虚像の国ポンニツ
みんな知っているけど、誰も行ったことのない国

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「ポンニツ」という国をご存知ですか。地図を調べても載っていません。どこにあるのかは誰も知りません。それでも、ポンニツは有名な国です。国名は知らないあなたでも、きっとポンニツについてご存知のことがあると思います。今日はそんな近くて遠い国、「ポンニツ」のことを少しご紹介しましょう。

ポンニツの企業・団体ポンニツの人々ポンニツの田舎者ポンニツの障害者

ポンニツの暗い歴史ポンニツの警察ポンニツの悪人ポンニツの巨乳

ポンニツの超兵器ポンニツの野球ポンニツの司法制度 / ポンニツの放射能 /


ポンニツの主な企業・団体

ポンニツは日本と大変よく似た国で、その社会制度や産業構造も酷似しています。ここではポンニツを代表する企業・団体をいくつかご紹介しましょう。

・民自党

正式には民主自由党。ポンニツの政治を左右する巨大与党です。党内にはいくつかの派閥があり、互いに激しい権力闘争と内紛を繰り返しています。それ以外の政党は、この国にはありません。あってもないに等しい状態です。

・毎朝新聞

ポンニツ最大の新聞社です。ジャーナリストとしての使命に燃える熱血記者が揃っており、仕事以外の事件に首を突っ込み、あまつさえ解決してしまうこともしばしばです。他には読買新聞などが有名です。

・四菱グループ

ポンニツを代表する財閥です。金融、不動産から自動車、家電、重工業などあらゆる業種をその傘下におさめる巨大コンツェルンを形成しています。巨大な陰謀を企むこともあります。

・来々軒

中小企業もおろそかにしてはいけません。ポンニツを代表する中華料理店です。ラーメン、焼餃子などが主なメニューで、中国の料理は一切出てきません。

・竜神会

社会の裏における経済活動にも言及しなければなりません。ポンニツを代表するヤクザ組織です。


ポンニツのひとびと

ポンニツにはどんなひとが住んでいるのでしょうか?ポンニツのひとびとをご紹介します。

ポンニツ人は全員背が低く、やや猫背で、ひょこひょこと歩きます。丸いメガネをかけており、上の前歯がひどく突き出しています。旅行先では常にカメラを首からさげており、写真をとることが旅行における最大にして唯一の目的です。ポンニツ人は全員がサラリーマンで、自分が勤める会社の命令ならば、どんな法律違反も恐れません。仕事上のミスはハラキリと呼ばれる自殺で償い、生卵や生魚を好んで食べ、

…なんだか本来の主旨と早くもズレてきた気がします。次に行きましょう。


ポンニツの田舎者

ポンニツにも田舎者はいます。ここではポンニツを代表する田舎者の2大パターンをご紹介しましょう。

・キュウシュウ人

ポンニツの西南部に浮かぶ島の出身者のことです。ここの男性は、全員が柔道の達人です。平均身長はおよそ2メートル、普段から柔道着で生活する者も少なくありません。キュウシュウ人は骨太でやや太めの筋肉質もしくはデブ。眉が太く、彫りの深い顔立ちが特徴です。性格は「気はやさしくて力持ち」、豪快・剛直で、細かいことを気にする人はいません。

飲酒量が多いことも有名で焼酎を好みますが、飲むと泣き上戸になってすぐ弱音を吐きます。キュウシュウ人の男性は女性と交際することが極端に苦手で、好きな女性に告白するときも他人の力を借りなければできません。まさに純情そのもの、と言ったところです。

キュウシュウ人が使用する言語は通常のポンニツ語と少々ことなり、キュウシュウ弁などと呼ばれています。一人称は「おいどん」で、語尾には必ず「たい」「ばい」「ばってん」がつき、この3つを複合させて使用することも少なくありません。

