赤い彗星
シャア・アズナブル
[CHAR AZNABLE]
宇宙世紀史を研究するものの中で、シャア・アズナブルについて知らぬものはあるまい。グリプス戦役ではエゥーゴの幹部クワトロ・バジーナとして、第2次アクシズ戦役ではネオ・ジオン総帥シャア・アズナブルとして、彼が歴史上で果たした役割はあまりにも大きく、到底ここで扱いきれるものではない。しかし少なくとも、一年戦争直後の時点までは、彼は一人の優秀なMSパイロットに過ぎなかった。ここでは彼がシャア・アズナブルとして、一年戦争中に活躍した事項を中心に記述していきたい。
彼の本名はキャスバル・レム・ダイクン、ジオニズムの提唱者にしてジオン共和国建国の父ジオン・ズムダイクンの長男である。3歳下の妹アルテイシアとの2人兄妹である。
ダイクンの死後、サイド3の政情は急速にザビ化が進み、ダイクン派は追放された。生命の危機に瀕したキャスバルとアルテイシアはダイクンの側近ジンバ・ラルの手によりサイド3を脱出、地球に降下した。その後は南欧の名家マス家の名を借り、エドワウ・マスとして少年期を過ごす。サイド3から遠く離れた地球とは言え、常にザビ家の影に脅える隠遁生活であった。
兄妹を養育したジンバ・ラルは熱狂的なダイクン支持者であった。彼はダイクンがザビ家に暗殺されたことを確信しており、スペースノイドの未来やニュータイプの概念といったダイクンの思想を権力の道具として歪めたザビ家を諸悪の根元とみなしていたようである。こうした彼の信条が少年期のキャスバルの精神形成に大きな影響を与えたことは容易に想像がつくことである。
その後自らの意志に基づきマス家を出奔し、シャア・アズナブルとしてサイド3に潜入、軍に入隊する。これ以降彼は自らの出自を隠すため、マスクを着用するようになった。表向きには宇宙線によって眼に障害を受けた、或るいは額の醜い傷を隠すため、などとしていたようである。教導機動大隊に入隊してMSの操縦訓練を受けたのち士官学校に入学、主席で卒業後は大尉として宇宙攻撃軍へ再入隊する。なお、次席はザビ家4男ガルマ・ザビ大佐である。
開戦直後のルウム戦役には全身を赤く塗装したMS-06Sで参加し、単独で戦艦5隻撃沈という驚異的なスコアを挙げた。「赤い彗星」伝説の始まりである。彼のMS-06Sは機体のポテンシャルと高い操縦テクニックにより、通常のMS-06Cの3倍のスピードで移動できたという。彼はこの戦功を以って少佐へ昇進、自らMS部隊を指揮するようになる。
UC0079年9月18日、少佐指揮下のMS部隊はゲリラ掃討作戦から帰還する途上、連邦軍の新型強襲揚陸艦ホワイトベースを捕捉する。ホワイトベースは連邦軍のMS開発計画「V作戦」の要であり、同艦はサイド7で開発中であったMSを受領する予定であった。少佐は直ちに強行偵察を指示、ここで彼の部隊は史上初のMS戦闘を経験し、サイド7を脱出した同艦を追撃して地球へ降下する。
ホワイトベースをジオン勢力下である北米大陸へと誘導した大佐はキャリフォルニアのガルマ・ザビ大佐と合流、共同作戦を展開する。