仲間由紀恵主演
「ナツひとり」
-届かなかった手紙-




STORY




昭和十二年春。

北海道で農業をしていた高倉忠次の家族は、
神戸から移民船に乗り、ブラジルへ渡ろうとしていた。

三年間必死に働けば、日本に戻って広い畑を買えると考えたのだ。




忠次の妻は十年前この世を去り、忠次が連れているのは、
息子二人とハル(十四歳)とナツ(十二歳)の娘二人。

しかし、ナツは眼病のトラホームと診断され、
北海道の本家に戻るが、伯母高倉カネはナツを厄介者扱いしてこき使う。

必死に働きながら、ナツは姉のハルと約束した手紙を
ブラジルに向けて書き続けた。

しかし、一度もブラジルから返事は届かなかった・・・




昭和十四年夏。

辛い暮らしに耐えかねたナツは、高倉家を飛び出したものの、
札幌郊外の村で倒れてしまう。




行き倒れになったナツが助けられたのは、
牛飼いの沢岡徳治の家。

徳治は「北王牧場」の主で、牧場には川村勉が働いており、
北海道大学の学生中内金太も牛飼いの修行をするためにやってくる。

徳治はナツを高倉家に送り届けようと考えるが、
絶対に戻りたくないというナツの必死の訴えに心を動かされ、
徳治の農場でナツは働き始める。




その年の暮れ。

徳治は高倉家に赴き、
忠次の兄与作にブラジルから手紙がきていないか尋ねるが、
一通もきていないという返事。

しかし実は、手紙は届いていたのだ。

忠次が帰国すると約束した三年が経っても何の連絡もなく、
昭和十六年の秋がきた。

金太の調べで、ナツが手紙を出し続けたブラジルの農場には、
ナツの家族はいないことが判明する。




その年の十二月、対米開戦。

昭和十八年には金太にも赤紙が届き、
金太は広島の実家に帰ることになる。




徳治が亡くなって二年後の昭和二十年夏、
ようやく戦争が終った。

南方戦線に行った金太の行方は分からず、
ナツは勉とともにチーズをつくって闇市で売った。

客の進駐軍の日系人中尉ジョージ・ハラダからもらった
クッキーのおいしさに驚嘆したナツは、
ジョージに教わってクッキーやケーキを売り出す。

そして、ナツはジョージと婚約する。




昭和二十三年五月、ナツは札幌市内に工場を建てる。

そしてそこに復員した金太が訪ねてくる。

ナツは金太にも工場で働くように誘うが、
原爆で母と妹を失った金太はジョージと一緒に
働くことを拒んで去っていく。

ジョージが帰国しなければならないことがわかるが、
ナツは自分の子をアメリカ人にすることを拒み、
ジョージは一人で帰国する。




やがて照彦を産み、勉と結婚する。

ナツが社長を務める北王製菓は、昭和三十二年に本社を東京に移し、
昭和三十四年には創業十周年を迎える。

仕事に打ち込むナツとは対照的に、
東京になじめない勉は競艇にはまり、
暴力団に借金をする始末。




創業十周年のパーティーが終った後、
勉はナツに北海道に帰って牛飼いに戻ることを告げる。

ナツには北王製菓だけが残った。




盛大に創業二十周年を迎えた昭和四十四年春。

広島の農業高校で教員をしていた金太が
突然ナツのもとに訪ねてくる。




歳月は流れ、平成十四年の夏。

東京銀座にある北王製菓本社ビル前は、
大勢の報道陣でごった返している。

札幌工場で製造された洋菓子の一部に、
賞味期限切れの材料が使用されていたことが週刊誌で報道されたのだ。

今は社長の座にある照彦は、
報道は事実無根であると断言して何とか報道陣を振り切る。




会長であるナツの部屋で善後策が話し合われるが、
知らぬ存ぜぬで通すことになる。

一人残されたナツだったが・・・。




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