例:「おいどんは、キュウシュウ男児ですたいばってん!」

訳:「わたしは、キュウシュウ出身の男性です」

言い忘れましたが、語尾には必ず「!」がつきます。低く野太い声も大きな特徴です。

・トウホク人

キュウシュウ人より資料は少ないのですが、これもポンニツを代表する田舎者です。外見上の大きな特徴は真っ赤な頬で、それ以外は特に見出せません。むしろ特筆すべきはその精神性で、トウホク人は例外なく気が弱く、暗い性格です。忍耐強く、辛抱強く、粘り強くと、ある意味美徳とも受け取れる傾向がありますが、これらはえてして愚かさの象徴としてしか受け取られていません。

トウホク地方の世帯は全て農家で、しかも専業です。トウホク人は皆働き者ですが、経済的にはひどく貧しいのが特徴です。米の輸入自由化や減反政策などの悪影響をモロに受け、生産すればするほど赤字になるという悲惨な経済状態ですが、それでもトウホクの親たちは自分の息子に農業を継がせたがります。

トウホク人のあやつる言語も独特で、トウホク弁と呼ばれています。一人称は「おら」で、語尾には「〜だ」「だべ」「ずら」などがつきます。

例:「おらヒャクショウだで、むずかしいことはわかんねぇずら」

訳:自粛

また発音も大変独特で、「ズーズー弁」と呼ばれる強い訛りがあります。その発音がフランス語に似ていると主張する者もおりますが、負け惜しみとしてしか受け取られていません。


ポンニツの障害者

ポンニツにも障害者はいます。今回は特に知的障害者についてお話ししましょう。

ポンニツの知的障害者たちは、幸せです。全員が一人残らず、音楽か絵画の芸術的才能を持っており、それを活かすことで高い社会的地位や経済的充足を得ています。どんなに不幸な出来事に出会っても、最終的には必ずその才能が評価され、報われます。それというのも、知的障害者は必ず芸術的才能を持っているからです。全員、間違いなくそうです。そういうものなのです。心配はいりません。

芸術といっても、文学や映画はありません(詩はあり)。必ず音楽か、絵画、版画、ちぎり絵などです。音楽でも、デスメタルやパンクスはありません。クラッシックか、せいぜいジャズです。絵画でも、必ず人を幸せにするような絵ばかりで、人間の暗黒面を鋭く抉り出したようなものは決してありません。それというのもポンニツの知的障害者は全員、自然や動物を愛するやさしく暖かい心を持った善人だからです。ポンニツの知的障害者にスケベな気持ちはありませんし、名誉や地位も欲しがりません。嘘もつきませんし、美しい心を持った人とだけ心を通わせます。動物と一緒です。

くどいようですが、芸術教育を受けるほど経済的余裕のない知的障害者や、その才能を見出してくれるその道の権威と生涯を通じて出会わない知的障害者はいません。必ず最後には報われます。そして本人には必ず芸術の才能があり、しかもきれいな心の持ち主です。だから大丈夫です。そのため、ポンニツの人々はそうした彼らの生き様を見て感動し、誰もが忘れかけていた大切な何か、ピュアな心を取り戻すことができるのです。素晴らしいことです。


ポンニツの暗い歴史

ポンニツは今から50年前、戦争をしていました。これは大変不幸な歴史です。一刻も早く忘れ、立ち直り、水に流すべきです。ポンニツは強大な国から原子爆弾という残虐な兵器を2度に渡って使用され、国中が焼け野原になってしまいました。食料は不足し、多くの若い命が失われました。全く酷い目にあいました。でもそんなことは早く忘れるべきです。戦争の原因なんて小さなことは気にしてはいけません。不幸な過去の歴史です。誰の責任でもありませんよね、みんな被害者なんですから。

ポンニツはよその国に一切迷惑をかけていません。むしろ弱い立場の国が植民地になるのを守ってあげたり、鉄道を敷いてあげたりしました。その鉄道で何をどこへ運んだかなんて小さなことは気にしてはいけません。とにかくいいことをしたのですから。隣の半島や大陸や島々で女の人を犯したり、首を斬った後で記念写真なんか撮ってません。働き手や食料や資源を奪ったりもしていません。ま、いずれにせよ50年も昔の話で、今のポンニツ人には一切関係のない話です。いつまでも昔のことにこだわらず、さっさと水に流すべきでしょう。ポンニツ人は前向きなのです。


