さよなら、ズリネタ

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失恋をしたのである。

けっこう前からウチのこの掲示板をご覧になっている方はご存知だと思う。俺が密かに想いを寄せている、会社のOLさんのことを。それはそれは生理が重そうなけだるい美人で、是非一度ファックをお願いしたいと常々思っていた。

もちろんそんな度胸はない。なにしろこっちはガンダムおたくの真性ヘナチン野郎である。そのくせプライドだけは人一倍高いから、自分が傷つくような行為はなにひとつしない。する訳がない。ひたすら自分に都合のいい妄想を膨らませ、日夜腰をヘコヘコさせて、シーツを汚すだけの毎日であった。

俺は各支店をグルグル回る仕事をしていて、だから彼女とは週1〜2度しか会わない。 ある日、いつものように自分に都合のいい期待にチンポを膨らませつつ出勤したら、彼女はいなかったんである。

「?」

まあ、よく生理痛で休む人だからな。ちょいと残念だが、また後日。しかし彼女のイスから、私物の座布団がなくなっていたのが引っかかった。ほどなくその謎はとける。もっともイヤな形で。

会社を辞めたのだそうだ。いきなり。突然。つい2日前まで、普通に仕事してたのに。つい一週間前まで、夏の予定がどうとかいう話をしていたのに。彼女のハンコが押された書類を処理しながら、混乱する頭を押さえるのが精一杯であった。

同時に耳に飛び込んでくる悪い噂。サラ金から電話がかかってきてたとか。辞めたのか辞めさせられたのかもよくわからない。いずれにせよ、普段から彼女と仲の悪かった連中の話だからねえ。とはいえ他に情報のない俺の脳髄には、「男に貢いでソープに沈められる彼女の姿」がフラッシュバックするのであった。

「どこの店だ!? そしていくらだ!?」

貴重なズリネタを失ったことは悲しい。その支店でのお楽しみがなくなったのも残念だ。でも昨日まで当たり前に仕事してた人が、ある日突然いなくなっても みんな知らん顔して何事もなかったかのように普通にしてることが、どうしても解せないのである。

子供みたいなことを言ってるなあ、と自分でも思う。確かに俺は、彼女が好きだったからね。でもそれは、大人ではあるかもしれないけれど人間ではないと思う。それが正しい大人なんだとしたら、俺はクソガキのままでいいや。昨日まで一緒に仕事してた人間が、理由はどうあれいきなり消えちまったんだ。そこで何の感情もわかない人間と、何の感情も表わせない人間と、俺は口なんか聞きたくない。 だって俺が消えても、きっと知らん顔で仕事してるんだろうから。

確かにその日は彼女が辞めた翌々日だったから、みんなはもう儀式を済ませてたのかも知れない。でもねえ。なんというかねえ。

彼女は美人だったが、なにより話が合った。他のマンコ付き人間どもは、自分が大事で自分の話しかしない。 自分の話をすれば、周りは喜んでくれるという確信を持っている。なんでそんなに自分に自信があるのだろう? みんなが自分のこと好きだって確信があるのだろう? みんなが自分の話を聞きたがり、それを面白がってくれていると信じ込んでいられるのだろう? そういう人たちばかりである。だが彼女は違った。キャッチボールができる人だった。

言葉の使い方が上手であった。短い言葉で要件をスパッと言える人だった。だから仕事はしやすかった。学歴どうこうではなくて、頭の良い人だったのだろう。 いちいち考えないとモノが言えない俺は、しばしば感心しながら聞いていた。彼女と話す時、俺はいつもオドオドした朴念仁であった。黒のブラチラを拝んだのがよい想い出♪

そういうことは、いなくなってから初めてわかった。俺はどうやら、彼女が好きだったのだな。なにやってんだか。彼女いるくせに。

家に帰って彼女に一部始終を話し、慰めてもらった。彼女は半ば呆れながら、よしよしと慰めてくれた。休日の今日は二人で河原へ行って、広い空を眺めていた。帰ってセックスもした。ほんとうにありがたい彼女だと思う。愛してるよ。

でもこの喪失感というのは、そうそう埋められそうにはない。なにしろ俺はこれからも、毎日会社に行って仕事をしなければならんからだ。現実問題、俺は彼女が抜けた分の仕事をやる立場にある。今でさえパンクしそうなのに、考えると発狂しそうだ。

ああ卒業式で泣かないと 冷たい人と言われそう でももっと悲しい瞬間に 涙はとっておきたいの

1週間後、1ヶ月後、1年後、10年後。俺はまだ彼女でオナニーしているだろうか。しているといいなあと思う。


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