宝塚歌劇団 花組
「不滅の棘」




STORY




1603年、ギリシャ・クレタ島。

医師ヒエロニムス・マクロプロスは不死の秘薬と偽り、
国王ルドルフ2世を欺いた。

王の差し向けた刺客に襲われた彼は、
死の間際に息子エリィにある事実を告げる。

「お前に飲ませた薬だけが本物の不死の薬だ」と・・・。




1933年、プラハ。

四代前から引き継いだ、百年に及ぶ裁判の原告である
フリーダ・グレゴルは苛立ちを露にしていた。

弁護士コレナティの助言を無視し、
訴えを最高裁に持ち込んだものの、
間もなく敗訴の判決が下ろうとしているのだ。

コレナティの息子アルベルトの、
なぜ殊更に訴訟を急ぐのかとの問いにフリーダは答える。

「命は短い。だからお金が欲しいの」と。




そこへ突然、公演の為にプラハに滞在中の有名歌手
エロール・マックスウェルが現れる。

呆気にとられる一同をよそに、
エロールはフリーダの裁判に興味を示す。

彼に請われ、コレナティが事件の経緯を説明すると、
エロールは百年も前の事件についての
有力な情報を次々明かしだす。

そんな彼の様子にアルベルトは違和感を感じるが、
フリーダは裁判を勝訴に導く情報に夢中である。

ついにエロールは、証拠を欲しがるコレナティに
「証拠なら訴訟相手のプルス男爵邸にある。

今夜、それを盗みに行こう」
とこともなげに言い放つ。

なぜここまで協力してくれるのかと問うフリーダに、エロールは
「お前には幸せになって欲しい」とだけ答えるのだった。




プルス男爵邸には未亡人タチアナと、
酒に溺れる毎日を送る息子ハンス、そんな兄を心配する
心優しいクリスティーナが暮らしていた。

エロールたちは邸に忍び込むが、
運悪くクリスティーナに気付かれてしまう。

エロールは取り乱したクリスティーナをなんとかなだめようとするが、
ついに彼女はエロールに向けて発砲。

背中に銃弾を受けたエロールは傷口を押さえながらも、
クリスティーナに明日の自分の公演に
必ず来るよう約束し、暗やみに消えていった。




翌日午後八時。

すでに公演の幕は開いていた。

しかし肝心のエロールの姿がまだ見えない。

一方、クリスティーナとタチアナも、
同じく公演の行方を見守っていた。

はたして彼は無事なのか。それとも・・・




舞台上でエロールを称える歌が最高潮に達した時----

何事もなかったかのように、
悠然と微笑みながらエロールが現れ歌う。

「スターは必ず甦るのさ」と。




百年前の事件を詳細に知り、
銃撃された傷すら立ち所に癒えてしまう。

一体エロールとは何者なのか。

何のためにフリーダの前に現れたのか。

やがて事件は不穏は様相を呈していく・・・。