サウンド・オブ・ミュージック
The Sound of Music





STORY




1938年、ナチスドイツが巨大な力をもって近隣諸国を蝕み始めていたが、
大自然に囲まれた、ここオーストリアの町ザルツベルグは、
まだゆっくりと時が流れているようだった。




マリア・ライナーはこの町にあるノンベルク修道院の修道尼見習い。

幼い頃から修道女に憧れて入ったものの、山歩きと、
歌を歌うことが何よりも好きな余りに、失敗することもしばしば。

沈黙を守らねばならない時につい歌ってしまったり、
山に散歩に出たまま時間を忘れて門限に遅れてしまったり、
数え上げたら際限がない。




幹部の修道女達は心配を通り越してキリキリ舞い。

シスター・マルガレッタだけが根気よく
親身になって指導するのだが余り効果は上がらない。




ある日マリアは修道院長のオフィスに呼び出される。

院長は、いつまでたっても自由奔放なマリアに
もっと大人の女性としての人格を形成する方法を考えていた。

マリアは修道院こそが人生のすべてと一途に思っていたのだが、
院長は彼女は外の世界に触れた方がよい考え、その機会を与える。

元海軍大佐のフォン・トラップ家の家庭教師。

修道院を離れたくないマリアだったが、これも主のご意志と受け入れ、
ギターケースと小さなボストンバッグを持って、トラップ家に乗り込む。




トラップ家の子供は7人。

十六歳の長女リーズルを頭に、長男・フリードリッヒ、
次女・ルイザ、次男・クルト、三女・ブリギッタ、
四女・マルタ、五女・グレーテル。

リーズルは密かに電報配達のロルフとの淡い初恋に胸をときめかせている。




7人の子供の母親は既に亡く、トラップ大佐の
軍隊ばりの教育方針は子供達の自由を束縛していた。

マリアが何より驚いたのは、名前を呼ばずに笛のシグナルで子供達を呼ぶこと。

その上、執事のフランツ、家庭教師のシュミット夫人に至るまでシグナルで呼びつけられる。

大佐は留守がちで、子供達は親に構って貰えない寂しさから悪戯ばかり、
家庭教師が長続きした試しがなかった。




しかしマリアの優しくユニークな教育は子供達に心を開き、
ひと月後、大佐が戻ってきたときには皆、
歌の好きな、元気な性格に変わっていた。




大佐はウィーンから婚約者のエルザ・シュレーダーと
友達のマックス・デトワイラーを連れて来ていた。

エルザはお金持ちの未亡人。

都会の生活しか知らない彼女にとってここの空気と景色は何より魅力的だった。

マックスは、ちゃっかり屋だがチャーミングで憎めない男。

世界を股に架ける音楽会のプロデューサーで、
この予断を許さぬ時勢に出演団体を集める事に躍起になっている。




泥んこになって外を駆けずり回る子供達を目の当たりにした大佐は
雷を落とすが、マリアは必死で彼らを庇う。

そんな時、子供達がエルザをマリアから教わった歌で歓迎する。

大佐は音楽を禁止していたが、自分の子供達の歌う声に感動し、心を開く。

何年もの間、心の交流のなかった父と子供達が、
今、マリアの努力によって仲直りができたのだった。




数日後、トラップ家はエルザを紹介するため、パーティーを開いた。

知人・友人たちが多数集まったが、社会情勢の派閥が
こんな所に迄災いし、空気は気まずくなる。

そんなことはお構いなしの子供達は初めて出るパーティーに夢中。

クルトはマリアにダンスをねだる。

二人で踊っていると、大佐が現れ、クルトと代わる。

ダンスの途中から、マリアは不意に言葉では言い表せない感情になり、
踊りが終わると部屋に退がる。




その後、エルザの計らいで客たちに子供達の歌を披露する。

外に飛び出して人探しばかりしていたマックスは吃驚仰天、
灯台元の金の卵発見に有頂天。

そんな皆の態度を尻目にマリアは一人だ黙って修道院に帰るのだった。

初めての恋の感情に戸惑うマリアは院長に縋る。

院長は、恋愛感情を排除するのではなく、
その問題に立ち向かうように彼女を諭す。




一方、突然マリアが消えてしまったトラップ家は
何事もぎくしゃくして上手くいかない。

子供達は元気が出ない。

マックスは長い物に巻かれろ的考えで、愛国主義の大佐を逆なでする。

大佐とエルザも意見が食い違い、互いに結婚に見切りをつける。




再びマリアがトラップ家に戻った時、マリアと大佐はお互いの心をみつめ合うことが出来た。

そして二人はめでたくウェディング・ベル。

しかし皆の祝福に包まれて幸福の絶頂のトラップ家にも、
ナチスの魔の手が少しづつ迫って来ていた。