ミュージカル
「ごんぎつね」




STORY






































書斎で原稿を書いている南吉を突然、不思議な幻想がおそいます。

乱舞する無数の黒蝶・・・。

美しく優しかった蝶はやがて一変して南吉を蜘蛛の巣へと追い詰めます。




我に返った南吉に、急にイメージが湧いてきます。

そして書き始めるのです。




その昔、ランプでひと儲けした男がいました。

しかし、やがて村にも電燈がつき、男は時代の変化を知るというお話です。


 


南吉の散らかした原稿を、女子学生たちが拾って読みはじめます。

家出をした男が、ある日、父親が大切にしていた
オルゴールを持ち出すのですが、
行きずりの少年にあげてしまうというお話です。



「誰にでも心のなかに箱がある。時々あけて夢を見る」。



南吉を囲んで、女子学生たちの話がはずみます。

「もうひとつ、話をしよう」と南吉。

次は、泥棒のお話です。

















































































かしらと釜右衛門、海老之介、百合丸の泥棒四人組。

花のき村にあるという千両箱を奪おうと思案しているところに、
村の祭り騒ぎが聞こえてきます。

手下の三人は様子を窺いに、村へと出かけていきました。




村では庄屋様の120歳の大往生のお祝いの真っ最中。

千両箱をとりにきたはずの三人ですが、まずは村の老婆の話を聞くことに・・・。

そのうち地蔵が歌いだすやら、踊りだすやら・・・。




花のき村はなんとも平和なのです。

千両箱は裏の井戸端に転がっているから、
持っていって良いと老婆は言いました。

しばらくすると、かしらのもとにまず釜右衛門が
大きな鐘を担いで戻ってきました。




千両箱を取りに井戸端へ行くと、その奥に寺があり、
釣り鐘を見た途端、昔、イカケ屋だった釜右衛門は、
その釣り鐘で村の人々に鍋釜をこしらえてやろうという
気持ちになってしまったのです。




つづく二人も手ぶらで帰還。

海老之介は幼稚園の先生に、百合丸は花嫁に・・・。

三人は泥棒稼業をやめて、村で暮らすと言い出す始末です。




かしらはあきれて、千両箱を自分一人で奪ってきます。

そして自分一人でも泥棒を続けると、去っていくのです。




南吉は女子学生たちにいいます。

「あいつのがここへ戻ってきた時、みんな笑って迎えてやることだ」

































































辺りは雪景色です。
ここは南吉の家の庭、南吉はまた新しい物語を始めます。




母ギツネと子ギツネが手袋を買いに、町の帽子屋へやって来ました。
子ギツネのあかぎれが痛むのです。

母ギツネはおまじないで、子ギツネの片方の前足を人間の手に変えます。

「こっちの手を出すんだよ」。

ところが子ギツネは、戸の隙間から間違えて反対の手を出してしまいます。

でも、優しい帽子屋のおじさんは、赤い手袋を売ってくれた、
というお話です。


































































 


そして、もう一つ、今度は別のキツネのお話です。

春が近づいていました。




兵十は病気の母に食べさせようと、川で大きなウナギを捕まえます。

ところがいたずらキツネのゴンが、ウナギを川へ逃がしてしまいました。

しばらくして、ごんは森の精チキサニから
「兵十のおっ母さんはもうじき死ぬ」
と聞かされ、大ショック。

自分の母親が死んだときのことを思い出したからです。




兵十のおっ母さんのためにウナギを捕ろうと考えた
ゴンの努力もむなしく、兵十の母が亡くなりました。

ゴンは兵十をなぐさめようと、イワシやナスなどを兵十の家に
投げ込むのですが、残念なことに、キツネの親切は人間には
伝わりません。

それでもゴンは健気に、なおも栗やマツタケを背に
兵十の家を訪れるのですが、いぶかしんだ兵十の仕掛けた罠にかかり、
銃で撃たれてしまいます。




ゴンの周りに散らばった山菜を見て、ゴンの親切に気づく兵十。

「おら、大切な友達を殺しちまった・・・」。

愕然とするのですが、もう取り返しはつきません。




「きみはぼくのともだち、ぼくはきみのともだち」。




歌声はやがてハミングとなり、彼方へと消えていきます。




南吉はいいます。


「ゴン、お前は死なない。お前は、この話を聞いた人たちの
胸に抱かれて、百年も二百年も生きる・・・
みんなの胸の中に生き続ける・・・」