宝塚歌劇団 月組
ロック・オペラ
「暁のローマ」
−「ジュリアス・シーザー」より−




STORY




古代ローマ・・・。

円形劇場では人々が戦争の勝利に湧き立ち、カエサルを讃えている。

事実上ローマの指導者であるカエサルに、
副将アントニウスは王冠を捧げようとするが、
それを見たローマ市民達は、カエサルを讃えていた
それまでの態度を一変させ、静まり返るのだった。

かつて王政を廃して共和制を勝ち取ったローマ市民達は、
王の存在に嫌悪を感じていた。

その事を知るカエサルは王冠の受け取りを拒否するが、王になり、
ローマを支配したいというのがカエサルの本心ではと、疑いを抱く者達もいた。

ブルータスもその一人である。

カエサルが実質的にローマの王である事は、既に誰もが知る事実だった。

ブルータスの友人カシウスは、ローマがカエサルの手に落ちるのを阻止するために、
カエサルの暗殺を目論み、ブルータスに協力を求める。




円形劇場に残っていたブルータスの姿を見つけたカエサルは、彼に声を掛ける。

カエサルは未来ある若者ブルータスに期待を寄せ、特別可愛がっていた。

そこへ突然、女官カーミアンらを伴ったエジプトの女王クレオパトラが姿を現す。

クレオパトラは、カエサルとの間に生まれた赤子を連れて、
カエサルに会いに来たのだった。

カエサルとクレオパトラとのやりとりから、
カエサルが野心を抱いているのではという疑いの気持ちを強めたブルータスは、
あなたは王なのかと問いただす。

そして、王ではないが、自分がこのローマを
おさめるのだというカエサルの答えを聞いたブルータスは、
ローマの理想、共和制はどうなるとカエサルに詰め寄るのだった。

時代と共に理想も変わり、
今のローマは指導者を必要としているのだという自分の考えを述べるカエサル。

カエサルは、自らの手で豊かな国を創り上げようと、
ローマの新たな未来を思い描いていた。

一方ブルータスは、カエサルへの尊敬の気持ちと、
ローマを愛する気持ちの狭間で大きく揺れ動く・・・。




邸に戻ったブルータスを、妻のポルキアが迎える。

思い悩むブルータスの心中を察したポルキアは、あなたの愛するものは何かと問う。

妻とローマ、そしてカエサルの偉大さを愛していると答えるブルータスに、
ポルキアは、あなたはカエサルを愛しているのではなく恐れているのだと反論するのだった。

ポルキアとのやりとりの末、ブルータスは、誰のものでもないローマ、
皆で守り築くローマを愛する自らの想いを、改めて確信する。




カシウスの邸では、カエサルの暗殺を目論む男達が、
ブルータスの訪れを待ち侘びていた。

そこへブルータスが姿を現し、元老院会議でのカエサル暗殺に向けて、固く結束する。




一方、カエサルの妻カルプルニアは、夫が血まみれになる不吉な夢にうなされ、
胸騒ぎを覚える。

そんなカルプルニアに占い師は、カエサルに危険が迫っている、
そして今日がその忌まわしい日であると告げるのだった。

カルプルニアは出掛けようとするカエサルを必死に止める。

しかしカエサルは、妻の制止を聞かず、元老院会議へと向かう・・・。




その後カエサルの前に、ブルータスらが現れる。

そして仲間の一人が斬りかかったのをきっかけに、次々とカエサルを斬りつける。

やがて、とどめの一突きがカエサルの体を貫く。

カエサルにとどめを刺したのは、彼がその将来を期待し、
可愛がってきたブルータスであった。

カエサルは、「ブルータス。お前もか。ならば、いい」と、
微笑みのうちに息をひきとるのだった・・・。




カエサル暗殺の翌日。

ブルータスは、カエサルの死に動揺するローマ市民を前に演説を始める。

ブルータスはカエサルの偉大さ、勇敢さを讃えるが、
同時に、彼がローマを自分のものにしようと野心を抱いていたと訴える。

そんなカエサルの野心には、死をもって報いるしかなかったのだと。

ローマ市民達がブルータスの訴えに賛同の歓声をあげる中、
今度はアントニウスが演説を始める。

アントニウスは、ブルータスを褒め讃える言葉を繰り返しながらも、
カエサルが如何にローマ市民達を愛していたかを訴える。

カエサルは戦争で得た身代金を全て国に納め、また、
貧しい人々が飢えに苦しみ、絶望した時には共に悲しむような人物であったのだと。

そして、全てのローマ市民に財産を分け与えると書かれたカエサルの遺言状を読み上げる。

市民達はアントニウスの演説に強く心を動かされ、ブルータスへの賛同も束の間、
カエサルこそローマの父だと、彼の死を嘆くのだった。

そして、その父を殺したブルータスに、敵意に満ちた目を向ける。




追われる立場となったブルータスの前に、
心労のため狂ってしまったポルキアが姿を見せる。

そして、夫への愛を訴えながら、ブルータスの腕の中で息絶えるのだった。

絶望するブルータスの前に、カエサルの幻が現れて言う。

終わりが全てを決めるのだ、と。




アントニウスや、カエサルの養子として後を継いだオクタヴィアヌスらによって、
仲間達が次々と命を落とす中、ブルータスは自分の人生を振り返る。

カシウス、ポルキア、そしてカエサル・・・

心から愛してくれた人達の顔が、次々と浮かび上がる。

自分ほど愛された男はいない、なんと満ち足りた人生であった事か・・・。

ブルータスは、溢れんばかりの愛を注いでくれた人達への想いを胸に、
自らその人生に幕を降ろすのだった。