西郷輝彦主演
「どてらい男」
どてらいヤツ
STORY
-立志篇-
昭和十年秋。
金へんの町大阪を目指した若者がいた。
福井県三方村で貧乏百姓の子として生まれたその若者は、
立売堀にある機会工具の卸商前戸商店で働く丁稚、
山下猛造である。
前戸商店は猛造と同じ出身の前戸文治郎という人が作った店で、
今は三代目である。
毎年一人は同郷の若い者を採る習わしで新米丁稚になった猛造。
店では掃除の毎日。
去年採用された、同じ出身の丁稚、尾坂と働いていた。
新米丁稚に似合わぬ型破りな猛造の言動は、
先輩たちの反感を買う。
社長の前戸も面白く思っていないのだが、
猛造に、前向きな気持ちを見いだし庇うのは、
先代の社長の妻のぶであった。
店で扱う商品は輸入工具で、英語で書かれていた。
小学出の猛造には、歯が立たない。
この店一番の売り上げを誇る外交課長の竹田は、
何かと馬鹿にして、いじめていた。
猛造に関心を寄せる、のぶの娘弥生は、
英語を丁寧に教えるのだった。
そんな優しい弥生が、あの竹田と結婚するらしい。
弥生の叔父でもある前戸は、店のために、
竹田を婿養子に入れたいのだ。
のぶの計らいで、夜学に行くことになった猛造と尾坂。
夜学通いが気にくわない竹田の嫌がらせがきっかけで、
立売堀界隈で外交の神様と言われ、
将軍の異名を持つ老人、大石と出会うことに。
弥生と竹田の結婚を止めたい猛造は、
とんでもない約束を社長から取り付ける。
三ヶ月で竹田の二倍の売り上げを取れたら、
縁談を中止するというものだった。
外交は全くの素人の猛造。
竹田の画策の中、必死の努力と、将軍の力添え、
尾坂の協力で、どうにか約束を叶えるのだった。
-戦乱篇-
その後竹田は店をやめ、
前戸商店の売り上げは猛造の肩に掛かっていく。
世の中は太平洋戦争に突入。
店をもり立てる猛造であったが、前戸社長の器量では、
自分が育たない事を知り、お礼奉公を一年加えた後、
独立することとなった。
一方、尾坂は前戸商店の支配人になる。
独立するために一軒の空き店を見つける猛造だが、
前々から面白く思っていない社長と、
店を辞めたはずの竹田が手を組んで妨害する。
独立に協力する大石は、
それを知り社長達にねじを食らわせ猛造を助けるのだった。
山全商店、それが新しい猛造の店である。
新入社員も居るが、孤軍奮闘の毎日。
仕事で東京に出張していると、
猛造の母よねが訪ねてくる。
赤紙を持ってきたのだ。
しかも、嫁まで決めてきたと言う。
尾坂の手配で知らせを受け取る猛造。
明日入隊と言う日に戻って、
一晩限りの嫁になってしまうかもしれぬ花嫁の茂子を
簡単にもらうわけにはいかなかった。
しかし、お国のためという在郷軍人会の支部長に押しきられ、
祝言をあげる。
その晩、茂子に愛情を持てば持つほど、
猛造は自分の考えをやはり曲げることはしなかった。
一人部屋を出ると、雪の舞うなか眠れぬ夜を過ごすのだった。
出征兵士となった猛造であったが、
軍隊特有のいじめが横行する中を、
機転を利かして切り抜け、帰京がかなう。
茂子との新婚生活の中、山全商店は猛進する。
が、ここにきて再び召集令状がくる。
大石が壮行会を開くという。
猛造の告別式に見立てたものだった。
立売堀から一人また一人と商人が出征兵士となって出て行く。
大石にとってこれは立売堀の告別式でもあり、
また自分の死の予感してのことだった。
沖縄で終戦を迎えた猛造は、馬方という元コソ泥の同僚と復員する。
焼け野原となった大阪で偶然、
母親と父の篤作と尾坂に出会う。
そこで知ったのは、
茂子は猛造が戦死したものと聞かされ親戚に再婚を迫られて、
城崎に行ったことだった。
-激情篇-
城崎で茂子の行方を探す猛造と馬方。
今日が結婚式だという。
やっとの事で式場になる旅館曼陀羅館の女将きよに出会う。
茂子の結婚相手は、義一という男で、
前々から茂子に気があったらしい。
叔父の石川の祖父の義太郎も面倒になことになる前に
さっさと式を挙げてしまいたいらしい。
茂子から今度の結婚のいきさつを聞いたきよは、猛造と会わせる。
終戦後、猛造の戦死の知らせを聞いた茂子は
死んだも同然になってしまう。
実家のクリーニング店で父も体を痛め、
立ち行かなくなった時に、生活の面倒を、
みてくれた恩人が義一だったという茂子。
「逃げては負けです」と諭すきよ。
披露宴で新郎新婦のあいだに立つ猛造。
自分にとって代え難い財産を返して貰うかわりにと、
全財産を義一に贈り承知してもらうのだった。
心機一転、一文無しからやり直すために住み込みで働く先を探した。
茂子はもう一度、三方村で嫁と認めてもらうまでと実家に行った。
面接を受けに行った先は、中西弥商店という。
かつて大石は攻めの神様と言われたが、
ここには守りの神様が居た。
支配人の吉良である。
先代主人の娘陽子の目にとまった猛造は、店に勤めることになる。
猛造はっここで守りの人生哲学を十分に教えられる事にはる。
その後、再び立売堀に大きなビルまで持つようになった猛造の人生は、
順風満帆に見えたのだが・・・。
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