宝塚歌劇団 月組
「シニョール ドン・ファン」




STORY




イタリア・ミラノを拠点とし、
今や絶大なる人気を誇るファッション・ブランド
"ドン・ファン"は、世界中の女性の憧れの的である。

エレガンスで洗練されたデザインが女心を魅了していたが、
なんと言っても一番の人気の要因は、
ブランドの顔とも言える若きデザイナー、
レオ・ヴィスコンティその人であった。




イタリア貴族の血を受け継ぎ、
芸術的な才能を持って生まれた彼は
若くして名声と地位を手に入れたが、
その一方で派手な女性関係から恨みを買うことも少なくなかった。

レオの私設秘書のジョゼッペ・ペルゴーニは、
今日もレオのプライベート・メールの返信に追われ、
うんざりしている。

レオの女性遍歴が派手なのは巡り会うべき運命の女性・・・・

十年前のインタビューでレオが答えた
"栗色の髪に琥珀色の瞳、
バレエを愛し、ベルギーなまりのフランス語を話す、
天使のように清らかで繊細な魂の持ち主"

・・・に出会っていないからだと考えたジョゼッペは、
レオの理想の女性を必ず見つけ出すと断言する。

彼はレオがこのような生活を続けていては、
いつか恐ろしいことが起こるのではないかと危惧していた。




サルデーニャ島のシャトーホテル
"レジーナ・ビアンカ"では、
バカンスを楽しむ宿泊客たちがくつろいでいる。

このホテルのコンシェルジュを務めるセルジィオは、
ベルボーイやメイドたちを束ねながら客をもてなしていた。

そこへ恋人のジルが、
アルバイトのピザ配達の途中で立ち寄る。

一緒にランチを取ろうと誘うジルにセルジィオは、
「今日は大切なお客様が到着するから忙しい」と断る。

その大切な客こそ、
このホテルの最上階を所有するレオであった。




そこへレオに夢中になりハリウッドの仕事を
放り出してイタリアまで追いかけてきた人気女優、
ローサがマネージャーのスティーブと共にやって来る。

レオや目下の恋人・パトリシア、
ビジネス・パートナーのロドルフォたちも到着し、
賑わうロビー。

そこでジョゼッペは、
偶然見かけたジルがまさにレオの理想の女性に
ぴったりではないかと気が付く。




裕福な人たちだけが集う豪華なカジノルームでは
人々がギャンブルを楽しんでいる。

そこでレオは、大金をかけても顔色一つ変えない女性、
カトリーヌに惹かれ誘惑する。

仕事に追われる夫を待つだけの毎日に
退屈していたカトリーヌは久々に感じる
心のときめきに浮き足立つが、
その様子を陰から見張る謎の男たちがいた。




また一方でパトリシアは、
田舎から彼女を追いかけて来たボーイフレンド、
フィリッポと言い争っている。

その様子をみていたジョゼッペは、
危惧していたことが現実となりつつあることに不安を感じる。

しかしレオはジョゼッペの忠告を聞かず、
逆に命がけの恋は刺激的だと楽しんでいる様子・・・。




ある日、浜辺で子供達とボール遊びをしていたジルは、
過ってデッキチェアーで寝ていたレオにボールをぶつけてしまう。

ジルと話すうちに、レオは彼女がベルギー生まれの
バレリーナであることを知る。

レオにとって忘れることの出来ない女性に
何もかも似ているジル・・・・。
レオは昔の恋に思いを馳せていた。




その頃、ホテルのエントランスでは
真っ青な顔をしたジョゼッペが右往左往していた。
レオ宛にブラックメールが届いたのだと言う。

刑事たちはレオに恨みを抱く人間の犯行ではないかと推測するが、
該当する人物は数え切れないほどいる。

レオに捨てられた女達、女を取られた男達、
不倫関係のもつれに、ありとあらゆる男女間のトラブル・・・。
そしてレオがいなくなって利益を得る人物は・・・。

それはロドルフォである。

彼は十年前のある事件以来、
一切絵をかかなくなったレオの代わりにゴーストデザイナーとなって
デザインを書いていたのだ。

もしレオがいなくなれば、
"ドン・ファン"ブランドは彼のものになる・・・

そう睨んだ刑事たちはロドルフォを調べ始めた。




一方、レオは十年ぶりにデザイン画を描き始めた。

ジルをイメージして描いたものだと見抜いたロドルフォは、
ジルに惚れたのではないかと追求するが、
レオは頑なに二度と誰かを本気で愛することはないと言う。

レオにとって永遠の理想の女性・・・・マリー・デュノワ。
栗色の髪に琥珀色の瞳を持ち、
バレーを愛するベルギー出身の彼女は、
パリ・オペラ座バレエ団付属学校のバレリーナで、
将来のエトワールを約束された期待の星だった。

レオはマリーと幸せな時間を過ごしていたが、
ある日突然レオのもとにブラックメールが届く。

そしてそのブラックメールが原因で、
最愛の人と別れることになってしまったのだ。

十年前のあのブラックメール。

今回のブラックメールの差出人はあの時と同じ人物なのか・・・?




第二のブラックメールが届いた。

「復讐の時は近づいた」と記されたこの手紙は、
切手の貼られていない封筒で部屋に届いたのだという。

刑事やジョゼッペは、
犯人はこのホテルにいる人物だと捜査対象を絞ることにする。




そして第三のブラックメールが届く。

「最後の晩餐に招待したく、何とぞ一人でお越し下さいますよう。」

と記されたメールを見たレオは、一人で出かけてしまう。

時間と場所はレオだけが見ることの出来る
電子メールで伝えられていた。

レオのプライベートメールを知る人物は限られている。

果たして犯人は誰なのか、そして何の目的なのか・・・?

事件は意外な結末を迎えることになる。