宝塚歌劇団 星組
「王家に捧ぐ歌」




STORY




今から3500年前のエジプト。

エチオピアとの再度の戦いの為、
新たな将軍の名が王ファラオの口から告げられようとしていた。

その将軍の名は・・・。

エジプトの若き戦士ラダメスは、
自分こそ将軍に選ばれるのではとの期待に胸を躍らせていた。




彼はエチオピアに勝利した暁に、
密かに恋するアイーダに求愛しようと決心していたのだ。

エチオピアの王女だったアイーダは、
先の戦いの折、ラダメスによって命を救われ、
今はエジプトの囚われ人となっていた。

アイーダもまた、祖国の敵と知りながら、
強く逞しいラダメスに心惹かれていたが、
囚人の身である彼女がその想いを彼に告げることはなかった。

遥かな故郷を思い嘆くアイーダに、
ラダメスは戦いが終われば、
必ずエチオピアを解放すると約束する。

しかし彼女は「あなたにとってチオピアの解放に
どんな意味があるのか」と逆に問う。




そこへ石壁の高みから、エジプト王女アムネリスが
女官たちを引き連れて艶然と現れる。

勇敢なる戦士ラダメスに恋するアムネリスは、
彼のアイーダにへ向ける視線から二人の仲を疑いはじめる。

アイーダを愛するラダメス、疑いにとらわれたアムネリス、
そして祖国と愛の狭間で揺れ動くアイーダ。

大いなるナイルの流れのように、三人の感情の高まりは、
やがてあらゆるものを押し続けていく・・・。




ついに新将軍の名が告げられる時が来た。
神官たちが告げたその名は・・・ラダメス!

ファラオより聖なる剣を与えられたラダメスは、
勝利への期待に沸き返る民衆を誇り高く見渡すのだった。

ラダメスの奇襲攻撃により、
エジプトはエチオピアに勝利した。

その知らせを聞いたアムネリスは、アイーダの本心を探る為、
「ラダメスは死んだ」と偽りを告げる。

祖国と愛する人の両方を失ったかと
嘆き悲しむアイーダの様子を見たアムネリスは、
彼女こそが憎き恋敵であると確信する。

ファラオの娘として、
望むものすべてを手にしてきた彼女が、
唯一手に出来ないもの・・・それがラダメスの心だった。

嫉妬にかられたアムネリスは、
「囚人の分際で私と張り合おうなどと、思い上がりも甚だしい」
とアイーダに侮蔑の言葉を投げつけるのだった。




首都メンフィスに、次々とエジプトの戦士たちが凱旋してくる。

アムネリスの手からラダメスに勝利の証として王家の首飾りが授けられると、
民衆は歓喜の声で英雄を迎えた。

褒美に何を望むかと問うファラオに、
ラダメスはエチオピア人の解放を願い出る。

新たにラダメスが戦場より連れ帰った囚人の中には、
アイーダの父であるエチオピアの王アモナスロも含まれていた。

アモナスロとその一族さえエジプト国内に留め置くなら、
その他の囚人を解放しても、
エチオピアは二度と刃向かってこないだろうと訴えかけるラダメス。

その熱意に負けたファラオは、
ついに囚人を解放することを決断する。

しかしそれでラダメスの望む平和が保たれるかどうかは賭けである、
とも言い残す。

願いを聞き入れられたラダメスは、
悲鳴ともつかぬ喚声をあげる民衆の中で、
ただひたすらに平和を願うのだった。




ラダメスの手によって囚人が解放され、
エジプトは一見平和になったかに見えた。

しかし、ウバルドらエチオピア王一族の心にくすぶる復讐の火種は
決して消えてはいなかった。

しかも平和に倦んだエジプトは、
かつての慎みを失い、すっかり燗熟していた。

そんなエジプトの姿に失望したアムネリスは、
ラダメスに平和の意味を問う。

ラダメスは「平和は新たな歴史の始まりにすぎない」
とアムネリスに説くが、
彼女は取り合おうとはしなかった。

口論の末、興奮したアムネリスはついに
自分の心に渦巻く疑いを口にする。

「あなたが愛しているのは誰なのか」
とのアムネリスの問いに、
とうとうラダメスはアイーダへの愛を宣言してしまう。

嫉妬に我を失ったアムネリスは、
ラダメスの心を手に入れる為ならば
手段は選ばないとの言葉を残し、去っていく。




ラダメスと密かに逢う為、
約束の場所を訪れたアイーダの前にアモナスロが現れる。

アモナスロはアイーダの恋心を利用し、
ファラオの身辺が手薄になる時をラダメスから聞き出せと命じる。

復讐の為ファラオを暗殺したいアモナスロは、
アイーダに「祖国を救えるのはお前しかいない」
とだけ告げて去っていく。

祖国を取るか、愛を取るか、アイーダの心は激しく揺れる。

そこへラダメスが現れ、声高に彼女に愛を告白する。

突然の出来事に呆然としながらも、
情熱的なラダメスの求愛に、
アイーダもついに彼への愛の言葉を口にしてしまう。

想いの通じ合った二人は束の間の幸せに浸るが、
やがてこの恋をアムネリスが
許すはずもないことに気付き愕然とする。




ファラオが護衛の戦士さえも遠ざけ、
エジプトの繁栄を祈って夜を明かす、
新月から数えて14番目の夜を待って国を出ようと二人は誓う。

はからずもファラオの秘密を手にしてしまったアイーダは、
それきり親子の縁を切るなら、とその事実をアモナスロに告げた。

エチオピアの王女ではなく、
一人の女として生きることを選んだ娘の決断を、
アモナスロはやむなく受け入れるのだった。




それぞれの思惑が渦巻く中、
いよいよ新月から数えて14番目の夜が訪れた。

二度目の銅鑼が鳴らされ、
もの間もなく石室の扉が閉ざされようとした瞬間、
ファラオがラダメスを呼び止めた。

娘アムネリスを娶り、やがてはファラオとなるラダメスに、
未来の王として共に祈りを捧げよというのだ。

愛か。栄光か。命をかけ、自分が愛するのはアイーダであると、
ラダメスがファラオに告げようとしたその時、
機会を窺っていたウバルドたちが乱入した。

ファラオはその剣に貫かれ、命を落としてしまう。




ラダメスを心待ちにしていたアイーダは、
アモナスロの手によって連れ去られ、
暗殺に成功したウバルドたちは自ら命を断つ。

ファラオの秘密を漏らした裏切り者の
存在を疑い始めた戦士たちに、
ラダメスは自分が今夜のことをアイーダに話したと告白する。

ラダメスが国を裏切ったと知り、動揺する戦士たちに、
それまで黙っていたアムネリスが毅然と、
自らがファラオとなることを宣言する。

涙を拭いたアムネリスはラダメスを捕え、
戦士たちにエチオピアの壊滅を命じるのだった。




エジプト軍の総攻撃により、エチオピアは跡形も無く滅び去った。

罪に問われ、処刑を待つ身のラダメスのもとに、
アムネリスが現れる。

彼女はラダメスに、アイーダに騙されたのだと言いさえすれば、
命を助けると最後の愛情を示すが、
ラダメスは何も答えようとしなかった。

ついに処刑の時が訪れた。




裏切り者に死を・・・・

ラダメスはファラオとなったアムネリスに戦いの意味を問いつつ、
生きながら地下牢に沈んでいく・・・・・。