STORY




戦に敗れ滅びてしまった国の王子カラフは放浪の身となり、
小姓ゼリムを伴い諸国を彷徨っていた。

生き別れてしまった父のティムール王が
北京にいると噂に聞いた二人は中国を目指す。

その道中で、カラフは賊に襲われていた
コラサン国のアデルマ姫を救う。

カラフの内から滲み出る気高さと
勇敢な態度にアデルマは惹かれるが、カラフはその素性を隠し
アデルマを頑に拒んで去っていくのだった。




北京の街は異様な熱気に包まれていた。

中国皇帝の一人娘トゥーランドット姫は、その類稀なる美貌に惹かれて
求婚してくる異国の王子達に3つの謎を出し、
解けない者の首を容赦無く刎ねるという恐ろしい王女であった。




今またトゥーランドットの冴え冴えとした冷たい美貌に心奪われた
若く美しいペルシャ王子が謎解きに失敗し、
月の出と同時に処刑が執行されようとしていた。

厳しい圧政に日々耐えている北京の民は、この残酷な見せ物に熱狂している。
そんな人込みの中でカラフは偶然にもティムール王と再会する。

年老いたティムール王を支えていたのは故国の奴隷の娘タマルであった。

タマルはただ一度、カラフが戦に勝利した凱旋の祭典の日に、
国の奴隷の掟を破り顔を上げてカラフの横顔を見たという。

その罪を償う為、ティムールに献身的に尽くしていたのだ。




カラフはタマルに感謝の気持ちを述べるが
タマルは決して顔を上げようとはしない。

タマルはあの凱旋の日より秘かにカラフを慕い続けていたのだ。

お互いの無事を喜ぶ間も無く、
突然盗賊がカラフに斬り掛かろうとした。

アデルマ姫を襲った盗賊のタンとトンである。

彼らはカラフに仕返しをしようとしたのだ。

そこへ盗賊の頭バラクが現われ、タンたちを諌めてカラフに詫びた。




カラフが国を滅ぼされた王子である事を知ったバラクは
自分も実はラサの王子だったと打ち明ける。

自分と似た境遇のカラフにバラクは興味を持ち、
ペルシャ王子の処刑の様子を観ていくように勧める。

幼く美しいペルシャ王子の登場に北京の民は
皆口々にトゥーランドットの慈悲を請うが、
トゥーランドットは冷ややかに処刑を促す。

先祖の王女ローウ・リン姫が異国の兵士に襲われ殺された、
その復讐を果たす為にこの謎かけを始めたと歌うトゥーランドット。




その姿を見たカラフは、トゥーランドットの威厳に満ち溢れた
壮絶なまでの美しさに魂を奪われたたのように立ち尽くす。

トゥーランドットの虜になってしまったカラフは、
この謎解きに自分も挑戦することを決める。

ティムールとゼリムは必死に思いとどまるようにカラフを説得するが、
恋に落ち、その運命に挑もうとしているカラフの決意は変わらない。

タマルも涙ながらに訴えるが、カラフはそれを振り切り、
謎解きの挑戦の意思を告げる銅鑼を打ち鳴らした。




中国皇帝は娘に異国の王子を次々に処刑していることを咎めるが、
トゥーランドットはかつて祖国の女達を苦しめた
異国の民への復讐に終わりは無いと撥ね付ける。

無益な殺戮を何とかして食い止めたい中国皇帝は
カラフに引き返すように論すが、カラフの意思はやはり変わらなかった。

トゥーランドットはこの異国の王子に、
その首を手中に入れると高らかに告げる。

だがカラフは決して怯まず、トゥーランドットを見据えて
「あなたは私のものだ」と宣言するのだった。




中国皇帝はこの愚かな謎掛けが終わる事を願い、カラフの勝利を祈る。
果たしてカラフは3つの謎を全て解いてしまった。

トゥーランドットは予想外の結果にうろたえ、
誰の者にもなりたく無いと悲鳴を上げる。

カラフは自分が欲しいのは愛に燃えるトゥーランドットだと言い、
