NINAGAWAマクベス」




STORY




マクベスの運命が狂い始めたのは、三人の魔女と出会ってからだった。




戦の帰り道僚友バンクォーと荒野を通りかかった時、
魔女たちはマクベスは近いうちにコーダーの領主となり、
後に国王になるだろう、そして、
バンクォーは国王を生み出す者になると告げた。

魔女たちは消え、呆然としているマクベスのもとに、
マクベスをコーダーの領主にするという国王の決定を使者が伝えに来る。

第一の予言の的中に、第二の国王になると言う予言に対して、
マクベスの中で様々な思惑が沸き上がってきていた。




 奇しくもそれに対応するように、状況もたちまち急展開となる。

国王ダンカンが、マクベスの館に泊まるというのだ。

マクベスにとって願ってもいない僥倖。

この機会を逃しては一生国王になれぬかもしれないという
マクベスの迷いに決断を下したのは、妻であるマクベス夫人だった。

国王殺害を決意したマクベスは国王を殺し、
酔いつぶれた二人の護衛に罪をきせ、斬り捨てる。

さらに万全を期して、予言を知ってるバンクォーすら、抹殺した。

すべてをうまく取り繕ったマクベスだが、
逃げ出したバンクォーの息子のことだけが気がかりだった。




 ついに国王の地位を手に入れたマクベスだったが、
罪の意識と不安感に悩まされ不眠症となってしまう。

即位の席でバンクォーの幻影に取り乱し、マクベス夫人にとりなされる。

マクベスは、つのる不安にさいなまれ、
すべての元凶である魔女のもとを再度訪れもう一度自分の運命を予言させた。

それによると、ふもとのバーナムの森が動き出さぬ限り絶対に滅びず、
女が生んだ者にはマクベスは倒せぬ、という。

この世ではあり得ない不可能なことに、
マクベスは満足し我が身の安泰を信じた。




 その時、先代国王の王子がマクベスを倒すべく旗揚げしたとの報が入る。

知らせを聞いても、マクベスはせせら嗤っていた。

あの予言がある限り、誰も自分を倒すことなど出来はしないと。

ところが、斥候が、バーナムの森が進撃してくると告げた。

そんな筈はない。しかし、それは事実だった。

敵は森に偽装して近づいていたのだ。

しかも、時を同じくして、やはり罪の意識で狂乱していた
マクベス夫人が死んだとの知らせが入る。

マクベスの揺るぎなかった自信は、もはや何も残っていなかった。




 敵将マクダフとの刀の勝負に敗れた
瀕死のマクベスの耳に意外な声が響いてきた。

マクダフは、母から生まれる前に、
月足らずのまま母の腹を切り裂いて出てきたというのだ。

すべては予言の通り、マクベスはあの魔女によって操られていたのだ。