「頭痛 肩こり 樋口一葉」
STORY
明治二十三年。
後に作家・樋口一葉として名を知られることになる樋口夏子は、
まだ十九歳。
和歌の道を志し、当世名高い「萩の舎」の内弟子をしていた。
しかし、先生に才能は認められても、
華族や富商の子女といった門人の中では肩身が狭く、
その実状は、住み込みの女中のような日々であった。
貧しい暮らしの中でも、
母・多喜は、士族としての誇りを捨てられずにいた。
父と兄亡きあと、
樋口家の暮らしは戸主の夏子が支えなくてはならず、
妹・邦子の仕立物だけでようやく暮らしているという有様であった。
物語は、その年の盂蘭盆から始まる。
休みをもらった夏子が多喜と邦子の待つ家に帰ると、
多喜が乳母をしていた旗本稲葉家のお嬢様、
というか“もとお嬢様”のお鑛が盆礼に訪れていた。
稲葉家も今は没落し、お鑛の夫が次々と始める事業もうまくいかず、
多喜に資金の相談に来たのである。
しかし不自由しているのは樋口家も同じこと。
そんな母たちの様子を見ていた夏子は、内弟子をやめ、
思い続けた小説家の道で身を立てていこうと決心する。
翌年(明治二十四年)の盂蘭盆。
書いても書いても小説が全く売れず、
夏子はすっかり頭痛持ちになっていた。
そこへ、旧知の中野八重が盆礼に訪れる。
実は兄が投獄され、罰金を払うためのお金を借りたいと言うのだが、
樋口家はもちろん、夫の事業資金を集めたいお鑛にも、
八重を助けるすべはなく、
世の不公平さと理不尽さに皆打ちひしがれるのであった。
そんな夏子の前に、花蛍と名乗る幽霊が現れた・・・。
その翌年(明治二十五年)の盂蘭盆。
夏子は小説の師と仰いでいた半井桃水との間が噂となり、
心ならずも自ら師弟関係を解消し、
ひたすら執筆活動に打ち込んでいた。
今年もお鑛と八重は盆礼に訪れ、
相変わらず不遇を嘆き合う。
また花蛍も現れ、うらみを抱いているはずの相手や、
自分が誰かも思い出せずにいると夏子に嘆くのだった。
実はこの花蛍は、他の皆には見えておらず、
夏子の行動は奇怪にうつり、
一同困惑するのであった。
また盂蘭盆がやって来る。
明治二十六年、二十七年、二十八年・・・。
相変わらず夏子は、この世の辛苦と、
あの世の住人・花蛍との間を行ったり来たりしていた。
樋口家に集う面々はといえば、
人生の波を浮いたり沈んだり「今」の幸せを必死に求める生活だ。
やがてそれぞれの人生に大きな変化が・・・。
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