逆に謎を出す。

それは夜明けまでに自分の名前をトゥーランドットが言い当てれば、
改めて首を差し出すというものだった。

しかし、その名前が分からなければトゥーランドットは先の掟通りに
カラフと結婚しなければいけないのだ。




トゥーランドットはしぶしぶ申し出を受け入れる。

北京の街は夜を撤して王子の名を知る者の捜査が続いていた。

もし王子の名が分からなければ、
北京の民を見殺しにするというお触れが出たのだ。

北京の民は迫りくる夜明けに怯え、血眼になって捜索している。




そんな中、カラフのもとへアデルマが現れる。

コラサンは中国に滅ぼされ、
アデルマ達はここに捕えられているという。

アデルマはカラフに一緒に北京から逃げて欲しいと懇願するが、
カラフはこれを断る。

カラフへの愛をも冷たく拒絶されたアデルマは、
自害しようとさえするが、カラフは取り合わなかった。

アデルマは傷つき去って行く。




バラクの手下が見張る中、カラフはティムールとタマル、
ゼリムに明日再会することを約束する。

ティムール達の後の面倒を任せろと言うバラクに、
カラフは自分の名前を秘かに打ち明ける。

二人の間には深い信頼関係が築かれていたのだ。

そんなカラフ達の様子をアデルマの付き人の
アミンとマームード達が窺っていたのだ。

アデルマは自分の愛を否定したカラフを誰にも渡したく無かった。

トゥーランドットとの結婚を阻止する為に、
何としてもカラフの名前を知ろうとしていたのだ。

カラフが去った後に宮廷の兵士達が現れ、バラク達に襲い掛かった。
バラクはティムール達を手下に任せ、
一人残って戦うが、激しい抗戦の末に絶命してしまうのだった。




トゥーランドットは今までの王子とは違い、
気高く情熱的に自分を求めるカラフに
得体の知れない恐れを抱き取り乱していた。

それが図らずも愛の始まりだとはトゥーランドットは知る由も無い。

そこへアデルマが王子の名を知る者を捕えたと知らせに来る。

捕えられらのはティムールとタマル、
タンとトンであった。

タマルは王子の名を知るのは自分一人である、
だがそれは決して言わないと言う。

激昂したトゥーランドットは役人に命じタマルに鞭を打たせる。

だが、タマルは決して答えない。

そこにカラフが駆け付けるが、
狂気のアデルマは更に激しくタマルに鞭を打ち続けた。

突然タマルは役人の剣を奪い自害を図る。

タマルは瀕死の息の下から
「これこそが愛!あなた様なら分かるはず・・・!」
とトゥーランドットに訴えた。

その姿に驚き、悲しい死に嘆く人々。




中国皇帝はアデルマを退けると、タマルを丁重に弔う事を命令し、
トゥーランドットを無視して去っていく。

残されたトゥーランドットは動揺し茫然自失となるが、
カラフはそんなトゥーランドットを激しく抱きしめ熱い接吻をする。

それでも尚、自分の愛を拒むトゥーランドットに
カラフはラマルの言葉を信じて、自分の名を打ち明ける。

王子の名がついに分かったと叫び、
トゥーランドットは銅鑼と叩いて人々を呼ぶ。




夜明け。

兵士や北京の民が大勢集まっている。

トゥーランドットは皆の前で高らかに告げる。

「異国の王子の名が分かった。」

総ての人が、トゥーランドットの言葉に聞き入る。

「その名は愛!」

トゥーランドットはカラフの前にひざまづき、二人は口づけを交す。

タマルの命を懸けた愛とカラフの抱擁が
氷のような王女の心を熱く溶かしたのだ。

喚声が沸き起こり、世界は喜びに包まれる。

カラフはこれまでに流された尊い血を厚く弔い、
共に偉大なる中国を築こうと北京の民に語りかける。

輝ける明日に向けて新たな中国が始まろうとしていた。