松平健主演
「弁慶」
べんけい
STORY
長寛二年【一一六四】
平家が源氏を打ち破った保元の乱から五年、
平家は天皇家と縁戚関係を結ぶことで
ますますその勢力を強固にしつつあった。
今日も後白河家法皇は、高倉帝の中宮として入内が決まった
清盛の娘徳子を伴って熊野詣、華麗な行列で山路を行く。
そしてその行列に怒りの眼を向けるのは傀儡の太平。
代々、源氏の恩を豪って来た播磨の傀儡の棟梁である太平は、
平家の勢力拡大を阻止しようと徳子の誘拐を企てるが・・・。
その企ては見事に失敗、
徳子の身代わりにしようとした少女の誘拐も、
突然現れた怪力の少年の妨害で失敗に終る。
しかし、熊野でのこの少年との遭遇は、
それからの太平の人生を大きく変えることになる。
熊野別当弁証の息子であるその怪力の少年こそ、
後の武蔵坊弁慶その人だったからである。
十年後・・・。
弁慶は播磨の書写山円教寺にいた。
文武両道に優れた才能を持ちながら、
そのあまりに純粋な理想のために比叡山を追われ、
西国各地に修行の場を求めて彷徨した挙句、
やっと辿り着いた書写山だったが、
ここでも又弁慶は信濃坊を初めとする他の僧たちと反りが合わず・・・。
結局、放火の濡れ衣まで着せられて、
逃げざるを得なくなるのだったが・・・。
熊野から弁慶の成長を見守り続けてきた太平と、
奥州の藤原秀衡の腹心である金売吉次は、
そんな弁慶を励まし、
平家の世を覆すと豪語する弁慶の見方になる事を誓うのだった。
やがて平家転覆の待望を果たすべく京に上った弁慶は、
思いがけない偶然から、
かつて熊野で傀儡の手から救った少女に再会する。
清盛の娘の遊び相手だった少女は美しく成長し、
今は中宮となった徳子の側近く仕える女房・玉虫へと変身を遂げていた。
幼い日の思い出は忽ち激しい恋へと変わるが、
片や平家転覆を狙う荒法師、
片や平家の姫に仕える女房・・・。
弁慶と玉虫の恋は、
その初めから激しい波瀾を予感させるものであった。
一方、待望成就の第一歩として、
五条大橋で通行人の太刀を奪うという暴挙に出た弁慶は、
図らずとも源氏の御曹司遮那王=後の源義経と出会うことになる。
義経の天狗切の秘術の前に自分の非力を悟った弁慶は、
義経に仕える事を決意、その後を追うが・・・。
その後姿を見送る傀儡女ほくろの心には弁慶への思慕、
仲間のむじなやえくぼは、身分違いの恋を揶揄するが、
ほくろの恋はますます激しく燃え上がる。
同じ頃、御所の玉虫は、邪まな恋に悩まされていた。
玉虫の美貌に魅せられた平維衡がしつこく迫って来たのである。
硬骨漢、平知盛の機転で危機は免れたものの、
維衡の邪恋は止みそうになく、
玉虫は弁慶の面影を胸に抱きつつそれに耐えるしかない。
やがて弁慶は義経の郎党となる事を許されたものの、
主人と頼む義経は平家の追求を逃れて吉次と共に奥州へ・・・。
京の都で平家の動向を探れと命じられた弁慶は、
任務遂行のかたわら山科に小屋を建て、
訪ねて来た玉虫と愛の一夜を過ごすのだったが・・・。
その一夜が二人にとって人生の大きな転機になる事は、
弁慶もまだ知る由もなく・・・。
ましてこの先、
歴史の波が何処へうねって行くのかは更に判る筈もない・・・。
果たして平家の世を覆すことはできるのか。
義経と弁慶主従はどんな運命をたどるのか・・・。
義経が伊勢三郎、片岡経春ら郎党たちと共に源平合戦を戦うのも、
最愛の人静と巡り合うのも、まだ先の話・・・。
弁慶が安宅関で富樫入道家道、次郎家経の父子を対面するのは、
そのまた先の話である。
時代は変る。世は移る・・・。
過ぎ行く時は止められぬ・・・。
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