ミュージカル
「マリー・アントワネット」




STORY




錬金術師、カリオストロが登場する。

あらゆる時代を旅する彼が、
もっとも栄光に浴していた時代を呼び出そうとしている。

愛と偽り、陰謀と貪欲、理想と残虐が混沌と渦巻く時代。

カリオストロは言う。

「ささいな原因ほど大きな結果を生む。」




1779年、フランスのパリ。

劇作家ボーマルシェ、ルイ16世、王妃マリー・アントワネットが現れる。

パリでは人々が飢えと貧困に苦しみ、
生き地獄のような日々を送っていた。

そこに、スミレを売る娘がひとり。

孤児として生まれ、希望を抱くことをしらないマルグリット・アルノー。

王妃マリー・アントワネットと同じM.A.のイニシャルを持つが、
二人の人生に何の共通点もない。




マルグリットは、通りがかった劇作家
ボーマルシェにスミレを買ってもらう。

しかし代価として彼女が受け取ったのは、ブリキのニセ金だった。

キャンドルが煌々と輝くパレ・ロワイヤルの大広間では、
国王の従兄弟であるオルレアン公主催の
舞踏会が盛大に開かれている。




アントワネットは、スウェーデンの貴公子、
フェルセンとダンスに興じている。

マルグリットは、自分を騙したボーマルシェを
追いかけて舞踏会にもぐり込んだ。

そこに王妃がいることを知った彼女は、
貧しい者たちを助けて、と懇願する。

しかし、返されたのは、救いの手ではなく嘲笑だった。




パリの路上でマルグリットの目に映るのは、
命の瀬戸際をさまよう老人や子供たちの哀れな姿。

あの貴族たちこそ、この世の闇に目を向けるべきだという想いが
マルグリットの胸に突き上がる。

そんな街角で彼女は、昔、
修道院学校で世話になったしすたー・アニエスと運命的な再会をする。




ベルサイユ宮殿では、今日もアントワネットがドレスメーカーの
ローズ・ベルタンや宝石商らと、贅沢な品々を物色している。

財務総監は無駄使いを控えるよう忠告するが、
王妃はそれを聞き入れるばかりか、彼をクビにするようにと国王に迫る。

気の弱い国王は、妻の要望を拒絶できない。




実験室でカリオストロは、
フランスの歴史を大きく揺り動かす準備に忙しい。

まず彼は、路頭に迷ったマルグリットを
売春宿の女主人ラパン夫人に出会わせる。

ラパン夫人に食べ物を与えてもらったマルグリットは、
夫人の宿で働き始めることに。




アントワネットとフェルセンは、切ない胸の内を吐露する。

一方、カリオストロは、王位を狙う
オルレアン公とマルグリットを再会させる。




国王の鍛冶工房では、ギヨタン博士が新しい発明品を披露している。

最小の苦しみで首を落とせる新しい処刑道具、ギロチン。

国王とアントワネットは、自らの運命を知らずに、
その鋭い刃を興味深く見つめる。




1784年、パリ、シテ島のノートルダム寺院の前の市場。

人々は王妃をあざ笑う大道芸に群がっている。

突然、売春婦を経営した罰として、
ラパン夫人の公開鞭打ち刑が執行された。

命令したのは王妃本人。

その場に居合わせながら、恩人を救えなかったマルグリットは、
貧困のない自由な世界のために闘おうと、
民衆に向かってさけびかける。




アメリカ独立戦争に従軍するフェルセンが、
王妃に別れを告げに来る。

嘆き悲しむ王妃に、民衆の苦しみを和らげ、
愛される王妃になってほしいとフェルセンは告げる。




国民の間に王室への不信感が高まっていた。

オルレアン公は、カリオストロとボーマルシェに、
民衆を煽動して王妃を失脚させるよう依頼する。

カリオストロは魔術を使い、
ロアン大司教とその愛人ラ・モット夫人、
宝石商ベメール、そしてマルグリットを操って、
かの有名な首飾り事件を起こす。




1785年8月15日、ベルサイユ宮殿。

大勢の貴族たちの前で、アントワネットは、
高額な首飾りが自分の名を騙って購入され、
行方知れずであることを知らされる。

身に覚えのない王妃は、
すべては自分を陥れようと仕組まれた罠だと主張。

事件に関与したロアン大司教とマルグリットを逮捕する。




1786年5月31日。

パリ高等法院で首飾り事件の判決が下される。

ロアン大司教は無罪となり、
王妃に対する国民の不満は一気に頂点に達する。

釈放されらマルグリットは、群衆に向かって、
「倒すべきは、王妃だ」と呼びかける。

アニエスは、人を傷つけることでは何の解決も得られないと
マルグリットに諭すが、マルグリットは聞く耳を持たない。




1789年5月。

聖職者、貴族、市民の代表が一堂に会し、
国の重要事項を議論する三部会開会の日。

ベルサイユの王室厩舎では、
皇太子のルイ・ジョセフが高熱にうなされている。

生まれながらに障害を持つ8歳の皇太子は、
アントワネットの願いもむなしく、祝祭の喧騒の中、夭折する。




国政への不満を爆発させた第三身分の市民たちが
国民議会を成立、バスチーユ事件と続き、
ついにフランス革命が勃発した。

マルグリットは、パリの貧しい女たちを煽動し、
ベルサイユ宮殿まで行進する。




宮殿では、アントワネットがフェルセンへの手紙を書いている。

そこへパリの民衆が乱入し、紛れ込んでいたオルレアン公により、
国王一家はパリのチュイルリー宮殿へ連行される。




ローズ・ベルタンの店では、
移り変わりの激しい政情と経済についての話が盛り上がり・・・。

過激な政治結社ジャコバン党の集会。

背後で糸を引くカリオストロのもと、
オルレアン公は、マルグリットを召使いとして王妃のもとに送り込み、
動向を探らせることを提案する。

マルグリットは王妃の召使いとして働き始める。

1971年6月20日、フェルセンが準備した
逃亡計画によって国王一家は馬車でオーストリアを目指すが、
国境近くのヴァレンヌで収監される。




国王一家は、パリのタンブル塔に幽閉されている。

ルイ16世は、息子に自らの心情を語りかけ、アントワネットは、
フェルセンへの手紙をマルグリットに託している。

そこへロベスピエールがやってきた。

「市民ルイ・カペー」と呼びかけ、王政が廃止されたことを告げる。




タンプル塔では、フィリップ・エガリテ
かつてのオルレアン公が暴徒たちを率いている。

一触即発の空気の中、
マルグリットとアニエスはフェルセンと再会する。

王妃からの手紙がラブレターではなく、
フェルセンに王室救援を命令するものであることを知り、
フェルセンは衝撃を隠しきれない。




1792年、ルイ16世が処刑される。




マルグリットの計らいで、
アントワネットはフェルセンとつかの間の時間を共にする。

「私のことは忘れて」と、フェルセンに別れの言葉を告げたばかりの彼女は、
ロベスピエールの手により、
息子のルイ・シャルルからも引き離されることになる。




1793年10月15日。

アントワネットに対する審理が行なわれた。

証言台に立ったマルグリットは、王妃からの手紙の受け取りを否認するが、
結局は、侮辱的な容疑がでっちあげられ、アントワネットの死罪は確定する。




パリの革命広場。

お祭り騒ぎのような熱狂の中、
アントワネットは断頭台の露と消える。

群衆の中に、マルグリット、アニエス、カリオストロ、ボーマルシェがいる。

やがて人々はそれぞれ声を挙げてゆく。

「愛のない暗闇に、自由という光はない。

愛が生むのが自由。自由!」