宝塚歌劇団 月・花組
-ミュージカル-
「アーネスト・イン・ラブ」




STORY




19世紀末のロンドン。

ハートフォードシャー育ちの貴族、アーネスト・ワージングは、
かねてから想いを寄せるフェアファックス家の令嬢グウェンドレンに、
どのようにプロポーズしようかと思案していた。

グウェンドレンが母親のブラックネル夫人と共に、
彼女の従兄妹にあたるアルジャノンの屋敷を訪れる予定で
あることを知ったアーネストは、早速彼の屋敷へと向かう。




アーネストを屋敷に迎え入れたアルジャノンは、
グウェンドレンとの結婚は許さないと言い、
かつてアーネストがアルジャノンの家に忘れていった、
金色のシガレットケースを差し出す。

シガレットケースの中には
「ジャック叔父様へ。小さなセシリィより。深き、愛を込めて」
との文字が・・・。




アルジャノンから執拗にその訳を問い質され、
観念したアーネストは、自分の名前はロンドンではアーネストだが、
本当はジャックなのだと語り始める。

子供の頃、トーマス・カデュー氏の養子となったジャックは、
カデュー氏が亡くなる時、彼の孫娘セシリィの後見人となったが、
道徳的な品格が要求される後見人としての暮らしは息が詰まる為、
アーネストという弟を生み出し、
いつも不祥事をしでかす彼の後始末という理由を付け、
頻繁にロンドンに来ていたというのだ。




その話を聞いたアルジャノンは、僕たちは仲間だと、突然笑い出す。

実はアルジャノンにも不治の病に冒されたバンバリーという友人がおり、
時折、彼を見舞う為と称し田舎へ赴いていたのだ。

実はバンバリーとは、アルジャノンが生み出した架空の友人であり、
アルジャノンもまた、堅苦しいロンドンを離れ、
田舎で一時のロマンスを楽しんでいたのだった。




堅苦しい時代だからこそ、羽目を外す時もなければ人生やりきれないと、
二人は意気投合する。

しかし、アーネストことジャックは、
グウェンドレンが結婚に頷いてくれたら、
弟のアーネストはすぐに消滅させてしまうと宣言する。

そこへ、グウェンドレンとブラックネル夫人が到着する。




アルジャノンの計らいで、
グウェンドレンと二人きりになったジャックは、ついに彼女にプロポーズする。

最近の彼の態度から、まもなく求愛されるのではと
胸をときめかせていたグウェンドレンは、喜んで申し出を受ける。

そして、あらゆる言葉の中で最も好きなのはアーネストというあなたの名前、
まじめ、誠実、熱烈という意味のその名前こそ、
あなたに相応しいと熱く語るのだった。

それを聞いたジャックは、洗礼を受けて名前を変えようと考え始め・・・。




一方、グウェンドレンから婚約の話を聞いたブラックネル夫人は、
娘の結婚相手に相応しい男性かどうかは分からないと、
ジャックに次々に質問を投げかける。

そこでジャックは、トーマス・カデューという
情け深い紳士に拾われたという、自らの生い立ちを告白する。

自分はヴィクトリア駅の手荷物預かり所で、手違いからカデュー氏に渡された
黒い大きな革製のハンドバッグの中に入れられていた赤ん坊だったのだと・・・。

その話を聞いたブラックネル夫人は、あなたの生まれは娘に相応しくない、
この結婚には反対だと冷たく言い放ち、グウェンドレンを連れて帰ってしまう。




一人残ったジャックのもとへ、アルジャノンがやって来る。

アルジャノンは、田舎に住むセシリィに興味を持ち始めていた・・・。

間もなく、ジャックの生い立ちを聞き感動したというグウェンドレンが、
屋敷に駆け戻ってくる。

あなたに対する愛は永久に変わらないと語るグウェンドレンを、
ジャックは強く抱きしめる・・・。




ハートフォードシャー・ウールトンの領主邸。

ジャックの留守中、家庭教師のプリズムと暮らすセシリイは、
退屈なだけの授業に飽き飽きしていた。

刺激的な恋愛を夢見るセシリィは、
いつも噂に聞いていたジャックの弟・不良のアーネストこそが、
その相手であると想像を膨らませていたのだ。

そんなセシリィのもとへ、
アーネスト・ワージングと名乗ったアルジャノンが現れる。




彼をジャックの弟のアーネストであると信じたセシリイは、
彼に好意を抱き、アルジャノンもまた可愛い
セシリイに心惹かれていくのだった。

やがて、喪服に身を包んだジャックが帰って来る。

出迎えたプリズムに、弟のアーネストは高熱の為に
パリで死んだと語るジャックは、
弟の死に際し新たな名前で生きていくことを
決意したので洗礼を受けたいと言い出すのだった。




その時セシリイが、弟のアーネストが来訪していることを告げにやって来る。

混乱するジャックの前に、アルジャノンが姿を現す。

ジャックはアルジャノンに向かい、ここで「成り切り」主義は許さないと、
即刻ロンドンに帰るよう言い渡す。




一旦はロンドンに戻ろうとしたものの、
セシリイこそが永遠に愛しぬけるただ一人の女性であると
確信したアルジャノンは、いきなり彼女に結婚を申し込む。

出会う前からアーネストと恋に落ちていたと語るセシリイは、
喜んでその申し出を受ける。

そして、私の夢はいつの日かアーネストと名付けられた人を
愛する事だったと熱く語るのだった。

それを聞いたアルジャノンは、
洗礼を受けて名前を変えようと考え始め・・・。




グウェンドレンが、愛しい婚約者を訪ねて
はるばるロンドンからやって来る。

セシリイと親しく語り合うグウェンドレンだったが、
その中で二人が互いにアーネストという人物と婚約していることが発覚する。

険悪な雰囲気となる二人のもとへ、
ジャックとアルジャノンが駆け込んで来る。




一体どういうことなのかと、二人に詰め寄られたジャックとアルジャノンは、
共に嘘の名を名乗っていたことを白状するのだった。

騙されていたと知ったグウェンドレンとセシリイは憤慨する。

しかし、何故後見人の弟を装ったのかというセシリイの問いに、
アルジャノンは君に会えると思ったからだと答え、
そして、弟がいるように装った件を
どう釈明するのかとグウェンドレンに問われたジャックもまた、
出来るだけ多くロンドンに行き、君と会いたかったのだと答える。

その説明に心打たれたグウェンドレンとセシリイは、
二人が洗礼を受けて名前まで変えようとしていたことを知り、深く感動する。




そしてジャックとグウェンドレン、アルジャノンとセシリイは、
永久に変わらぬ愛を改めて誓い合うのだった。

そんな幸せ一杯の二組の恋人達のもとへ、
ブラックネル夫人がやってくる。




果たして、二組の恋人達の恋の行方は・・・。