ポンニツの警察

ポンニツの警察は、世界一優秀と評判です。ポンニツの警察官は全員が刑事で、犯罪捜査をしています。地域の防犯や駐禁取り締まり、道案内なんかはやってません。刑事はみな、高い志と熱い魂を持つ人格者で、日々命懸けで犯罪と闘っています。見通しの悪いところにレーダーを仕掛けたりしませんし、年度末になると急に取り締まりが厳しくなったりもしません。もちろんノルマもありません。大衆車もベンツも、わけへだてなく駐禁を切ります。

ポンニツの刑事はみな優秀ですが、一方でユニークな刑事がたくさんいることでも知られます。奇行も目立ち、横一列で滑走路を徘徊したり、説明抜きで太陽に吠えたりします。いい年をしてあだ名が好きだったりもします。今日はそんな変った刑事さんを何人かご紹介しましょう。

まず「さすらい」「はぐれ」「あぶない」「まるごし」。彼らはみんなはみ出しもののアウトローですが、刑事としては有能です。年齢・性別もバラエティに富んでいます。「スケバン」「ガキ」「貴族」。みんな立派な刑事です。そんな馬鹿な、と思うような刑事もいます。「ドーベルマン」「宇宙」。ちょっと常識を疑いますね。

一般的に、結婚を控えた刑事は必ず殉職することになっています。また刑事たちは事件が解決すると飲みにいきますが、必ず誰かのおごりになることが決まっています。楽な仕事ではありませんね。あと余談ですが、婦人警官は一人残らずすんげーいい女です。日本とは大違いですね。


ポンニツの悪人

ポンニツには、日本とは比べ物にならないほどの悪人がいます。しかし悪が栄えたためしはなく、最終的に悪は必ず滅びます。ここは日本と大違いですね。ポンニツの悪人は、その多くが紳士的です。大事な証人や、敵対する人間を捕まえても、すぐには殺しません。

例えば密室に閉じ込めてガスを封入するときも、気体に触れただけで皮膚がドロドロにただれるマスタードガスや一吸いしただけで肺が焼けるVXガス、サリンなんかは使いません。ただ眠らせ、監禁するだけです。多くは利用したあとで、殺すというのがその理由ですが、うまく利用できたためしはありません。逃げないように足の一本でも切り落とす、といった配慮もなく、必ず五体満足で大切に監禁します。また壊れやすい鍵や手錠を使うなど、人権意識も高い悪人たちです。

しかたなく殺人を行うときにも、必ず説明をしてからです。なぜあなたを殺さなければならないか、なぜこのようなことになったのか。自分たちの目的はなんなのか、そのためにどのような手段を使っていくつもりなのか。どのようなシステムや兵器を保有しているか。さらにはそれらの弱点すら説明してしまう者もいます。昨今注目されるアカウンタビリティ、説明責任という概念ですね。ポンニツ語では「メイドノミヤゲ」と翻訳されています。あまつさえ殺す直前にはタイミングよく「死ね」「くたばれ」などと絶叫します。どこまでも親切ですね。


ポンニツの巨乳

ポンニツで乳房の大きな女性は、全員バカです。間違いありません。


ポンニツの超兵器

今から50年以上前、ポンニツには驚くべき科学力を誇る軍事組織がありました。キュウテイコクグンと呼ばれています。彼らはそのテクノロジーを持って数々の超兵器を開発しましたが、なぜか一つとして使用しないまま戦争に負けてしまいました。

彼らが開発した超兵器ですが、もっとも多いのは人型兵器です。それも無線操縦式のロボット、搭乗して操縦する巨大ロボット、人体をベースにした強化人間やサイボーグなど、バラエティに富んでいます。「自分はなんのために生まれてきたのか」と哲学的に悩むほど優秀な人工知能を持ったアンドロイドもいるくらいです。

