明治座創業140周年記念 石川さゆり40周年記念
「貞奴 世界を翔る」
STORY
時は明治十九年(一八八六年)春。
花街特有の艶めいた音楽が聞こえてきます。
ここは葭町浜田屋。
幼くして養女となりこの浜田屋の女将、
可免のもとで厳しい修業を積んだ貞あらため
「奴」はもう十六歳。
今日はその奴のめでたい水揚げの日。
水揚げしてくださるのがわが国最初の内閣総理大臣、
伊藤博文とあって可免も仲間の若者衆も
心のざわつきをおさえることができません。
水揚げの日の可免の予言どおり、
奴は葭町一の芸者となり、
瞬く間に日本一の芸者と呼ばれるまでになりました。
ところが貞の人生は一変します。
川上音二郎という破天荒極まりない男に
惚れ込んだからさあ大変。
音二郎は自由民権運動を唱え、
オッペケペー節で一世を風靡した書生芝居役者。
先の選挙に立候補したものの、
落選して借金だらけ。
なのに今度は手漕ぎボート一艘で日本を脱出し、
アメリカへ行くと息巻いています。
川上音二郎は気がふれたと世間が騒ぎ出し、
新聞社がつめかけます。
しかし取調室の音二郎はいたって正気。
いや、一筋縄ではいかない男です。
なんと音二郎の思惑通り、
神戸港に着く頃には川上一座のアメリカ行きが実現することに。
天のお導きなのか、
音二郎の確信犯なのか。
しかしこれはほんのはじまりにすぎません。
航海中繰り広げられる苦行とも人生修業ともいえる
川上一座の珍道中。
持ち逃げあり、差し押さえあり、
お金もなく、二名用の安ホテルの客室に
座員一同寿司詰め状態。
食うに食えず水だけでお腹を満たすひもじい日々。
まさに「生きるか死ぬか」の瀬戸際の毎日。
それでも興行を続ける音二郎をはじめ、
団員たちの芝居への情熱はすさまじく、
ライラック座での公演を皮切りに連日大成功をおさめていきます。
そこへ一座の立女形の死という不遇がまたもや襲い掛かります。
その上、音二郎までが病に倒れ…。
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