宝塚歌劇団 宙組
-グランド・ロマンス-
「炎に口づけを」
−「イル・トロヴァトーレ」より−
STORY
15世紀のスペイン。
アリアフェリア宮殿に住むルーナ伯爵は
女官のレオノーラに恋焦がれている。
しかし、レオノーラは馬上試合に白馬に乗って現れた騎士、
吟遊詩人のマンリーコに想いを寄せていた・・・。
真夜中の宮殿。
ルーナ伯爵の家臣たちは庭園の警備にあたっている。
家臣の一人フェルランドが若い家臣たちに請われ、
眠気覚ましにと昔語りを始める・・・
それは20年前の出来事。
先代の伯爵には二人の息子がいた。
長男は現在のルーナ伯爵、弟君は当時まだ赤子であった。
ある日、宮殿内に入り込んだジプシー女が
赤子の傍らにいるのを目にした先代の伯爵は、
怪しい呪いをかけたのではないかと疑い、彼女を火あぶりの刑に処す。
ところがその夜、弟君はジプシー女の娘アズチューナに連れ去られ、
あくる朝、刑が処されたその場所から幼子の骨が発見される・・・。
アズチューナは消え、噂だけが残った。
"火あぶりにされたジプシー女の魂は、
今でも我々を呪っている"と・・・。
夜の庭園でマンリーコを待ち侘び、
侍女のイネスに心のときめきを語る女官レオノーラ。
彼女は樹木の陰に見えた人影をマンリーコだと思い込み、
愛の言葉を口にするが、現れたのはルーナ伯爵であった。
レオノーラを自分のものにしようと迫る伯爵。
そこへマンリーコが登場し、レオノーラをめぐっての決闘が始まる。
優位に立ったマンリーコは伯爵に剣先を突き付けるが
何故か殺す事が出来ない。
剣を取り返した伯爵は、
マンリーコは卑しいジプシーの生まれだと言い放つ。
だが、そんな事でレオノーラのマンリーコへの
熱い想いが変わる事はなかった。
嫉妬に狂った伯爵は、
マンリーコの命を奪おうと家臣たちを呼び寄せ剣を向ける。
深手を負ったマンリーコは一人、森の奥へと走り去るのだった・・・。
ジプシーたちが暮らすビスカリア山の麓。
マンリーコは母親アズチューナや
幼馴染みのパリアらの看病により一命を取り留めていた。
ルーナ伯爵との決闘で何故かとどめをさせなかったと話すマンリーコに、
アズチューナは20年前の出来事を語る。
アズチューナの母は先代の伯爵に火あぶりにされた。
アズチューナは復讐を果たそうと、
当時赤子だったルーナ伯爵の弟君を連れ去り
炎の中に投げ入れようとしたが、
誤って自分の子を焼き殺してしまったと・・・。
"死んだのは、お前だよ・・・"
というアズチューナの言葉に、
マンリーコは一瞬時分の出生に疑念を抱くが、
伯爵の命を奪ってくれというアズチューナの必死の訴えに、
仇を討つ事を誓う・・・。
一方、マンリーコが命を落としたと思い込んだレオノーラは、
修道院に入ろうとしていた。
その報せを聞いたマンリーコはアズチューナの制止を振り切り、
ジプシーの男たちと修道院へと向かう。
クローチェの修道院。
生きる望みをなくしたレオノーラの歌声が哀しく響く・・・。
そこへ、ルーナ伯爵が現れ、レオノーラを婚礼の席へと連れ去ろうとする。
だが、修道院の下男となって忍び込んでいたパリアの機転により、
マンリーコとレオノーラは、森へと逃れるのだった・・・。
カステルロール砦近くの森。
マンリーコとレオノーラは、強く、深く愛を誓い合う。
しかし、二人の幸せな時を引き裂くように、
砲声が聞こえてくる。
愛の力を信じて戦場へと赴こうとするマンリーコ。
だが、そこにアズチューナが伯爵に捕らえられたという報せが届く。
アズチューナがマンリーコを助ける為に
炎の中を彷徨っていたと聞き、
マンリーコはレオノーラさえも振り払い、
アズチューナの救出に向かうが・・・。