これらが装備する武装も協力で、レーザーやビーム兵器など現在でも実用段階に至っていないものを当たり前に使用していました。また人型兵器以外では、先端に巨大なドリルを装備した潜水艦がよく知られています。この潜水艦は、飛行能力も持っていました。まさに超兵器ですね。

これらの超兵器は、なぜか一つとして実戦で使用されることはないまま消息不明になったり隠匿されてしまいましたが、不思議なことにその全ては再び発見・発掘され、犯罪組織や平和を脅かす侵略者との戦いで使用され、活躍しています。なにかの縁でしょうね。

そしてこれら超兵器を生み出したテクノロジーは、なぜかその後の歴史にフィードバックされることはありませんでした。軍事、民生、ともにです。これも不思議なことですね。


ポンニツの野球

ポンニツでもスポーツは盛んで、中でも人気の高いのが野球です。日本の野球とアメリカのベースボールは似て非なるもの、という意見をよく聞きますが、ポンニツの野球もまたしかりです。ポンニツではどこの国にも見られない、特殊な野球が行われています。

試合は必ず、空振り三振かホームランで終わります。ポンニツの三振に見逃しはありません。9回表で7対3、ラストバッターを平凡な外野フライに討ち取って試合終了とか、2回表に1アウト2塁でヒットエンドラン、2、3塁間の内野ゴロがフィルダースチョイスで1塁に送球するも間一髪バッターランナーがセーフ、この間に2塁ランナーが3塁を蹴ってホームイン、その後は投手戦となりゼロ行進が続いて結局2回の攻防が決勝点となる、とかそういう地味な展開はありません。

またポンニツのピッチャーは、必ず「魔球」と呼ばれる超人的な変化球を投げます。代表的なのはバッターの視界から消えるものですが、他にも高電圧の静電気で金属バットを使うバッターを感電させるもの、空中で一旦停止するもの、複数に分裂するものなど、いずれも物理法則を無視した壮絶なものばかりです。

こうしたピッチャーを攻略するため、ポンニツのバッターはみな「秘打」で対抗しています。更に秘打をアウトにするため、野手は「秘技」を持ってたりします。大変ですね。


ポンニツの司法制度

ポンニツの裁判は、得てして茶番です。検事と弁護士は恋人同士だったり、元恋人同士だったり、あるいは夫婦、元夫婦、親子、兄弟など、私生活において必ずなんらんかの関係を持っています。そんな彼らに正当な裁判を期待する方が無理ですね。とんだ馴れ合いです。

またポンニツの裁判の特長として、開廷当初無罪と思われていたものは有罪に、有罪と思われていたものは無罪になる傾向があります。それというのもポンニツの裁判では、有力な証言や証拠は判決の直前にならないと出してはいけないという決まりがあるからです。最後まで見逃せませんね。


ポンニツの放射線

ポンニツでは物理法則も我々と違うようで、ポンニツで放射線を浴びた生物(人間含む)は、必ず巨大化します。もしくは怪物化します。あるいは縮小します。巨大化・怪物化するのは人間、クモ、アリ、ネズミ、ワニ、カタツムリなど、ほ乳類から昆虫・節足動物までバラエティに富んでいます。一方、縮小するケースはほぼ人間に限られており、ちょっと面白いですね。

怪物化の具体的な例としては、口から火を吐く、空を飛ぶ、急に肉食になったり血を吸うようになる、などこちらも様々。しかしいずれも、我が国では絶っ対にあり得ないことばかりで、ポンニツってほんと不思議な国です。なお放射能だけでなく、一部の化学物質でも同様の現象が起こることが確認されています。気の抜けない国ですね。

なおポンニツと比較的近い国、リカアメではこの傾向がもっと顕著です。特に女性が放射線や化学物質を浴びて巨大化するケースは、一部の熱心な研究者たちによって事例の収集が進んでいますが、そっとしといてあげましょう。


…ポンニツに関する情報は今のところこれぐらいですが、新しいものが入り次第、ご紹介したいと思います。お楽しみに。


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