明治座10月公演
西郷輝彦芸能生活40周年記念
「江戸を斬る」
〜思い出に咲いた恋〜
STORY
芝・増上寺の裏で付け火による火事があった晩のこと。
日本橋の大店・木曾屋に盗賊が押し入り、
奉公人を皆殺しにして金を奪い去った。
いつのもように遊び人の金さんに姿を変えて現場を見に来た
北町奉行・遠山金四郎(西郷輝彦)は、
壁に残されていた「十六夜組参上」の貼り紙に衝撃を覚える。
幸い主人の豪右衛門(小沢象)と
女房のおしま(詩笛たつき)は本所の寮に泊まっていて難を逃れたが、
盗賊の残忍な手口に江戸の庶民達は震え上がった。
金四郎はさっそく役宅に、芸者のお志乃(大空眞弓)を呼び寄せた。
金四郎とお志乃は気心のしれた幼なじみで、
金四郎の妻ゆき(三原じゅん子)も姉のように頼りにしている。
金四郎は家督を継ぐ前、
家を飛び出して無頼の徒と交わっていた時期がある。
そのときに十六夜組の頭・吉五郎(滝田裕介)と知り合い
世間の様々なことを教わった。
当時の十六夜組は非道なことは決してせず、
盗んだ金を貧しい人々に分け与える義賊だった。
金四郎が武家の出とわかり、
吉五郎は自分が足を洗う代わりに金四郎が武家に戻る
という約束をかわし江戸を去った。
この10年は便りも途絶えていたが、
今回の事件に絡んで斬るのが十六夜組だとしたら
吉五郎が江戸に舞い戻っている可能性があると、
その顔を見知っているお志乃にさりげなく事情を話すのだった。
金四郎とお志乃は、以前に吉五郎が簪職人として
店を構えていた不忍池の界隈み目星をつける。
果たしてそこで、金四郎は吉五郎と
その娘・おのぶ(多岐川裕美)に再会する。
金四郎とおのぶは当時お互いに心を通わせ合っていたが、
その恋は成就しなかった。
おのぶは尾張に落ち着いてからは、
堅気となり手下の新吉と所帯を持ったが、
普請場の事故で新吉を亡くしていた。
吉五郎は木曾屋の一件をきっぱりと否定するが、
江戸へ出てきた理由は口を濁して語らなかった。
偽の十六夜組の正体を暴くため、
金四郎は吉五郎の手下で新吉の弟の誠吉(江藤潤)
とともに探索に走り、青柳文之進(山下規介)、
石橋堅吾(園田裕久)、お京(及川麻衣)ら奉行所の面々は、
木曾屋の競争相手である丹波屋の周囲に注意を向けていた。
数日後、上野の山で誠吉が何者かに刺されてしまう。
誠吉は「兄貴・・・」という言葉を残し、
所帯を持つ約束をしたばかりのおなつ(生稲晃子)
の目の前で息を引き取る。
弟分の死に、新たな怒りに燃え、事件解決を誓う金四郎。
誠吉が殺され、吉五郎は悲観にくれた。
事故死した新吉と殺された誠吉は、
吉五郎にとって実の息子同然だったのだ。
二人を弟のように可愛がっていた金四郎にとっても、
その悔しさは同じだった。
おのぶは漸く、江戸へ出てきた理由を語った。
彼女の夫だった新吉は、
尾張の木曾屋の普請場で材木の下敷きになり、
何の手当ても受けずに死んでしまった。
木曾屋の冷たい仕打ちに対して
なんらかの報復をしようと江戸に来たところ、
自分たちの偽物が出現し当惑していたのだ。
金四郎が新吉の死んだときの様子をさらに追及すると、
ひとりの人物が浮かび上がってきた。
やはり十六夜組の手下で、閻魔の要蔵(青山良彦)と怖れられた男だった。
何を考えているかわからない不気味さがあり、
おのぶを嫁にほしいと言った時も吉五郎は断っていた。
その要蔵は尾張に移ってからは、
木曾屋の番頭見習いとなり、
新吉が死んだときも最期を看取っていたのだ。
その頃木曾屋は、上野寛永寺の改修の入札を丹波屋と競っていた。
仕事を請け負った方が幕府御用達に推薦されるとあって、
主人の豪右衛門も必死だった。
番頭の源八(=要蔵)はそんな豪右衛門をうまく操り、
またおしまとも影でつながっていた。
要蔵は木曾屋と丹波屋双方の金を狙い、
その罪を十六夜組になすりつけようとしていた。
その企みに気付いたおのぶは単身木曾屋に乗り込み、
要蔵と対峙する。
金四郎が駆けつけたとき、
要蔵の執念は刃となっておのぶに降りかかる・・・。
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