長崎阿蘭陀年オリジナル音楽劇
MUSICAL DECIMA
「出島」




STORY




一八一二年九月、遠山左衛門尉景晋(近藤正臣)が
新奉行として長崎に赴任してきた。

その日は「くんち」の前日。

賑わう町を見下ろす高台には狂い咲く「しゃぎり桜」。

その木の下で騒ぎが起こる。

酔った侍に町娘りん(一色紗英)が絡まれたのだ。

庇ったのは旅の若者(山本太郎)。

大きくなる喧嘩騒ぎを止めたのは花街・丸山の遊女、
袖笑太夫ことお陽(木の実ナナ)だった。




彼女はオランダ人と日本人遊女の間に生まれた、二国の血を引く人間。

知性と教養・義狭心と人情に富む、「長崎の申し子」だった。




騒ぎが収まると若者は、「金四郎」という名だけを残して去っていく。

だが彼を待ち受ける男がひとり。

りんの婚約者松浦久之助を名乗る速水一学(若松武史)で、
彼はそれらしい理由を並べりんの兄、語学塾・崎陽書院を営む
吉雄権之助(石井一孝)の殺人を依頼する。




速水は実は薩摩藩隠密で、金四郎を景晋の息子と知り、
奉行失脚の為に金四郎を罠に掛けようとしていたのだ。




その頃、出島のオランダ商館ではカピタン(商館長)の
ヘンドリック・ドゥフ(渡辺忠士)
が新奉行との会見を前に悩んでいた。

当時オランダ国家はヨーロッパ全土を巻き込む戦乱の中で消滅しており、
それが景晋に悟られれば江戸幕府へと報告され出島の命運も尽きる、と。

だがお陽の「出島は、世界の窓。この出島にはオランダ国旗が翻っている」。

という言葉にドゥフは勇気づけられ、会見に臨むのだった。




一方、金四郎は企みに気付き、権之助を助けようとして逆に侍達に囲まれてしまう。

助けに入ったのは景晋。

乱闘の末、形勢不利とみるや罠を仕掛けた薩摩藩聞役の服部清蔵(山谷初男)が
登場し、侍は藩の名を騙る無頼と言い逃れその場を収めてしまう。

父子は久々の再会ながらも対立。

金四郎はひとまず崎陽書院の塾生となり長崎逗留を決めた。




翌一八一三年六月。

ドゥフを励ますため、お陽を始めとする遊女と崎陽書院の塾生たちによる
オペレッタが出島で上演されていた。

そこへオランダ船は擬装したイギリス船だったのだ。

長崎では一八〇八年、擬装したイギリス船フェートン号の入港を
許したことで、外国船打ち払い令を守れず時の奉行が自害した
「フェートン号事件」が起きている。

今回シャルロッテ号には前商館長のウィリアム・ワルデナール(三木敏彦)
も同行し、擬装をさらに完璧なものとしていた。




だが、ひょんな事からその擬装に気づいたお陽と金四郎、
崎陽書院の塾生達は、ドゥフと協力し悲劇を繰り返さぬよう、
長崎の町を戦火から守るため、
出航まで擬装を解かせぬ作戦を練る・・・。