STORY




 
1898年9月10日、ジュネーブ・レマン湖のほとりで、
オーストリア皇后エリザベートが暗殺された。

暗殺者の名は、イタリア人無政府主義者、ルイジ・ルキーニ。

逮捕されたルキーニはその後、独房内で首を吊り、自らの死を選んだ。
だが、死してもなお、彼を問い続ける声は止むことがない。

「なぜ、エリザベートを殺したのか?」




闇に閉ざされた世界で、ルキーニはエリザベートの物語を語り始めた。

かつて彼女とともに生きた人々が次々と蘇る。

そしてそこには、”死”とも呼ばれる黄泉の帝王・トートの姿も・・・。




エリザベートの父、マックス公爵は堅苦しいことに縛られることを嫌い、
自由を謳歌する人であった。

エリザベートはそんな父をこよなく愛し、
マックスも娘をかわいがった。
(パパみたいに)




そんなある日、エリザベートはブランコから落ち、意識を失ってしまう。

すべての死を司るトートの手によって、
エリザベートの生命も断たれるはずだった。

だが、彼女の魂に触れた瞬間、
”死”はただの人間であるはずのエリザベートを愛してしまう。

運命的な出会い・・・トートは彼女の生命を奪わなかった。
(愛と死の輪舞)




エリザベートと運命的な出会いをする男がもう一人いた。

オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフである。

アルプスの麓にあるバートイシュルで、二人は出会う。

この日は元々、フランツとエリザベートの姉ヘレネの見合いの日であった。

フランツの母である皇太后ゾフィーとエリザベートの母ルドヴィカの姉妹によって
準備された縁組みであったが、二人の目論みははずれ、
皇帝はエリザベートを愛してしまった。
(計画通り)




二人は婚礼の日、闇から姿を現したトートは、エリザベートに迫る。

いつかお前を奪いにくると。
(最後のダンス)

トートが去ったあと、エリザベートはフランツにすがり付く。

彼女の最大の味方であるはずの夫に・・・。

しかし、すべては彼女の予想とは違っていた。

婚礼の翌日から、ゾフィーによる皇后教育が始まり、窮屈な宮廷生活が強いられた。

自由を求める彼女にとってそれは耐えられないことであった。
(私だけに)









それから、エリザベートにとって、戦いの日々が始まる。

生まれた子供はゾフィーに奪われ、多忙な夫とは相容れるところがない。

フランツは確かに彼女を愛していたが、もともとの育ちが違うためか、
その思いは妻には届かない。

つねに孤独に包まれていると感じていた彼女だが、
ある日、その美貌を武器に反撃を開始する。

自分の要求が如何したら実現できるかを彼女は知り始める。
(美貌の皇后)




宮廷内の確執の一方で、ハスプブルク帝国の崩壊を示唆する動きが随所で起こっていた。

ハンガリー独立を目指すエルマーら若き革命家は、
オーストリア内の反体制派と組んで、地下活動を行い、
(退屈しのぎ)




街では民衆が、ミルク不足に怒りの声を上げていた。

幼い赤ん坊が飢えている現実を余所に、宮廷はミルクを独占していた。

皇后の美しさを保つため・・・、
ミルク風呂に彼女を入れるために・・・。
(ミルク)




1867年6月8日、フランツとエリザベートはハンガリー王冠を戴く。

この頃には、エリザベートの発言力は強くなり、
皇帝は母ゾフィーよりも皇后の言葉に耳を傾けるようになった。




その一方で、息子ルドルフは、多忙をきわめる母親と一緒にいることを許されず、
いつもひとりぼっちにされていた。
(ママ、何処なの?)

失墜したゾフィーと腹心たちは、フランツの目を皇后からそらし、
再び実権を握るべく皇帝にワナをしかける。

娼婦の館を訪れた重臣達は、一人の病気持ちの娼婦を連れて帰る。
(マダム・ヴォルフのコレクション)




やがて、エリザベートの体にも変調がきたされる。

それが、皇帝の裏切りが原因だとトートに教えられ、
彼女は絶望の淵に追いやられる。
(夢とうつつの狭間に)




そして、皇后の放浪の旅が始まった。

宮廷から逃れたい一心で、あらゆる地を旅する。

フランツは後悔の念と悲しみに包まれ、
ルドルフは、母の放浪を父の責任だと責め立てる。

他にも、ルドルフは意見の食い違いからフランツと衝突することが多くなった。

世には民族主義が台頭し始め、国の将来を憂うルドルフは苦悩する。
(闇が広がる)




その後、年老いた皇帝夫婦は再会を果たすが、
最後までお互いを理解することが出来なかった。
(夜のボート)




そして今や確実に、ハプスブルクは崩壊へと向かっていた。
それは、エリザベートにとって、真の自由を得ることを意味するのだろうか?