宝塚 宙組
〜 ミュージカル 〜
「カステル・ミラージュ」
-消えない蜃気楼-




STORY




ラスヴェガスにあるホテル「ブルー・バード」のオーナー、
レオナード・ルビーの死が、新聞王リチャード・テイラーに伝えられた。

テイラーは、暗黒街の天使、
そして消えない蜃気楼を求め続けた、この男の死を悼んだ。




ニューヨークはマンハッタン。

ウエスト・サイドにある貧民街、通称ヘルズ・キッチン。

ここがレオナードと、その親友ジョーが育った街だった。

ストリートではマダム・ドジンスカヤの
青空ダンス教室が開かれていた。

ここで一番の人気はエヴァ=マリー。




ある日、フランクを中心としたイタリア系の少年グループがやって来て、
踊るジョーを捕まえた。

ジョーは賭博で負け、フランクたちに借金があったのだ。

レオナードはジョーの借りを返す為、フランクに勝負を挑む。

エヴァ=マリーは、
勝利の女神ミネルヴァのお守りのペンダントをレオナードに渡す。

レオナードはクラップで勝利した。

ところが、これに収まらないフランクは、
ロシアン・ルーレットでの勝負を提案する。

レオナードは最後の引き金を引くが、無事であった。

弾は入っていなかったのである。




この様子を見ていたこの辺りを仕切るボス、
アントニオはレオナードの度胸を見込み、
困った時には相談に来るようにと言う。

レオナードはペンダントを返そうとするが、
イタリアの伯父がムッソリーニの親衛隊に入り
父親に仕事を見つけてくれたのでイタリアに帰ることになったと、
エヴァ=マリーはペンダントをレオナードに託すのだった。




レオナードが家に戻ると、
大家のウェルズが母親のルチアに家賃の支払を迫っていた。

レオナードの母親の心配をよそに、
アントニオのもとを訪ねる決意をする。




エオナードがアントニオの仲間となって、
10年の月日が流れた。

成人したレオナードは、
東海岸のカジノの元締として経営にも手腕を発揮していた。

アントニオはレオナードに西海岸への進出と、
フランクが押さえられずにいたシカゴ・マフィア、
ガンビーノの取り締りを命じる。

今やミュージカル映画のスターとなったジョーに会えるのを楽しみに、
レオナードはハリウッドへと向かう。




テイラー邸で、
レオナードとジョーは久しぶりに再会する。

邸ではヨーロッパの戦災孤児を救う為の
チャリティー・パーティーが催されていた。

そこで一人のゲストが紹介された。

モンテカルロのオペラハウスでテイラーが見い出した歌姫アリアーヌ。

彼女こそ、成長したエヴァ=マリーだった。

レオナードはミネルヴァのペンダントを出し、かざした。




そのレオナードの態度に怒ったテイラーは、
カジノを扱うレオナードをアンダーワールドの人間だと見下す。

カリフォルニアではカジノは非合法だと言うテイラーに対して、
レオナードはネヴァダでカジノを開くつもりだと宣言する。

検事マクガバンはそんなレオナードにあからさまな敵意を見せる。

折から、連合軍がシチリア島に上陸し、
イタリア軍は後退しているとの報がもたらされる。




パーティーの途中、
レオナードはイタリアの公爵ステファーノから、
軍の目を盗んでイタリアから密輸ルートを
作って欲しいという話を持ちかけられる。

美術品を売った金がムッソリーニの資金になるのは
組織を裏切ることだと、レオナードはその申し出を断る。




一方、テイラーはエヴァ=マリーにレオナードのことを問いただした。

家族がムッソリーニに関わっているにも拘わらず、
エヴァ=マリーが身柄を拘束されることなくアメリカに来て、
ハリウッド入りすることができたのは
すべてテイラーの力があったからこそだった。

