川中美幸出演

「たか女爛漫」
-井伊直弼を愛した女-




STORY




近江の総鎮守多賀大社の高僧を父として生まれた
村山たか女が彦根藩十二代藩主の十四男井伊直弼と出会ったのは、
春を招く造花の幟が風に揺れる、
日野の南山王祭の賑わいの中であった・・・。




二人は出会った瞬間から恋に落ちたが、
天保十三年(1842)のその春、
直弼は未だ世に出ぬ部屋住みの身とはいえ、
遊廓の女たちへの音曲指南を生業とするたか女との
身分違いは誰の目にも明らかだった・・・。




直弼を息子のように慈しむ彦根藩老職・犬塚外記の困惑、
武家の息女の誇りに生きる側妻・志摩の嫉妬、
二人の恋の行く手には様々な障害が立ちはだかっていたが、
ただ一人、その恋に理解を示し、
陰ながら支えになってくれるかと見えたのは、
直弼の国学の師であり、
芸術を仲立ちにしての友でもある国学者・長野主膳その人であった・・・。




直弼を中心に恋と友情で結ばれたたか女と主膳、
男女三人の青春は身分違いも乗り越え、
晴れやかな時を紡いで行くかのように見えたが・・・。

果たして直弼とたか女の恋を傍らで見守る主膳の胸中に去来する思いは
どんなものだったのか・・・。

たか女がその真実を知るのはまだ遠い先の事である・・・。




直弼の心を虜にしたたか女に激しく嫉妬した志摩は出奔し、
腰元・登和が側妻に召される。




やがて直弼とたか女には別離の時が訪れる。




部屋住みの冷飯食いから彦根藩主継ぎの座へ・・・
直弼の思いがけない出世に更に輝かしい将来を見越したたか女は、
心にもない愛想尽かしで自ら身を引いたのである・・・。




もとの郭の音曲指南に戻り世を狭くして生きるたか女・・・
主膳はそんなたか女に直弼の密偵として働く話を持ち掛ける・・・。




弘化三年(1846)冬、
隣国清が英国との戦に敗れた話も海を越えて伝わり、
日本国内でも開国派と蝦夷派の対立が
いよいよ激しさを増しつつあった。

彦根藩は譜代筆頭の家柄、
直弼も藩主の座に就けば、
開国を推進しようとする幕府の中心人物として働く事になる。

直弼を助けて攘夷派の働きを探るのが密偵の仕事。

・・・偉大な男の夢の誕生に力を貸す事は
その男の子供を生むことにも劣らぬ女としての立派な仕事・・・
主膳のその一言に、
胸に一抹の不安を残しつつも密偵となる事を承知するたか女・・・
その胸の奥にあるのは今も変わらぬ直弼への思慕であった・・・。




たか女が密偵として生きることになった舞台は京都・・・




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