イザナギノ命とイザナミノ命

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イザナミノ命はヒノカグツチノ神を産んで亡くなった。

(中略)

どうしてもイザナミノ命に会いたく思ったイザナギノ命は黄泉の国へと出かけた。

(中略)

イザナミノ命は『私はもう黄泉の国の食べ物を食べてしまったので帰ることはできないのですが、いとしい夫であるあなたがわざわざ来てくださったのですから、現世に帰していただくよう黄泉の国の神と話してみます。その間、決して私の姿を見ないでください』と言い残して御殿の中に戻って行った。

しかしイザナミノ命がなかなか帰ってこないため、待ちきれなくなったイザナギノ命は、こっそり御殿の中に入って行った。 そこで見たイザナミノ命は、銀髪ガングロ白タラコ唇という、 山ん婆のような醜い姿をしていた。驚き恐れたイザナギノ命が逃げ出そうとしたその時、携帯が鳴った。

その音でイザナギノ命が約束を破って中に入ったことを知ったイザナミノ命は『よくも恥をかかせてくれたな』と大いに怒り、ただちに自分と同じ髪と顔をした黄泉の国の醜女たちを遣わしてイザナギノ命を追いかけさせた。

追いつかれそうになったイザナギノ命は、ポケベルを投げつけた。すると追っ手の醜女たちは『ベルだあ〜、ベル番教えてえ〜』と仲間どうしでメッセージを送りあって遊び始めたが、 すぐに飽きてしまい、再びイザナギノ命を追いかけた。

次にイザナギノ命はPHSを投げつけた。 醜女たちは『ピッチだぁピッチィ〜、電話代ぃかかるからぁ、 そっちからかけろよぉ〜』と、どちらからかけるかで揉め始めた。 イザナギノ命はこの間にかなり遠くまで逃げることができたが、『ピッチってぇ、すぐにケンガイになるしぃ〜』と、またすぐに飽きてしまった醜女たちに再び追いつかれそうになった。

そこでイザナギノ命は携帯を投げつけた。醜女たちは腰が冷えるのも構わず地べたに座り込み、長電話を始めた。イザナギノ命がやっとのことで現世と黄泉の国の境まで逃げのびた時、とうとうイザナミノ命自身が追いかけてきた。

そこでイザナギノ命は巨大な岩で道を塞いだ。岩の向こう側でイザナミノ命が叫んだ。『いとしい夫のあなたがこんなことをなさるのなら、私は貴方の国の人々に、一日に千台づつ携帯を持たせましょう』イザナギノ命はこれに応えて言った。『いとしい妻よ、それならば私はこの国に一日に千五百人の "携帯持たない教" 信者を創ろう』

こうして『携帯持たない教』が誕生した。


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