THE BEATLES "LET IT BE"



原題:The Beatles “Let it be”
1970年制作:イギリス映画、配給:ユナイト

スタッフ
監督: Michael Lindsay Hogg マイケル・リンゼイホッグ
製作: Neil Aspinall ニール・アスピネル
撮影: Tony Richmond トニー・リッチモンド
     Les Parrot レス・パロット
     Paul Bond ポール・ボンド
編集: Tony Lenny トニー・レニー
録音: Peter Sutton ピーター・サットン
     Roy Mingaye ロイ・ミンゲイ
     Ken Reynolds ケン・レナルズ

出演
Paul McCartney ポール・マッカートニー
George Harrison ジョージ・ハリソン
Ringo Starr リンゴ・スター
John Lennon ジョン・レノン
Yoko Ono

店長は公開当時、目黒区とはいっても渋谷駅に近い大橋と言うところに住んでいましたので渋谷の映画館でこの映画を観ました。

この映画はご存知のとおりビートルズの最後のライブ演奏を記録した映画です。
この頃のビートルズの状態と言えば1968年4月にスタートしたアップル社が既に経営不振で休業状態でした。4人で企画して作ったものの、ほぼ、ほったらかしのアップル社は放漫経営による巨額の流出が続いたため、1969年1月ジョン・レノンが『このままの状態では、我々は6ヶ月後に破産する』と発表した程でした。

アップル社の経済的にも、ビートルズとして活動が急務でしたので、スタジオ・ライブの録音とその映画制作が企画されました。
このスタジオ・ライブ・アルバムのタイトルは「原点に戻る」という製作意図から「Get Back」とされ、映画を見ればわかりますがデビュー・アルバムのようにオーバーダビングを加えない「一発録り」で行なわれました。また、ジョージ・マーティンの提案で音に厚みを出すためヴォーカル・マイクは2本づつセットされ、ビリー・プレストンがキーボード・プレーヤーとして加わりました。
「映画」<クランク・イン>
1969.1.02 トゥイッケンナム・フィルム・スタジオ
1969.1.30 アップル社屋上ライブ「ルーフ・トップ・コンサート」
「映画」<クランク・アップ>

しかし、アルバム「LET IT BE」が発売され、映画の劇場公開がなされたのは1970年になってからでした。

この間に
1969年3月12日にポール・マッカートニーがリンダ・イーストマンと正式結婚。
1969年3月20日にジョン・レノンがオノ・ヨーコと正式結婚。

アップル再建に関してジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、リンゴ・スターの3人はミック・ジャガーが紹介してくれた元マネージャーのアラン・クレインに経営を委ねたいと考えましたが、ポール・マッカートニーは妻リンダの血縁のジョン・イーストマンにアップルの経営を委ねようと他の3人と対立してしまいました。

映画の前半部分のスタジオ録音では100曲以上の録音をしたにもかかわらず、これも映画を見ればわかりますが、おフザケで終っちゃっているのもあり、完成状態の録音は数曲しかなかったそうです。結局まともな録音は1月30日のアップル屋上での「ルーフ・トップ・コンサート」で、映画の後半部分(ビートルズにとって最後のライブ演奏)がそれで、これで「Get Back」というセッションは終了、映画の撮影もクランクアップしました。
映画のなかで、「 I've Got A Feeling 」のリハーサル中、ポールがジョージ・ハリスンのギターに注文を出す様子が写っていますが、実際には口論のようになったそうで、この日のことかどうかは分りませんが1月10日のムカッときたジョージ・ハリスンはセッション途中で帰宅してしまいました。その後ポールの謝罪によってジョージはスタジオに戻りましたが、メンバーの状態はこんな風でした。

このテープは気持の離れたメンバー全員に制作を放棄されたので、そのまま放置され、後にポール・マッカートニーに頼まれたジョージ・マーティンが(たぶんイヤイヤ)編集し、6月になってようやく「Get Back」というニューアルバムの発表がアップルからありました。
ところが映画の編集は手間取り、アルバムの編集も手間取り、ライブ仕立ての「Get Back」は発売が延期され、ケッキョク最終的に発売中止になってしまうのでした。

お蔵入りしたテープは1970年1月になって、ようやくジョン・レノンとアラン・クレインがフィル・スペクターにプロデュースを要請します。フィル・スペクターは70年1月、「Get Back」セッションのマスター・テープをもとに「LET IT BE」アルバムの制作に取りかかるのです。

という訳で、アルバムも映画も「LET IT BE」は1970年の作品になってしまうのでした。

この映画で好きなシーンのひとつ。
リンゴ・スターがピアノで「オクトパスズ・ガーデン」のリズムを弾きだすとジョージ・ハリスンが「こうしたほうがいいんじゃないか」と替わりに弾きだす。二人とも笑顔だ。そしてリンゴ・スターが弾き語りをはじめ、ジョージ・ハリスンがギターを着けるとジョン・レノンがドラムの前にすわり、足でバスドラを叩きながらタバコに火をつけている。そこへ、ポール・マッカートニーが5才くらいの娘を連れてやってくる。この娘が皆の間をかけまわる。皆とても和気あいあいだ。

ジョージ・ハリスンが「アイ・ミー・マイン」を歌うシーンも好き。ジョン・レノンとオノ・ヨーコが歌に合わせてクルクルとダンスをする。シルエットで非常に美しい。

2003年12月、このときのテープから再編集されたアルバム「LET IT BE “NAKED”」が発売されました。

このCDは音質が映画(光学式サントラ)にくらべ素晴らしく良いのですが、以前のフィル・スペクター版もさほど悪くはないので、これから初めて買うと云うかたは、どちらを買っても良いと思います。
それより、映画の音質を改善してDVDの形でリリースしてほしいと思います。(以前はパイオニアからLDが発売されていた)
店長は最近、古いLDを(LDは観るのが大変なので)DVDに焼き直しました(パイオニアのDVR-77H使用、同じパイオニアだから許してね)。
これで、ビデオ屋のアップルでは惜しげもなく年末からお正月に観まくり聴きまくりました。実は「NAKED」も毎晩のようにかけまくっています。

渋谷の映画館でのこと
映画は前半がスタジオでのリハーサル風景主体。後半がアップル屋上でのルーフトップ・コンサートの模様。という構成ですが、それらにはさまるかたちで、ポール・マッカートニーのピアノで「LET IT BE」の演奏があり。次にやはりポール・マッカートニーがピアノで「THE LONG AND WINDING ROAD」を歌います。共にカメラ目線で引き込むように、切々と語るように歌います。

店長はどちらかというと後ろの方の席で観ておりましたが、少し前の席で観ていた若い娘さんがこのシーンのとき、とうとう感極まって「えーん」と泣き出して、よろよろと通路を前(画面)のほうに歩き出してしまいました。
友達と思う娘が、なだめに行き連れ戻しましたが、観客でこの娘を笑ったりしたものはいなかったと思います。
パンフレットや書物でも楽観的に書いて有りましたがファンならだれも、既にビートルズは崩壊していると知っていました。
そんな時代(時期)でした。

森高千里さんはビートルズ好きで有名ですが、彼女の名曲のひとつ「渡良瀬橋」のビデオクリップは映画の「THE LONG AND WINDING ROAD」のシーンをモチーフに作ってくれました。色調まで合わせてあるので、それとわかります。森高ファンの店長としてはまことに嬉しい限りです。



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