新橋演舞場6月公演
藤山寛美 没後二十年
「丁稚の縁結び」(夜の部2)




STORY




まだ人々が丁髷を結っていた頃の大阪船場・道修町。

旧暦の水無月(今の七月)の満月の頃。

境内では夏祭りの準備にみんな大忙し。

いつもは商売に勤しんでいる商家の人達も、
祭りの花形は、
薬種問屋蓬栄堂分家吾兵衛の娘・お咲。

そのお咲、蓬栄堂本家喜右衛門の息子・喜之助との婚礼も決まり、
まことにお目出度い事づくしのはずなのだが・・・。

この婚礼に皆は大反対。

何か理由があるはずと、
吾兵衛の家の丁稚・由松からその事情を聞きだそうとするが、
その由松はどこの誰よりもこの婚礼が気に入らない。




人の良い吾兵衛が、
本家からの申し入れに、
きっと娘が幸せになると信じ、
有難いと快く承諾した。

親に逆らうことのないお咲は、
泣く泣く受けただけで嫁になんて行きたくない。

誰が好き好んであんなアホの所に行くか・・・。

その由松の悪口雑言を、
お咲の踊り見たさに来ていた喜之助と本家番頭の伝兵衛が聞いてしまう。

元々、相性の良くない伝兵衛と由松は、
お咲を嫁に遣らない・・・貰えるか・・・
これで破談だ・・・破談。

売り言葉に買い言葉。




口は禍のもと・・・とは言え、
由松やお咲の本心も知らず、
この婚礼を素直に喜んでいる吾兵衛は全く罪つくり。




そんな折、吾兵衛一家と親交深い庄吉が、
三年に一度の大祭に合わせ、
商いの途中、京から訪ねて来た。

この庄吉こそお咲の思い人だった。

また、お咲の婚礼を知った庄吉も、
自分の思いを隠しながら、
祝いの言葉を伝えるしたなかった。




そんな事情も知らない呑気な吾兵衛の元に、
医者を志し、長崎に行っている息子・吾市から突然、
妹の婚礼についての手紙が届く。

お咲と庄吉はいつか必ず夫婦になろうと
誓い合っていた仲だったと知る吾兵衛。




子の心親知らず、可愛い娘を悲しませていたとは・・・。

そして庄吉に対しても・・・。

そんな自分に恨み辛みのひとつも言わぬ二人。

全く情けない・・・何とかしてやりたい・・・
思案する吾兵衛・・・その吾兵衛の心を汲んだ由松も共に・・・
二人のために・・・と。




親の心、やっと子供に伝わり、
いざ駆け落ちと心を決めた二人を、
由松は京へと送りだす。




その時、喜之助の父親喜右衛門が、
破談を伝えにやって来た。




これで二人は大手を振って夫婦になれる・・・
二人の門出にこの喜びを伝えたい。




丁稚由松、これがホンマの縁結び・・・。




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