しかしエヴァ=マリーはテイラーに感謝しながらも、
自分にとって真実の愛ではないと気付いていた。

ひとり残ったエヴァ=マリーの前にレオナードが姿を現す。

レオナードと話すうちに昔のままの純粋さを失っていない彼に
心惹かれるエヴァ=マリー。

今ではこのキャッスルに囚われの身となってしまったと
卑下するエヴァ=マリーに、
レオナードは自分にとっては
昔のままの変わらぬエヴァ=マリーだと愛を告白する。




フランクは何故アントニオはレオナードを
送り込んできたのか疑念を抱き、
ガンビーノとの癒着がアントニオに知られたのではないかと疑っていた。

フランクにマクガバンを引き合わされたガンビーノは
取り引きをしようとするが、そこへレオナードが現れる。

レオナードはテイラーの秘書・カーターの不自然な言動から、
フランクがコカインに手を出したことを見抜く。

組織の掟を破ったフランクは処刑しなければならない。




しかしロシアン・ルーレットでフランクと勝負したレオナードは、
銃の仕掛けでフランクを救うのだった。

テイラーの邸を抜け出たエヴァ=マリーは、
レオナードらと共にネヴァダ砂漠へ来ていた。

車がオーバーヒートしてしまい、
砂漠の真ん中で車を降りたレオナードは、この場所こそ新天地だと感じ、
ここにエヴァ=マリーのために夢の城を造ることを思い立つ。

そして、エヴァ=マリーにこの「カステル」の命名を依頼するのだった。




早速、レオナードは砂漠に豪華リゾート・ホテルを
建設したいとアントニオに願い出、
その熱意にアントニオも承諾する。

ホテル建設へ向けて仲間たちと励むレオナードのところへ
テイラーのもとを飛び出して来たエヴァ=マリーが現れる。

レオナードはホテルが完成したら結婚して欲しいとプロポーズし、
ホテルのネーミングをエヴァ=マリーに尋ねた。

その名は「ブルー・バード」だった。




レオナードはホテル経営に着手。

ジョーは、テイラーのコンチネンタル系のプレスのライバル、
ユナイテッド・ニュースを使って、
砂漠に夢の城を造るという夢に挑戦している彼らを紹介し、
ホテルのPRを始めた。

これを知ったテイラーは、
コンチネンタル・プレスの総力を挙げて
キャンペーンを張るよう指示する。

ホテルの経営者はアンダーワールドの人間であると。

新聞で、ラジオで、テイラーはホテルの開設を非難し続けた。




エヴァ=マリーは意を決してテイラーを訪ねていた。

レオナードへの妨害キャンペーンを止めて欲しいと頼むためである。

聞き入れてもらえるならば、テイラーのもとに戻ると。

テイラーは「君が払う愛の犠牲を受け入れるほど
愚かな男ではない」とエヴァ=マリーの頼みを受け入れる。

そしてレオナードに関するキャンペーンを取りやめるよう
全ネットワークに伝え、ホテルの取材をするよう命じる。




そこへ公爵夫妻が現われ、
イタリアが解放されムッソリーニが逮捕されたことを
エヴァ=マリーは知らされる。

家族を助け出すには大金が必要で、
それを可能に出来るのはレオナードだけであった。




ホテル「ブルー・バード」のオープニング・ナイト。

ジョーはレオナードとエヴァ=マリーが
このホテルで最初の結婚式を挙げる予定だと宣言する。

それを聞いたアントニオは、
この結婚はやめた方がいいとレオナードに宣告する。

レオナードは、公爵にエヴァ=マリーの弟を助け出して欲しいと頼むが、
そのためにはマフィアを買収する1万ドルが必要だと公爵は言う。

レオナードはオープンの収益金でその金を用意する。

そして躊躇するエヴァ=マリーを励まし、
一刻も早くイタリアへ旅立つよう説得する。

レオナードは旅の無事を守ってくれるよう、
昔彼女がくれたミネルヴァのペンダントを返すのだった。




収益金と帳簿の食い違いを指摘され、
その使途をフランクに問われたレオナードは、
公爵が密輸した彫刻を売り捌こうとして焦げついたのだと嘘を付く。

掟を破ったことを認めたレオナードは、
ロシアン・ルーレットで決着をつけることをフランクに提案する。

レオナードは覚悟を決め、目を閉じ、
微笑みを浮かべて6発目の引き金を引いた。

そして、もう一度ホテルをその目に焼きつけるかのように
辺りを見渡し倒れるのだった。

レオナードが眠るのに一番ふさわしい場所・・・

エヴァ=マリーはレオナードの遺灰をまくために、
砂漠へと向かうのだった・・・・・。