「汚れた英雄」
- THE LAST HERO -
STORY
全日本選手権ロードレース第8戦、
メインレースの国際A級500cc決勝戦を迎え、
SUGOのサーキットは興奮のるつぼ。宿命の対決!
北野晶夫と大木圭史、それは、
プライベート・チームとファクトリーとの対決であった。
晶夫が96点で1位、2位に連続チャンピオンを狙う
大木がYAMAHAの期待を担っていた。
3位は売出しの若手ライダー鹿島健がつけていた。
スタート!いつものように晶夫が飛びだし、
9周目にはコース・レコードを叩き出す好調さ、
本場ヨーロッパ仕込みのテクニックは健在であった。
だが、ラスト1周の直線で大木に抜かれ、
一輪差で敗れた。
敗因は、マシーンの差。
ファクトリー・チームの技術と組織の差でもあった。
ともあれ、これで晶夫と大木が同点で、
2週間後の最終戦に勝負はもちこされた。
晶夫は、すぐさまチーム<KITANO>のメカニック雨宮に、
マシーンのチューン・ナップを命じた。
来るべき日本GPこそ、個人の力で世界を制す、
栄光へのステップであった。
マシーンにすべてを賭ける晶夫に惹かれてついてきた雨宮と
かつてのライダー仲間である緒方は、
全力でチューン・ナップに挑む。
緒方の妻で、チーム・マネージャーのあずさ、
それにあずさの息子和己を加えて、
いま、チーム<KITANO>は、2週間後に向けて始動した。
プライベート・チームを維持するには莫大な金が要る。
北野晶夫のもう一つの顔は、
恋のライダー即ち“ジゴロ”であった。
天性の美貌と強靭な肉体、
そして華麗なセックス・テクニック。
これらが、栄光へと昇りつめていくための晶夫の大きな武器だ。
すでに国際的なデザイナー斎藤京子が、
スポンサーとして居たが、
新たに財閥の令嬢・御木本菜穂子に近づき確実にモノにした。
しかし、まだ世界を狙うには金がいる。
折から来日したクリスティーン・アダムスに的をしぼった。
10億ドルの遺産を父親から受け、
国際的なコングマリットのオーナーである彼女のことは、
ヨーロッパですでに知っていた。
パーティで再会し、晶夫の誘惑にクリスティーンも難なく陥落、
セックスの代償に10万ドルの小切手をモノにする。
恋のライディングは、着々と成果をあげたが、
肝心のマシーンの性能アップは、思うように進んでいなかった。
メカの雨宮は、女の事で、作業をスッポかした。
その為、晶夫は雨宮を解雇してしまう。
この時から、晶夫は、自ら徹夜でマシーンに取りくみ、
妥協をゆるさぬ孤独な鍛錬をくり返していった。
いよいよ、決戦の時が来た。
全日本選手権最終戦、国際A級500cc決勝レース。
北野晶夫、大木圭史、鹿島健、そして多くのライダーたち。
スタートが切られた。
「汚れた英雄」北野晶夫はつっぱしる。
ラスト半分!38周目、魔のヘアピンにさしかかる晶夫。
果たして、勝利の女神は?
晶夫か大木か、あるいは ・ ・ ・ ・ ・ ・。