宝塚 月組
〜リヒャルト・シュトラウス/フーゴー・フォン・ホフマンスタール作
オペラ「ばらの騎士」より〜
「愛のソナタ」




STORY




時は封建時代のヨーロッパ。

田舎貴族のオックス男爵は浪費家で女ったらし。

財産をすっかり使い果たし破産してしまった。

そこで、ウィーンに住む最近貴族の称号を得た大金持の
ファニナル家の一人娘ゾフィーと結婚するために、
故郷の恋人マルガレーテを振り切って、
家来のニクラウスらを伴い、夜逃げ同然でウィーンへ向かった・・・。




一方、ここは元帥夫人マリー・テレーズの寝室。

若く美しき伯爵オクタヴィアン・ロフラーノと
テレーズがベッドで愛を語らっている。

つかの間の幸せに酔いしれている恋人たちだが、
ふいに馬の蹄の音が聞こえてくる。

元帥が帰って来たのかと慌てる二人。

オクタヴィアンは急いで衣裳部屋に隠れた。

だが、そこへやって来たのは、テレーズの従兄弟のオックス男爵。

オックスはゾフィーとの婚礼の使者である「ばらの騎士」を
誰に任せるかをテレーズに相談に来たのだった。

テレーズはその使者にオクタヴィアンを推薦する。

隠れていたオクタヴィアンはマリアンデルという偽名の
小間使いに女装してその場を逃れようとするが、
女ったらしのオックスはマリアンデルをオクタヴィアンの妹と思い込み、
馴れ馴れしく言い寄る始末。

更にゾフィーとの結婚の目的は金だとはっきり言い切るのである。

意気揚々と去っていくオックスに辟易するオクタヴィアンとテレーズ。

だが、結局オクタヴィアンは「ばらの騎士」の
役目を請け負うことになった。




一人になったテレーズは次第に淋しさを感じ始める。

元帥との愛のない結婚生活での満たされない想いを
オクタヴィアンに求めても、年齢と共に衰えていく自分の容姿を嘆き、
いずれも年の離れた恋人は自分の元から
去っていくかもしれないと半ば諦めのような気持ちになっていた。




ファニナル家では、男爵との結婚の儀式に一同が浮かれている。

まだ見ぬ婚約者に胸をときめかせ、可憐なゾフィーは
「ばらの騎士」、を待ちわびていてそわそわしていた。

そこへ、純白の衣裳をまとった「ばらの騎士」、オクタヴィアンが現れる。

その若くて凛々しい騎士の姿にゾフィーは思わず一目惚れをしてしまう。

そしてそれはオクタヴィアンも同様。

可憐で美しいゾフィーに一瞬にして心を奪われてしまったのだ。

やがて、結婚相手のオックス男爵一行が到着し、
二人は我に帰って一行を出迎える。

だが、オックスは婚約者のゾフィーにろくに見向きもせずに、
父親のファニナル伯爵相手に財産や誓約書の話をするばかり・・・。

可哀想なゾフィーはショックを受け、
オクタヴィアンにオックスとは結婚したくないと助けを求める。

オクタヴィアンは酔っぱらってゾフィーに絡むオックス男爵と対立し、
とうとうその場で剣を抜きあうが、
オックス男爵は小さな怪我を負っただけであっけなく負けてしまう。

邸内大騒ぎとなるが、ゾフィーは絶対に男爵とは結婚をしないと言い張る。

ファニナル伯爵は激怒し、
オクタヴィアンを追い帰してしまうのだった・・・。




ファニナル邸から出たオクタヴィアンは突然目の前で倒れた娘を介抱し、
マリー・テレーズ邸に連れていく。

その娘はマルガレーテ。

自分との婚約を目前に逃げてしまったオックス男爵を追って、
育ての親のリヒャルトとアンニーナを伴ってウィーンまでやって来たのだ。

オックスはマルガレーテに残した手紙の中で、男爵のしている指輪を得た上、
一晩を共に過ごすことがあるならばマルガレーテと結婚するだろうと書いていた。

このマルガレーテの話を聞いたオクタヴィアンは名案を思いつく。

そして、例の騒ぎで臥せりがちになったファニナル伯爵を心配し、
今後の事を不安に思っているゾフィーに早速計画を打ち明ける。




オックス男爵は相変わらず女を追いかけて酒場で大騒ぎをしている。

泣く泣く故郷を離れて、
男爵に付いて来た家来のニクラウスたちも、さすがに呆れていた。

そこへ、リヒャルトとアンニーナが現れ、
オクタヴィアンの計画にニクラウスたちを誘う。

早く故郷に帰りたいニクラウスたちは快諾し、
作戦を開始することになった。




ニクラウスたちはマリアンデルという娘から手紙が来たと言って
オックス男爵に偽の手紙を渡し、イーグル亭に誘い出す。

オックスは喜び勇んでやって来て、
早速マリアンデルを口説こうとする。

マリアンデルが実はオクタヴィアンの
女装姿などとは思いもよらない様子である。

マリアンデルは酒に酔っぱらいオックスに絡みはじめる。

そして、オックスの指輪をねだる。

はじめは拒否していたオックスだが、マリアンデルに熱烈に迫られ、
とうとう指輪を渡してしまう。

指輪を手に入れほくそ笑むマリアンデルは、
今度は思わせぶりにオックスを東屋に招き入れるのだった・・・。




さて、しばらくして東屋の後からオクタヴィアンが出て来る。

そこへ、風紀警察とファニナル、ゾフィーがやって来た。

計画通りにニクラウスたちが呼んで来たのだ。

警察は、マルガレーテと一夜を過ごし婚約の条件を満たしたのに
ゾフィーとも婚約をしているという訴えがあったとオックスに告げる。

オックスは否定するが、当のマルガレーテが東屋から出て来て、
たった今二人は愛の契りを交わし、
男爵家の家紋の指輪も自分の指にあると公言する。

驚くオックスの前に、テレーズと共にマリアンデルが現れ、
オックスに自分の正体を見せつけるのであった。

オックスはまんまとオクタヴィアンたちの罠に落ちたのだ。

オックスとゾフィーとの婚約は当然取り消しとなり、
実は莫大な財産を持っていた
マルガレーテとオックスは晴れて婚約。

そして、互いを想いやっていたオクタヴィアンとゾフィーだが、
オクタヴィアンはテレーズを気づかい、ためらっていた。

そんな彼に対してテレーズは自分の気持ちを抑えながら、
新しい若い恋人たちを祝福し毅然と去っていく。

自由気ままに独身生活を送って来たオクタヴィアンだが、
今はゾフィーに心から「愛している」と
告白することが出来るのだった。