さだまさし原作
「眉山」
-びざん-
STORY
東京の旅行代理店で働く咲子は、
故郷の徳島で一人暮らす母・龍子が入院したという報せを、
龍子のケアマネージャー大谷啓子から受け、
仕事もキャンセルして帰省する。
向かった病院では、看護師に堂々と意見をし、
相良ら同部屋の患者からの人望も厚い、
いつもの母の姿があった。
娘の咲子としては入院した事さえ知らされず、
全てを相談なく一人で決めてしまう母に反発を感じると共に、
自分がいなくても困らないではないか
という寂しさを感じるのだった。
しかし、そんな気丈な母が末期癌で数カ月の命ということを
咲子は医者から告知されショックを受ける。
そして母校で「傾城阿波の鳴門」を聞きながら、
徳島に戻ってくる決心をするのだった。
数日後、咲子の徳島での就職を祝う会が、
松山の店で開かれ、
栄二ら龍子を慕う仲間が集った。
女手ひとつで咲子を育てあげた龍子は、
自分がママをつとめる料理屋でどんなお客さんにも
媚びる事なく自分の信念を貫き通し、
その姿は「神田のお龍」と呼ばれ、
皆の憧れだった。
会の途中、酔った咲子は自分の過去を回想していた。
父の事について問い詰める中学生の咲子。
隠す事なく父の事、咲子への愛を伝える龍子。
「あなたのお父さんが大好きでした。
咲子が生まれた途端、急に明るい花が咲いたような気がした。
だから咲子と名付けたの。」
咲子は頷くように母の胸に顔を埋めた・・・。
ある時、龍子の入院する病院に勤める医師・寺澤は、
軽率な発言をして龍子に意見される。
いったん腹を立てるも
自分の到らない部分を指摘されたからだと気付き、
寺澤は素直に詫びる。
その時、咲子は龍子が自分に内緒で
献体を申し込んでいる事を知り動揺する。
病院の中庭で誕生日を祝う龍子。
咲子は感動しながらもいつもの龍子のペースに
はまってしまうのが口惜しく、
思い切って献体の事を問い詰める。
他にも自分だけで決断する母の行動を思い出し、
攻撃的になる咲子。
そんな咲子に龍子は一番好きな人に貰ったというルビーの指輪を渡す。
「ルビー様、どうぞ、私の可愛い娘をいつまでも末長くお守り下さい。」
咲子は龍子が父とのある約束を守っていると聞く。
その約束とは・・・。
夕焼けの朱が二人を染めていた。
街や人が阿波おどりにむけて気持ちの高まっていくある日、
松山の店に集る咲子、寺澤、松山の三人。
松山が厳しい表情で奥から小箱を持って出て、
咲子の前に丁寧に置いた。
形見として咲子に渡すように龍子から預っていたのだと言う。
迷いながらも咲子は意を決して開封する。
箱の中には、若き龍子と男の人の写真。
そして住所と名前が書かれた手紙が入っていた。
そして迎えた阿波おどり当日。
穏やかな眉山のもと、盛り上がる街、人。
咲子は龍子を熱狂の阿波おどりへと連れ出す。
咲子の想いは。そして龍子の想いは・・・。
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