明治座創業140周年記念
「おさんとおしの」
山本周五郎「さぶ」より





STORY




時は江戸末期。

小雨降る夕暮れの両国橋の袂をおさんが泣きながら駆けていた。

おさんは堀江町の小料理屋「すみよし」につとめる女中で、
店の女将にきつく叱られたのである。

その後を同じ女中のおしのが追い駆けてきた。

勤めて間もないおさんが泣きながら自嘲するのを
おしのは優しく慰め、一緒に店へ戻った。




「すみよし」では、女将のお勝が
客を送り出していた。

お勝の亭主与平は板前として
腕を奮っていたが、
半年前に倒れてしまった。

その時店に客としていたのが
今の板前清次で、
与平の味を守っていた。




そんな折、
与平の息子新吉が帰ってきた。

口は悪く道楽三昧の生活をしており、
金の無心に戻ってきたのだ。

そんな新吉を見かねた与平は大声で追い返した。




与平は皆に、
新吉とは血を分けた子供でないことを打ち明けた。

女房が他界し、
魔が差してお勝に手を付けて以来、
女房面して居座ってしまったのだ。

そんなお勝と新吉が折り合うはずはなく、
新吉は道楽者になってしまったのだ。




ある日の夜半、
与平がお勝に問いただした。

財布から金を出そうとしたらその財布がなくなっているというのだ。

財布の場所を知っているのは
お勝だけだと与平は疑うが、
お勝は自分ではないと言い張り、
この家の全員の荷物を調べると言い出した。

するとおしのの荷物から与平の財布が現れた。

おしのは身に覚えがないと言ったが、
お勝は役人に訴えると言い駆け出した。

おしのは無実だと泣き叫んだ。




石川島の人足寄場に、おしのはいた。

無実の罪を着せられ寄場送りとなったのだ。

人間不信に陥ったおしのは誰とも口をきかず、
完全に心を閉ざしてしまった。

そんな折、寄場元締役同心の岡安から何度も
面会にきているおさんに、
今日こそは会ってやれと促される。

清水と一緒に来たおさんと会うおしの。

久しぶりの再開も頑なに拒む。

やがて清次はおさんの身の上に起こった悲しい出来事や、
おしのの無実を晴らすために奔走してきたことを話した。

おしのは次第に元の心を取り戻してゆく。

そしておしのの無実が晴らされる時がきた…。





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