーロッパに激動の嵐を巻き起こす。

領土拡大を計る列強諸国が一斉にオーストリアに外圧をかけてくるが、
ウィーンの宮廷には因習に凝り固まった老臣達しかいない・・・

フランツは今こそエドゥアルトの力が必要だと考える。

エドゥアルトは四面楚歌の現状を打破する為、
長年ハプスブルクの統治に反発してきたハンガリーを
味方に付けるという奇策を打ち立てる。

周囲の苦い反応をよそに、エドゥアルトは見事ハンガリー貴族
グレゴール・バチャーニ達の協力を取り付けることに成功するのだった。




エドゥアルトの尽力でハンガリーの協力を得ることができたテレーゼは、
ハンガリーの女王として現地の貴族達との交渉に挑む。

エドゥアルトの出自を知ったテレーゼは、
エドゥアルトを必要とする一方で、
彼を認めることができずにいた。

そんな彼女とフランツとの間で苦しむエドゥアルトは、
暫くウィーンを離れたいとフランツに申し出る。




オーストリア軍に付き従い、各地を転々とするうち、
エドゥアルトはプラークで街を追放されるユダヤ人達に出くわす。

どれほどハプスブルクの為に闘おうとも自らの居場所を見つけられず、
過去から解き放たれることはない・・・。

魂の拠り所を求めて流離うエドゥアルトが、
最後に見出した光とは・・・。